サーモンが主流の世界でキスといえば。
不思議そうに振り向く神楽に私は続ける。
「神楽の部屋を見せてほしい。」
パラレルワールドの研究をいつ知ったのか、自分は神楽にとってどのような存在であったのか。それを知りたい。
そう強く思った。
「私たちのパパはこの世界では有名なの?」
「いいえ、、、いいや──有名ではないd──よ」
まだ敬語が抜けない神楽のことをかわいいと思い
フフフっと笑ってしまう。
「何笑ってる、、、んだよ」
「君が敬語抜けないからだよ、弄りがいがあるなぁ」
私の隣には神楽が歩みを進める。
朝ぶつかったときみたいに左手の人差し指と中指に手持ちバッグをひっかけて、私のリュック(転移装置)は右手で持っている。
私のことが好きな人──第一印象は最悪だったが──が隣を歩いている。
そんな昨日こちらに転移してくるまで考え付かなかった情景に少しドキドキする。
「こっちの世界ではパラレルワールドは認知されてるの?」
「親父が公表してない、ん、だ。天才だってのを隠してる。」
流石はウチのパパ、何を考えているのかさっぱりわからない。
「神楽も公表しないんだ?」
「俺は──」
そこで神楽の声が変わる。
気が付けば中村水産の目の前。
私たちのパパと神楽のお母さんがオーイと呼んでいる。
「そういえば、親父に連絡したのか?」
そういわれれば、していない。
パパには今日何も連絡していない。だから、中村水産の別荘の方で待ってると思ったのに。
なんでだろう、と思いながら神楽と一緒に中村水産兼神楽の実家の入り口にたどり着く。
「よう、キスはいるか?」
とパパ。
な、な、な、何!?
キ、キ、キス⁉
神楽のことを意識し始めているだけに顔が少し赤らむのを感じる。
キスってあの恋人同士が仲良くなって、
好きだよなんて言って
いい感じの雰囲気になって、
あんたらくーたら考えていたら
パパとお母さん?がケラケラを笑う。
「なんだ、お前ら、意識してんのか?隣の佐藤さんからキスを貰ったんだよ。魚のキ・ス。」
「キス」だけ妙に強調してくるあたり完全にパパの策略に嵌められたらしい。
そういえば、パパはもしかしたら神楽がパラレルワールドの研究をしていることをしっているはずだよな。
そしたら、秘密裏に私に恋心を抱いているということも知っていたのかもしれない。
対する私、少女漫画に憧れて
「彼氏ほしー」
が口癖になっている辺り、私が神楽にアプローチしていることでも考えていたのだろうか。
いや、パパ前から勘が鋭いところあったからな。いや、この人天才物理学者だった。論理的に詰めたのかも。
──とりあえず、今日はキスを食べるからな
──二人とも神楽の部屋で待っててね
そんな声を聞きながら2人で2階にある神楽の部屋へと向かう。
一般的な男子高校生の部屋のレイアウトはわからないが、一番目を引くのは3個ほどあるスーツケースだった。
不思議そうにそちらを見ていると後ろからついてきた神楽が説明をする。
「俺が開発した転移装置──なんかみられるの恥ずかしいけど。」
リュックで転移装置を作ったパパもすごいが、スーツケースで作った神楽もすごい。
──これは親父のと違って、1つで最大5人まで転移できるものなんだ。
そう熱弁する神楽
どうやら父子揃って世間に公表する気はさらさらないようだ。
しかし、ここまで出来る尊敬の念が先ほどから、心に芽生えた恋心と絡み合っていく。
やっぱりこの子私のタイプかも。
「ねえ」
「なあ」
そう2人同時にお互いに声を掛け合う。
神楽は昨日私のことを好きだと言ってくれた。
私は、やっぱりこの子のこと好きかもしれない。
そうなると二人の顔の距離がだんだんと自ずと近くなる。
高鳴る心臓の鼓動が痛い。頭のこめかみ辺りが血流でズンズンするのがわかる。
そうやって私はファーストキスをパラレルワールドで奪われた。




