表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/64

54ー教会との確執


リリアンに部屋から追い出され、ヨイテがすぐに結界を張った。

「ヨイテ。分かってると思うが、いつもより頑丈に張るんだ」

イライラとロヴェルは言った。

仕方ないとは分かっていても、「離れるな」と言ったその日のうちにこれだ。



聖神国に来ると、この清浄な空気が気に障り、破壊衝動に駆られそうになる。カインツ達に周辺を探らせている。治癒が終わったら一国も早くこの国から出なければ。



しばらくすると、フラフラだったので下がってもらった皇太子が戻って来た。


「公爵、すまないな。警戒を緩めた途端、このざまだ」

向かいの椅子に座り、皇太子は項垂れた。皇太子の顔色はまだ悪い。あまり寝ていないのだろう。


「いえ。私も皇帝がここまで彼女の死に執着するとは思いませんでした」


(他に皇太子妃の候補が出来た訳ではないだろう。何故未だドミナート嬢を消そうとする?)


「陛下はナタリアの事はもはや気に留めていなかった

。毒は皇宮のものだが、目的はナタリアではなく、フォルツナー嬢の可能性が高い」


「リリアンがドミナート嬢と交流を持ったのは最近のことですが」

ロヴェルが言うと、皇太子は眉間を押さえ苦々しく言った。


「ナタリアにも監視を付けていたようだ。陛下にはまだ私が知らないルートをいくつも持っているようだな。教会にも、暗部にも目を光らせていたのに。くそっ」


(皇太子はドミナート嬢にだいぶ入れ込んでいるようだな。まぁ私に護衛を頼むくらいだからな)


「閣下」

偵察から戻ってきたカインツの表情が険しい。


「駄目です。撒かれました」

「どうしたんだ?」

皇太子が怪訝な顔で聞く。


「我々と一緒に来たはずのエルディウス教皇の姿が見えなくなったので、探させていたのです」


見える場所にいると腹が立つが、見えないとなると怪しい。

(何を企んでいる?)



「閣下、終わったようです」

扉の前に控えていたヨイテが言った。


ロヴェルと皇太子はすぐに立ち上がり、結界の解かれた部屋に入った。





❉❉❉❉❉❉


ドミナート嬢はまだ眠っているものの、顔色がだいぶ良くなっていた。

反対に見るからに顔色が悪くなっていたのはリリアンだ。


神官たちにドミナート嬢の容態を説明し、薬湯など準備させたあと、リリアンは膝から崩れ落ちるように気絶した。 



リリアンを別室に運びベッドに寝かせる。顔色が真っ白だ。側に居た女性神官たちも心配していた。


ロヴェルはリリアンの手を握った。

(毎回ぎりぎりまで魔力を使う。国宝級の魔力量を持ちながら、それでも足りないほどの魔力を使ったのか?)



「う···」

リリアンの紫色の瞳が薄っすら開いた。


「起きたか?」

ロヴェルは優しく声をかける。


「また何日も眠るのかと思ったぞ」

優しく言いたいが、少し意地の悪い言い方になってしまった。


リリアンは身体を起こした。

「魔力切れじゃないわ。ちゃんとセーブして使ったもの。ただ、一度にたくさん使いすぎて身体がびっくりしたのかも」


怒られる前に言い訳する子供のようだ。ロヴェルは少し笑った。

「ふん。何の言い訳にもならない。まだ寝ていろ」


横にならせたものの、リリアンの瞳はぱっちり開いている。

「なんだ?眠くないのか?」

「うん。目が冴えちゃった。ロヴェル、聞いてもいい?」


ロヴェルは優しく頬を撫でた。

「いいぞ」


リリアンは目線を下にしたり、上目遣いにこちらを見たり、気まずそうにしている。

(いちいち可愛いからやめてくれ)


口付けしたい衝動に駆られたが、病人同然だ。自制する為に手を離す。

「何が聞きたいんだ?」


「その、シュヴァルツと教会は何があったのか知らなくて」


(ああ。言ってなかったか)

「うーん」

どこから説明するか考えていると、リリアンが慌てて言った。


「あっ他の人から聞いた方がいい?」

「いや。言ってなかった私が悪い」


とはいえ、明るい話ではない。この話を自分で誰かに説明するのは初めてだ。


「教会の崇める女神は、シャマルアーソ神だろう?私の母であり、前公爵夫人の信仰は女神マリだった」

「え?それって」 

「ああ。今で言う異教徒だ。あの頃はマリ教も異教徒とは呼ばれていなかった」 


帝国では今でこそアーソ教が主とされているが、確かにリリアンが教祖をしている時はいくつか大きな宗教があった。その中で影響力の高かったのがアーソ教とマリ教だ。いつのまにかマリ教が衰退したのだと思っていたが、アーソ教との対立の結果だったのか。


「皇室と教会が手を組み、マリ教を迫害した。異教徒として。母は異教徒と通じた罪で教会に囚われ、シュヴァルツと教会が戦争になりかけた」

「戦争までは発展しなかったの?」


「ああ。戦争前の会談で、教会側の人間がシュヴァルツの食事に毒を盛ったんだ。会談に訪れていた父や兄たち、当時のシュヴァルツの腹心たち皆が毒で死んだ」

「····!」

リリアンの顔が青ざめる。躊躇したが、ロヴェルは一気に話してしまいたかった。途中で口を閉じると、しばらく開かなくなりそうで。



「俺は当時子供だった。それでもシュヴァルツの生き残った重鎮たちが皇室と教会を抗議した。戦争になる一歩手前で、皇室が教会を裏切った。全て教会の目論見とし、シュヴァルツには自治権と、教会にはシュヴァルツへの不可侵を誓わせた」


ーふぅ。

合間にため息が漏れる。

「皇室はマリ教を異教徒とし、教会に恩を売り、シュヴァルツの勢力を削いだ。そういう訳で私は皇室と教会、両方に恨みがある」


「前公爵は、ロヴェルのお父上は、皇帝のお兄様だったのでしょう?」

「皇帝は家族の情など持ち合わせていないからな」














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ