【1番街の荷降ろし場⑤(The loading dock on 1st Street)】
探偵マックス・ベル短編集は平日の午後10時にお送りする予定です。
今は使われていない埠頭だから、そうそう銃弾から身を守ることの出来るような障害物は無いから倉庫の塀伝いに距離を縮める。
奴らの銃弾は左程気にならないから、拳銃はまだポケットに入れたままだ。
俺が気になるのは、船から降ろされた荷物の行方。
そいつが船に戻らないように俺は倉庫の塀に背中を着けて見張っている。
おそらく船には、他にも似たような荷物が乗って居るはずで、そこの今降ろした荷物が乗ったところで何も変わりはしない。
船は只の運び屋だ。
しかし荷物が船に戻ってしまうと、この埠頭でそれを受取ろうとした奴らの罪が曖昧になってしまうので困る。
荷物を受け取ろうとした奴らには、ルートがある。
生産者側に物を依頼するルート。
それに物を売りさばくルート。
もちろん物をココに受け取りにきた奴等は只の下っ端に過ぎないし、雇い主は奴らが捕まった場合に備えて必要最小限の事しか教えてはいないだろう。
だが下っ端は下っ端なりに様々な情報や噂を知っているもの。
そういったところから、秘密の扉は少しずつ開けられる。
船は物を置き去りにしたまま、動き出した。
船は向こうからやって来て埠頭に横付けした手前、俺の眼の前を通り過ぎようとする。
俺はすかさずポケットから拳銃を抜き出し、喫水線上のヤツのどって腹に狙いを定めて強力な45口径ACP弾をカートリッジが空になるまで撃ち尽くした。
おそらくこれで目的の一つは完了したに違いない。
喫水線上に横並びに空いた穴のせいで、船内は徐々に海水で満たされて動けなくなるはず。
次はいよいよ俺に下手な銃を向けて発砲している奴等を懲らしめてやる番だ。
空になったカートリッジを抜き出して、弾の詰まった予備のカートリッジに替える。
NY市警御用達のグロック17や19はカートリッジに9mmパラベラム弾が17発装填できるが、俺のM1911は強力な45ACP弾が撃てるかわりにカートリッジには弾は7発しか入らない。
だから予備のカートリッジを幾つも持つことで補っている。
銃撃戦では、いくら腕が良くても弾が尽きれば敗者にならざる負えないから。
俺は切っていた携帯の電源を入れ直し、車で待機するように指示していた相棒に現場に来るように伝えた。
ただし安全に気をつけて急ぐ必要はないと言う、一言を付け加えて。