表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/64

60ー終わった


(落雷の音!皇帝だわ)


リリアンはロヴェルとヨイテに皇帝とした会話を話した。


ヨイテは叫んだ。

「馬鹿げている!女神を降臨させようだなんて」

ロヴェルが低い声で言う。金の瞳は氷の様に冷たい。

「元々皇帝の常軌は逸している。やることは同じだ」


ロヴェルを見上げると、頭をぽんと撫でられた。

「帝国民を皆殺しにさせるわけにはいかない。心配するな。ヨイテがだいぶ皇帝の体力を削ってくれた」


リリアンの元にロヴェルが来る間、皇帝と対峙していたのはヨイテのようだ。

(皇帝と対峙できるなんて。ヨイテはやっぱりすごい魔術師なのね)


「ん?」

ふいに、嗅いだ事のある独特の香りが鼻をついた。ロヴェルのポケットから香る気がする。


「ロヴェル!まさか師匠から何か受け取ってない?」


「ああ、そういえば」

ロヴェルがポケットから出した小瓶は、見覚えのある色と香りの薬瓶だった。ビビがここ何年も研究していたものだ。――魔力回復剤。


リリアンは受け取ってすぐにグイッと飲んだ。リリアンの指にはまっていた指輪がさらさらと崩れた。


一瞬の出来事だったので、ロヴェルとヨイテは目を見張った。


「ハイ・ヒール」

リリアンはロヴェルとヨイテに向かって同時に唱えた。


金の粒が舞い、一瞬白い光に包まれる。

2人の傷はまたたく間に消えた。



ロヴェルとヨイテは手を握りしめ、感嘆の声を漏らした。ヨイテはリリアンの治癒術を受けるのが初めてかもしれない。


「すごい····」


3人は雷鳴が響く皇城へ急いだ。



皇城は火の海だった。雷が所々に燻ぶり、発火している。瓦礫の下敷きになっている使用人もいた。


「私は皇帝を探す。ヨイテ、リリアンを頼んだぞ」

「気を付けてね」

リリアンが言うと、ロヴェルはにやりと微笑って消えた。


(私は私の出来る事をやろう)


「お嬢様、どこから行きますか」

ヨイテが問うと、リリアンは挑むように言った。


「全部よ」


目を閉じて、集中すると人の気配が白く浮かび上がる。赤く光る者は軽傷。紫は重傷。


(もっと。もっと広げよう)

皇城を覆うくらいに。大丈夫。今回はエルフの里の様にはならないわ。


確信があった。まだまだ広げられる。皇都を覆うくらいなら行けそうだ。一人一人、陣の中に入れる。

(この危うそうな光は、ツエイク卿だわ。これは外して)


心の中で叫んだ。

(エリア・ハイヒール)


皇城の所々で白い光の柱が立った。またしても金の粒が空を舞う。


痛みによる叫び声は聞こえなくなり、リリアンはヨイテを振り返る。


「けが人はもういません。火消しは城の衛兵にまかせて、私達はカインツ卿の所へ加勢に行きましょう」


ヨイテは頷いた。

「流石です。お嬢様」

リリアンは微笑って言った。

「そうでしょう?私は帝国一の治癒術師だもの」




しばらく走ると、ラナの叫び声が聞こえた。

「お嬢様!避けて!」


ヨイテが素早くリリアンを抱えて飛んだ。リリアンが居た場所に大きな瓦礫の破片が突き刺さる。


ヨイテはひらりとラナの横に着地した。

「状況は?」

ラナの額から汗が流れる。

「悪いですよ。4人がかりでこれですから」


リリアンのエリアヒールで、ラナ達の負わされた怪我は治っている。しかしアーサーの方が優勢だった。


ヨイテはリリアンを柱の陰に降ろすと、低い声で言った。 

「ではお嬢様、今からは鉄より硬いバリアを作ってくださいね」


リリアンは頷いた。








 ❉❉❉❉


鳴り響いていた雷鳴が止まった。暗雲だった雲が少し晴れ、すき間に青空が見えた。

上空に黒い点が見える。ロヴェルは黒い点に向かって風に乗り真っ直ぐ飛んだ。



近くまで飛ぶと、点は人の形に変わり、それが自分に似た人物であることが分かる。


金の髪が揺れ、金の瞳は濁って見える。その人物は息を整えながらこちらを見据えた。


「力を出し切りましたか?」

「そのようだ」


ロヴェルは剣先を皇帝に向けた。


「では、いつもの力試しを致しましょう」

「はは。力を使い切った私と、回復したばかりのお前とか?」

皇帝は力なく嗤った。


「ええ。もう引導を渡す時ですので」

「そうか。なら仕方ないな」


ロヴェルは振り上げた剣をおろした。

距離はあったが、皇帝の首はあっけなく飛んだ。




 ❉❉❉❉❉



アーサーとヨイテ達を戦いを、リリアンは飛び出したいのを必死で堪えながら見守っていた。


リリアンのヒールでは体力までは戻らない。カインツとエルディウス。ラナとヨイテの、4人がかりで相手をしていると言うのに、アーサーに隙がなく勝機が見えない。


(みんなにまた傷が増えていく)


リリアンが鉄より硬く張ったバリアの中で、自分の無力さに打ちひしがられそうになった時、上空から

風の刃が落ちた。アーサーの剣を持った右腕が飛んだ。

そのまま小さな竜巻が起こった。


粉塵が収まると、膝を地面に着け右腕を押さえたアーサーが見えた。



「もうやめろ」

上空からふわりと降りたロヴェルは、アーサーに何かを投げた。



一瞬見えた金色。すぐにヨイテがリリアンの前に立ち、見えなくなった。


ロヴェルから受け取ったものを抱きしめると、アーサーが何か呟いた。微笑んでいるようにも見えたが、一瞬だったので分からない。もう一度見た時にはアーサーは消えていた。


カインツが追おうとしたが、ロヴェルが止めた。


「追わなくていい。追跡は他で付けておく。あれだけの深手だ。時間の問題だろう」


ロヴェルはくるりとこちらを向いた。

リリアンはしゃがんだまま、バリアを解いた。


「終わったの?」


ロヴェルは少し微笑んだ。

手を広げ、リリアンを待っている。立ち上がり、胸に飛び込むとロヴェルもリリアンの肩に顔を埋めた。

そして長いため息を吐くと呟いた。


「ああ。終わった」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ