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7/7

転移して得たゴール


「1年、位置についてー!」


私は、新しい学校で陸上部に所属している。

種目は100m。

セットポジションに入り神経を研ぎ澄ませる。

笛の合図とともに徐々に身体を上に起こすフォームを意識、

風を切る感触が心地いい。


そのままペースを落とさずにゴールラインを踏む。

本日何本目になるかわからないダッシュによる疲労で手を足について少し休憩する。


そうやって下を向いていた私の元へスポーツドリンクが差し出される。

誰かと思うと神楽かぐらだった。


「やだ、部活は?」

「今日は休みなんだ。」

「そうだった、この前コンクールあったばかりだもんね。」


あの日から私と神楽かぐらは何かと仲がいい。

私たちがキスをしたあとに神楽かぐらに対してカエル化現象を起こして以来友達以上恋人未満の日が続いていた。

でも、今言った神楽かぐらが参加したコンクールでトランペットを演奏する──下手なのは声楽だけらしい──姿にキュンとしてまたちゃんとお付き合いすることになった。


「それで、神楽かぐらは今日どうするの?」

差し出されたスポーツドリンクをありがたく受け取りながら答える。


「ん、爽風蘭そぷらが終わるまで待つよ」

「そんな。暇させたら悪いし」


そんな神楽かぐらは一冊の本を取り出す。タイトルには「レ・ミゼラブル(1)」と書いてある。

「これを読みながら待つから、大丈夫だ。」


そう言いながら、去っていった。

「まだ、暑いから気を付けろよー!」


両手をメガホンのようにして大声を出す。

相も変わらず神楽かぐらは左手の指で左肩に手提げかばんをひっかけっている。

そんな彼は右手でおう、と返事をした。



「お待たせ」

部活が終わり、神楽かぐらが待っていた校庭のベンチまで急いで向かう。


「そんなに待ってない」


そんなことはない、もう午後7時だ。

さっきの会話から3時間以上は経っている。


流石にこの時間になると2学期とはいえ暗くなっている。


「さて、今日も一緒に帰るか」

「ねえ、ちょっと競走しようよ」


そんな私からの提案に神楽かぐらは首をかしげる。


爽風蘭そぷらは疲れてるだろ?」

「大丈夫、私こう見えて長距離も行けるから」

「いや、そういう問題じゃ──」


神楽かぐらがそう言い終わる前に彼をおいて私はリュックを背負って駆け出す。

やや意地っ張りで走り出した私に神楽かぐらはしっかりついてくる。

吹奏楽部で重いものを長距離運ぶので、体力はあるようだ。


なんだか笑いがこみあげてくる。

それは神楽かぐらもおなじようで、2人で声を出しながら中村水産まで駆けていった。



「なんだ、折り入って話って」


私と神楽かぐらペアはパパとお母さんペアと向かい合ってダイニングテーブル越しに向かい合うように座る。


ただ、いざ言うとなると気まずくなり下を向いてしまう。それは神楽かぐらも同じなようでなかなか二人ともモジモジしていると


「もしかして、2人付き合っちゃうー?」


というお母さんからの発言。


「は!?」

ガタっと椅子からわかりやすく落っこちるパパ。


「そ、そうしたいんだ!」


とここで覚悟が決まった神楽かぐらが切り出す。


「付き合うってお前ら、かーちゃん違うけど兄妹だぞ!?」

そう主張するパパをしり目に


「パラレルワールド越しに一夫多妻制をする人の子だものねぇ」


とお母さんはある程度納得した様子。


「私たち、兄妹っていう関係が嫌なの!」


そこにはパラレルワールドで転移したということもあるかもしれない。

だが、どうしても血がつながっている家族だと私も神楽かぐらもお互いのことを思えない関係になっていた。


「なんだよ、お前ら...」


かなりあきれている様子のパパ。

だけど、最終的に私たちは二人の了承を得ることができた。


リビングで残るという2人。

私と神楽かぐらは2人仲良く退出した。


「これで、良かったんだよね…?」


自信なさげに問いだす私に神楽かぐらはキスで答えてくれた。

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