【1番街の荷降ろし場④(The loading dock on 1st Street)】
探偵マックス・ベル短編集は平日の午後10時にお送りする予定です。
奴らは3つの選択肢の中から最もしてはならない3番目を選んだ。
3番目の選択肢は、俺を拉致あるいは殺すこと。
パンパンと奴らが拳銃を撃って来る。
俺は慌てることもなく、奴らの人数や風体を確認しながら近くにあった小さなコンクリートブロックの影に一旦身を隠した。
座った俺一人の体がようやく隠れるくらいの大きさ。
俺はそこに隠れて周囲の様子を窺いながら、向こうから慌ててコッチに向かって走って来る俺の相棒が運転する車に「待て!」の合図を送る。
奴らは派手に拳銃の音を鳴らしているが、近くに銃弾が着弾することもなく、飛翔する音も聞こえない。
距離は50ヤード(約45m)もあるのだから、それは当然のこと。
多くの拳銃にカタログスペックの実用射程距離は50ヤードから60ヤードと書かれているが、実際に狙って当てられる距離は10ヤードくらいなもの。
下手な奴だとこの10ヤードでも的に当てるには苦労する。
奴らの腕は、その下手な奴に分類できそうだ。
だが油断は禁物だ。
当てられる距離が、たかだか10ヤードと言っても、銃弾が飛翔する距離は50ヤードどころではなく300ヤードは軽く飛ぶ。
つまり下手な鉄砲も数を撃てば、いずれは当たるかも知れないし、当たれば普通に大怪我は当たり場所によっては死亡する。
俺はいつ死んでもいいと思っているが、負けるのは嫌いだから奴らの前に屍を晒したくはない。
さぁて、そろそろ間合いを詰めるとするか。