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兄、気絶

 ノックアウトされた町長はぴくぴくと痙攣させながら床に倒れていた。




「兄さん!?」

 佐奈が行人のもとに駆け寄り頬をぺちぺちと叩く。

「し、神父様!?いくらなんでもやりすぎです!!」

 手に若干の血を付け雪は起き上がり大きく伸びをして清々しそうに汗を拭う仕草をしてこういった。

「ふぅ。」

「ふぅ。じゃないですよ!!なに良い仕事したみたいな顔してるんですか!?」

「いや、実際良い仕事したし…」

「してないですから!!ってなに『うわっ、こいつ空気読んでねぇよ。ありえないんだけど』みたいな顔してるんですか!?」

「くぁ…あ…」

 雪はマリィの説教を右から左に受け流すように大きなあくびをする。

「ちょっと、神父様聞いてますか!?」

「マリィ、そんな小姑みたいなことばっか言ってっとモテないぞ。」

「大きなお世話です!!」

 マリィは声を荒げ雪に反論をする。

「兄さん、兄さん!?」

 一方、佐奈は先程より強めに行人の頬を叩いていた。それでも微動だにしない行人を見て佐奈は考え込む。




 ニヤリ

 そしてポンと手を打ち口元を一瞬だけ不気味に歪ませた。




 くどくどとお説教をしていたマリィも、それを聞き流していた雪も悍ましいオーラに気圧されし、佐奈の方を見る。黒いなんていう生易しいものじゃない。どす黒いオーラを佐奈は身に纏っていた。そのオーラに雪は冷や汗を流し、マリィはガクガクと身震いをした。




「あ、あの…神父様?」

「お、おう。どうした?」

 雪とマリィは佐奈から視線を反らさず…否、反らせぬまま会話をする。




「あ、あれは誰に向けてなんでしょうか?」

「さぁな、マリィになんじゃないか?」

「やややややややややややややややややっややややだなぁ。多分、きっと…いいえ、絶対神父様に向けてですよ。よかったですね。」




「道連れにすんぞ。」




「すみませんごめんなさいもうしませんちょっとだけ様ないなと思ってしまった愚かな私をどうかお許しくださいというよりいっその事だったら私を殺してくださいここまでの苦痛に堪え続けなければならないのならもう一思いに殺してください。」

「落ち着けマリィ。強く気を持て。こんなことで生きることを諦めたら嫁にいけないぞ。」

「もう将来の夢がお嫁さんとか言う夢見がちな事言わないです。はい…」




 マリィまで頭のネジが吹っ飛んだようだ。




 ゴンッ

 雪はゲンコツをマリィに落とす。

「あだっ!!」

 マリィは頭を抑えうずくまる。

「よく見てみろ。あれは多分行人に向けられてるもんだ。」

「え?」

 マリィは頭を抑えながら、佐奈を見る。佐奈は不気味に口元を引き攣らせ行人に馬乗りになっていた。そして妖しい笑みを浮かべ、口を開く。




「しょうがないですね、兄さん。それじゃあ改めて初めてをがっつり奪わせていただきますね。」




 マリィと雪は悍ましいオーラの原因を見た。

 すなわち、佐奈は再び行人と自身にとっての初めてをここでおっぴろげようとしていたのである。




「なにやってるんですか!!」

「や、ですからd…」

「もうその件いいですから!!さっきありましたから!!」

「ほう、そこまでそいつを襲いたいのか?」

「ええ、私の今でも続く初恋の相手ですから。」

「そういうの素敵ですね。あこがれちゃ…って!!だからなんで今度は佐奈さんが脱いでるんですか!!」

 佐奈の開けたシャツを見てマリィが叫ぶ。

「や、好きな人に初めてを捧げるのは当然の義務かと…」

「当然じゃないです!!だからなんで止めてるのに無視して上半身下着だけなんですか!?」

 マリィの警告を完全に無視してシャツを脱いだ佐奈は続けてスカートに手をかけようとしていた。

「安心しろ、俺は見てないからな。」

 雪は扉の方へと目を背けながら言う。

「それなら安心…じゃないです!!現実から目を背けないでください!!でもこっち見ちゃダメです!!」

「要は俺にどうしろと?」

 雪は面倒そうに欠伸を噛み殺して言う。

「一緒に止めてください!!」

「あ、そうだ。マリィさん。」

「な、なんですか…?」

 マリィは息を切らせながら恐る恐る聞く。

 佐奈は歪んだ笑みでもってマリィを見つめ口を開く。




「マリィさんも一緒にどうです?」




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 マリィの悲痛な叫び声が響き渡る。




「安心しろマリィ。薄い本くらいなら作っといてやっから。」

「そんな冗談いってないで助けてください!!」

 雪は笑いを堪え切れずに腹を抱えながら言う。

「兄さんは特に女性恐怖症なんです。そんな兄さんが怯えないということはマリィさんに対してそれなりに好意を抱いているんですよ。だから大丈夫です。」

「そりゃあ確かに嬉しいですけど…でもそれとこれとは違いますよ!!」

「大丈夫ですよ、最初は怖いかもしれないですけどきっとそれが快感にかわりますから。」

 佐奈はじりじりとマリィに近寄っていく。マリィはじりじりと後ずさっていく。そして背後の壁に当たり、マリィは怯えた表情で目に涙を浮かべながら叫ぶ。

「い、いやっ…来ないでください…っ!!来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




 周囲の喧騒に起こされ行人がけだるそうに目を開け見たものは…




「ほら、もうちょっとじゃないですか。そのローブ、脱いじゃいましょうよ。」

「こ、これだけは…私は聖職者ですし…別にイクトさんが嫌ってわけじゃないんです…でもやっぱりこういった肉体関係というのは…」




 上半身下着だけで馬乗りになっている佐奈と脱がされそうになっているローブを必死で守るマリィ。そして欠伸をしながら小説を読み耽る雪の姿だった。




 行人は大きく息を吸い込んで今までにないくらいの大声で叫ぶ。




「っぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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