パラレルワールドにいる兄からサーモンコスプレを着ながら告白された件
そんなこともあって、私とパパはパラレルワールドに到着した。
いや、なんでチェストストラップつけるだけでパラレルワールドに到着するんだよ。
そんなことを思いながら周囲を見渡す。夕方の港、といったところだ。
私とパパは陸地から突き出した堤防に立っている。
その辺に波消しブロックとかがある限り妖精とかが飛び交う異世界──というわけではないようだ。
周囲に人影はないが、少なくともエルフとかドワーフとかが歩いているような雰囲気ではない。
見渡すと海が広がっている。
左の奥の方に砂浜が広がっている。
対して右側には網が一定間隔で置いてある。
後ろを振り向くと小屋があることがわかる。
足元を見てみると浮き輪がある。恐らく作業員がおぼれたときに助ける用
目を凝らすと「中村水産」の文字。
うん、これは完全に日本と同じようなところだ。
これでエルフとかが「中村さん」名乗ってたら一周回ってドン引きするレベル。
一応聞いておこう。
「ここってエルフとかいる世界なの?」
「パパがエルフと恋に落ちると思うか?」
それはそうだ。
腐ってもうちのパパはパパ。血縁関係がある。私も仮にエルフがいる異世界に転生したとしてもエルフと恋には落ちないだろう。
いくら、相手が私にぞっこんでも。
「ところで、ここはどんな世界なの?」
と隣にいるパパに話しかける。
「爽風蘭がいた世界で朝ごはんの2大派閥と言えば何だった?」
「そりゃあ、ご飯派とパン派でしょう?」
他にもうどんとかコーンフレークとかがいる気がするが、ご飯とパンが多い。
「ここはな、ご飯派かサーモン派で別れるところだ。」
ちなみに両方合わせてサーモンの寿司派もいるぞ。それがお前が元居た世界のうどん派かな
そこまで聞いて思うことが一つ
(──どうしてそうなった???)
いや、パラレルワールドだからそんなこともあるか。
どの時点でどう分岐したら穀物じゃない派閥で争う世界戦にあるかはわからないが。
折角なら、ご飯とコーンフレークあたりで派閥争いしてもらいたかったものだ。
「ところでこの世界にも子供がいるんでしょう?」
「ああ、そうだ。男の子で名前が神楽という。」
爽風蘭より早く生まれたから兄にあたるな
そう付け加えられる。
神楽。やや難解な感じが受けるが、私の爽風蘭よりかは明らかに読むのに楽な名前だろう。そういえば、私の名付け親ってママだったんだっけ。
ママが昔、
「パパったら『お前に任せる』の一点張りだったの!」
と何回も言っていたことを思い出す。
きっとこの世界でもパパは名付け親にはならなかったのだろう。
じゃないとネーミングセンスにこんな差は生まれない。
それはさておき、この世界には何をしに来たか。
そう、私は男の子を彼氏にしに来た。神楽くんだったよね。
共通点があったほうが話題は盛り上がるだろう。よって、彼氏になる確率があがる。
そんなことを考える。周りは私のことを腹黒だというが自覚は一切ない。
「それで、神楽お兄ちゃんはどこにいるの?」
「あー自室にいるんじゃないか?俺と同じで研究にぞっこんだったからな。
なんかパラレルワールド研究を通じて爽風蘭のこともあいつなんか知ってたっぽいぞ」
──それはちょっと不気味。
そうすると、右側に見えていた砂浜で光る物体が見える。こちらに呼びかけているようだ。
太陽が沈みかけているせいで横に太いシルエットという印象だ。ライフジャケットだろうか。
「あー、あれが神楽だ。ちょっと、いやだいぶ変わってると思うが、行ってこい」
一方的に知られていた、という事実に引いたがよくとらえればそのまま彼氏になってくれることもあるだろう。
じゃないとわざわざ調べようとも思わないだろうし。
そう思い私は堤防の上を歩き陸地の方へ歩く。
明かりがあるわけではないので、堤防と海の色がほとんど同じだ。
ライフジャケットがあるわけじゃない。間違っても海に落ちないようにしながら陸地へとたどり着く。
そのまま左に進む。
おーいと男の子の声。多分兄である神楽くん。
スマホのライトを振っているのだろうか。小さなライトが頭の上で揺れている。
ここまで来ると好奇心の方が勝ってくる。私は駆け出す。
シルエットがだんだんと見えてくる。上半身はオレンジ、腰の部分には緑のベルトだろうか。
やはりライフジャケットを着ているようだ。
全力でダッシュし彼のもとへたどり着く。そうすると、かなり異様な姿だということに気が付く。
これ、ライフジャケットじゃない
サーモンだ。
いや、サーモンだよな。
うん、サーモンだ。
オレンジに見えたライフジャケットっぽいところはサーモンのオレンジ。
腰より下にあるのはご飯の部分。
ベルトに見えたのはサーモンを巻き付ける昆布。
サーモンの寿司?
そんなコスチュームの男の子が立っていた。
彼は手に握っていたスマホを放り出し、前で手を合わせたように握りしめ言いだす。
「好きです!付き合ってください!」
「はあああああああああああああ!?」




