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探偵マックス・ベル短編集(Detective Max Bell)  作者: 湖灯
★ブルックリン区、1番街の荷降ろし場事件
16/37

【マックス、探偵になる②(Max becomes a detective)】

 少し蓄えもあったし、退職金も出たのでハーレムにアパートを借りた。

 車の方はもう署にあるものは使えないのだが、以前スクラップ工場で見つけた1969年式ムスタングBOSS 429を退職して暇な時間が多く出来たので、その時間を利用してようやく完成させた。

 私立探偵マグナムの乗るフェラーリよりも、こっち(ムスタングBOSS 429)の方がずっとイケている。

 あとは美人の相棒を見つけないと……おっと、その前に探偵事務所の旗揚げのほうがまだだった。


 アメリカで探偵業を営むにはライセンスが必要になる。

 ライセンスの取得条件には、成人であることや健康であること、身分証明書の提出と言った極当たり前の物の他に、犯罪歴が無い事と業務賠償責任保険に加入が義務付けられる。

 更に、これは元刑事だった俺にとって左程問題はなかったが、警察科学や犯罪法の熟知や捜査業務の実務経験も問われる。

 つまり素人がいきなり探偵にはなれないと言う事だ。


 そして探偵になると、公に拳銃を所持することが出来る他、個人のSSN(社会保障番号)や社会保険登録番号の検索、クレジットカードの履歴や明細の閲覧、犯罪歴や離婚歴などの個人情報を調べる事も許される。

 つまり自分の力だけで犯罪捜査が出来てしまうってことだ。

 やる前から何だかワクワクしてくるぜ。


 とりあえず事務所兼用のアパートを借りる契約と車のレストア費用で退職金が吹っ飛んでしまったので、登録費用と業務賠償責任保険に加入する金はピーターから借りた。


 登録を済ませたあと新聞に公告を載せ、アパートとポストに『Max,P.I(マックス探偵事務所)』の札を掛けた。

 あとは依頼の電話が掛かって来るのを待つだけ。

 テーブルの中央に携帯を置き、手前にメモ用紙とボールペン、そして携帯の奥には卓上カレンダーを置いて椅子に座って携帯が鳴るのを待っていた。


 しばらく待っていると、待望の電話がかかって来た!

「Yes, this is Max private eye(ハイ、マックス探偵事務所です)」

 電話を待っている間に何度も練習していた通り、ハッキリとしたアクセントに、いかにも誠実そうな口調で相手に伝えることが出来た。

 早速右手にボールペンを持ち、真新しいメモ用紙のページを捲り、電話相手の名前と会社名を記入した。

 相手は保険会社の人。

 保険に関する調査依頼⁉

 保険会社は保険金詐欺などを暴くために探偵を使うことは知っていたから。

 幸先のいいBIGな仕事に胸をワクワクさせながら話をするが、どうにもお互いの話が噛み合わない。

 戸惑いながらも紳士的に対応していたが、結局その電話は生命保険のセールスに関する電話だった。


 2回目の電話は電気事業者から、そして3回目の電話はインターネットサービスに関わるもので、いずれもセールスの電話でそのあともセールスやアンケートなどの電話が続き、中にはNY市警時代の仲間からの冷やかしや励ましの電話も掛かって来た。

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