【美少女と坊主③(Beautiful girl and boy)】
「君の名は?」
名前を聞かれて私はニッコリ笑ってシーナと答え、役名だけどと付け加えて言った。
理由は、もしあとでマックスさんが来たときに違った名前を呼ばれた場合に彼が不信感を覚えるのを避けるため。
「アナタの名前は?」と聞くとサミュエル君もニッコリ笑ってアダム・クラインだと言った。
シーナは人気ドラマ『CCS犯罪捜査班』の主役。
そしてアダム・クラインは、その適役。
だから私は「怖いのね」と優しくお道化たあとに、好きなキャラを聞いた。
「僕はビアンキ大佐が好きだな」
ビアンキ大佐と言うのは、CCS犯罪捜査班の幹部で主人公シーナの上司。
「えーっ、シーナじゃないの……」
私がガッカリするとサミュエル君は急に慌てて「もちろんシーナあってのCCSだから、シーナも好きなキャラだけど、敢えて言うなら……って言う感じだからガッカリしないで!」と、シネマサークルの自主作品でシーナ役を演じている私を慰めようとしてくれた。
しばらくはテレビドラマの話や、今製作中のCCS犯罪捜査班を模した自主製作映画の話しをした。
話の内容は、どのキャラクターが好きかとか私の映画での失敗談とかで、ミドルスクールの生徒たちがよく話す雑談みたいな感じで、お互いの個人情報に触れるような内容には触れなかった。
特に私は、彼を現実世界で抱えている問題から引き離すために故意にそのような話に導こうとしていた。
“悪い子ではない”
マックスさんによると、イジメが原因でソノ復讐のために衝動的に銃を持ち出したのではないかと言っていたが、話をしてみると性格に問題のある子ではないような気がするからやはりイジメが原因なのだろう。
14歳でコノ大学に入った秀才。
一般的に大学に入学する年齢は18歳だから、イジメの原因はコノ年齢の差によるものなのではないかと思う。
女の子であればミドルスクール(中学)くらいで成長は止まってしまうから、14歳でも18歳と大して変わらない体型なので余り目立つことも無いけれど、男の子の場合14歳と18歳では明らかに背丈や体のつくりが違う。
私には何もできないけれど、きっとマックスさんはココに来てサミュエル君と私を助けてくれる。
私に出来ることは、その時が来るまでサミュエル君の精神状態を安定した穏やかな状態に留めておくこと。
私はサミュエル君とマックスさんの橋渡しをするために頑張る!
そのために神さまは、ココで私にサミュエル君を合わせたのだ。




