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探偵マックス・ベル短編集(Detective Max Bell)  作者: 湖灯
★コロンビア大学拳銃乱射事件(Columbia University shooting)
24/37

【ある天才少年③(A certain genius boy)】

 俺は様々な情報を得るために車を運転しながら、坊主の母親と話していた。


 先ずは坊主の通学経路だが、最寄り駅であるヨンカーズ駅からハドソン方面行きに乗り、マーブルヒルで一旦降りて400フィートほど歩いてマーブル・ヒル-225 ストリート駅で地下鉄1号線に乗り換え116st コロンビア・ユニバーシティ駅で降りるルート。


 日頃は母親が駅まで車で送り迎えをしているが、今日は自転車で飛び出して行った。

 坊主の家からヨンカーズ駅までは2マイル以上はあるだろうから、信号待ちなども含めて約15分。

 そこから電車の待ち時間と乗り換えなどを含めると、大学に到着するまで30分。

 家を出て45分後に大学に到着する。


 母親は坊主が家を飛び出て、直ぐに止めるため車に乗ったがエンジンが掛らず家に戻りサンディエゴに出張中の亭主に電話を掛けた。

 亭主は距離が離れすぎていて何もできないが、ベッドサイドに置いてあった出発した日に空港で買った新聞に掲載されていた俺の探偵事務所の広告に目が留まり電話番号を教え、母親がココに連絡をしてきたのが10時50分。

 母親の記憶が正しければ、坊主が家を飛び出したのは電話を掛ける20分くらい前だということ。

 そして今は11時10分。

 俺のアパートからコロンビア大学までの距離は僅か1.8マイル(約2.9km)しかなく、ブロードウェイをあと0.5マイルも走れば大学の正門前に到着する。

 俺の左上には地下鉄の高架橋が並走している。

 これはもしかしたら坊主より先に大学に到着できるぞ!


 ところが、思ったように行かないのは世の中の流れ。

 大学の正門まで残り400ヤード(約366m)程のところで、2車線道路の右側に設けてある駐車スペースから発進したバンが右側車線を走っていた車と接触する事故が起きた。

 更に右側車線を走っていた車も、急に出てきたバンを避けようとして左にハンドルを切ったため左車線を走っていた車に接触してしまい止まった事故車によって道は塞がってしまい暫く通れない。

 “なんてこった‼”


 高架橋から地下に潜ろうとする地下鉄が、轟音を立てて通り過ぎて行く。

 おそらく坊主は、この電車か次の電車に乗っている可能性が高い。

 だが俺は、目の前の道が開くまで何もできないでいた。

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