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兄、駄々

「白羅真流剣術抜刀初めの太刀、枝垂桜。久しぶりに抜刀なんかやったから腕が鈍ったか。」

 長刀に手をかけながらのんびりと呟く。




「あぁぁ…」

 兵士達は全身から力が抜けたかの様に尻餅をついたり死を感じて逃げ出したりした。

「臆病者共が!!貴様ら全員クビだ!!」




「クビは良いが大師団長殿。残るはあんた一人だぜ。」

 雪が余裕のある声でフォスターに語りかける。

「貴様…何をした…」

 フォスターが青ざめた表情で弱々しく雪を睨む。

「あれ。見えなかったのか?」

 雪が意外そうにフォスターに問い返す。

「お前達はどうだ?見えたか?」

 行人と佐奈、マリィは首を横に振る。

「そうか…致命的なほどまで落ちたわけじゃないか。」

 一人で勝手に納得した雪はフォスターを茶化すように言う。

「説明すると全部斬ったんだよ、あの瞬間に全員の鎧と武器を。あんなのが見切れないとは大師団の名折れだな。」




「見える訳無いですよねぇ…」

「兄さん確か剣道有段でしたよね?」

「一応はな…でも一振りにしか見えなかった…多分あれ見切れるのは剣の達人くらいだろうさ。」

 行人達は少しフォスターを哀れみながら会話をする。




「き、貴様…!!」

 フォスターは剣を抜き雪に襲い掛かった。




 しかしそこに雪の姿はない。フォスターは辺りを見回し自分の首筋に冷たいなにかが当てられていることに気がついた。




「敵に真っすぐ突っ込むのはまさに愚の骨頂。煽られてすぐに逆上するのは騎士として最低な行為だな。」

「ぐぅっ!!」

 雪の冷たい声にフォスターは苦虫をかみつぶしたような表情になる。




「選ばせてやるよ大師団長殿。ここで死ぬか恥を覚悟で逃げ延びるか、好きな方を選びな。」

「ぐぬぅっ!!」

 フォスターは剣を落とし、険しい表情で一瞥し走り去って行った。




「まったく、面倒な事ばっかだな。」

 刀を鞘に戻し雪は溜息をつく。




「見事なもんだな。」

 行人達は雪のもとへと寄って行く。

「凄いです、神父様!!」

 マリィは歓喜の声を上げる。

「そうでもない。それより…」

 雪は行人と佐奈を見つめる。




「覚悟は決まったか?」

「さっきも言ったけど俺は絶対に嫌だからな。」

 さっきとは行人が町長になる直前である。

「私は良いと思いますけどね。」

「私はイクトさんなら世界を救えるって信じてます!!」

 佐奈とマリィは行人に期待の目を向ける。

「嫌だぞ、俺はやりたくない。」

 行人はふてくされながらそっぽを向く。

「何が嫌だ?」




「まず人が嫌いなんだ。いや、怖いんだ。」

「それは沢山人に会えば見方がかわるかもしれないだろ。」




「それにRPGの定石として、誰かが死ぬじゃないか。それはどうしても嫌だ。」

 行人は険しい顔をして訴える。

「安心しろ。これはゲームじゃない。定石なんて物は考えなくても良いしもしなんかあった時のために 俺達だって召喚されているんだ。」

 雪は行人の退路を絶つように答える。

 



「スライムさんと戦いたくない。」

「だったら会わなければ良い。」




「…」




 詰んだようだ。




「と、とにかく俺は嫌だ!!」

 子供のように行人は駄々をこねる。すると佐奈が微笑んで言い放つ。




「もし、断るのであれば私と関係を結んでくださいね。」




「ごめんなさいやりますやらせていただきますやらせてください万事に当たって全力で取り組ませていただきます勇者らしくなれるかどうかはよく解らないけどとにかく動き出してみようと嫌々ながらも考えている所存でいやすみません嘘です嫌々なんかじゃありません喜んでやらせていただきますだからそうやってワイシャツを脱ぐのをやめてくださいお願いしますだからといって今度はスカートを脱ごうとするのはやめてくださいというよりまず服を脱ごうと考えるのをやめてください断らないし関係も結ばないので服を脱ぐのをやめてください。」




 行人の駄々は一瞬にして止まった。

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