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帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第二章

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52ー招かれざる客②


ヨイテは低い声で言った。

「何度もお伝えしておりますが、閣下のいない時にそのような要求には応じられません。司教である貴方の入領も許可されていないはずですが?」


サレム司教が気にした風もなく応えた。

「神聖力を無力化するアーティファクトを付けております。それと許可という話でしたら、フォルツナー令嬢も神殿の許可なく治癒術を使用しております。おあいこということになりますね」


(なにがおあいこだ。その条件で入領できる神殿関係者はドミナート嬢のみ。お嬢様に至っては4年も前から治癒術を使用しているというのに)

イライラと考えていると、後ろにいたリリアンが口を開いた。


「ヨイテ。私も何か言っていいかしら?」


怒りを孕んだ固い声に、ヨイテはすぐに一歩下がった。

「どうぞ」


(ロヴェルのいない時に、過度に神殿と揉めるのは良くないわよね)

しかしロヴェルがいなければ、簡単に拐かされると思われていることが腹が立つ。


「サレム司教。私は神殿の預かりではありません。聖神国に行く予定はありません。お引き取りを」

言葉に少し魔力を込めた。威圧的に感じるように。


サレム司教は少し怯んだが、引かなかった。反対に目が恍惚としている。


「ああ、なんと美しい」

ぼそりと呟くと、ゆっくりと手を伸ばし近付いて来た。


(しまった)

教皇の時に使っていた声音は、逆効果だったかもしれない。


「どうか私と共に聖神国へお戻りください」


目が怖い。リリアンは知らぬうちにサレム司教へ魅了をかけてしまったようだ。


ラナとエドガーが剣を構えて間に入った。

「お下がりください。それ以上近づかれますと、武力を行使しなければなりません」


剣を向けられ、サレム司教の顔に怒りの色が浮かんだ。

「生意気な···私は教皇の代理人だぞ。本来なら貴様らと関わることすらないというに」


ブルブル震えたかと思うと、杖でエドガーの頭を殴った。

「エドガー卿!」


エドガーはその場を動かない。こめかみから血が出たが、冷めた眼で司教を見ていた。


ハァハァと肩で息をしながら、サレム司教は叫んだ。

「武力で行使だと?やれるものならやってみるがいい!神殿と戦争になってもいいのなら!」


リリアンはエドガーにかけよろうとしたが、ラナに止められた。


「フォルツナー嬢を聖神国へお連れする。教皇猊下のご意思だ。異論は許さない!」



ーーーズシッ


地面が揺れた。


「誰を連れて行くだと?」


「ーシュヴァルツ公爵閣下」 

金の髪が目に入ると、サレム司教の顔が一気に青ざめた。


「くだらない妄言を吐いたのは誰だ?」

怒りに満ちた、低い声。

サレム司教は震えながらも言った。

「ー公爵ッ閣下!エルディアス教皇の代理人として来ました。リリアン・アナベル・フォルツナー嬢をー···」


ドガッッ!!


ロヴェルはサレム司教の言葉を最後まで聞かず、素手で殴って吹っ飛ばした。


「聞こえなかったな」

ロヴェルは少しすっきりした顔で言った。


「うぅっ」

壁に激突したサレム司教は、床に座り込んだ。苦痛に耐えながら、自身に治癒術を施そうとしている。

それを見たロヴェルは、ニヤリと笑みを浮かべ司教に近づいた。


「な、何をしている!公爵を止めろ」 

サレム司教は慌てて叫ぶ。


聖騎士たちがロヴェルに斬り掛かった。


「ロヴェル!後ろ」

リリアンは叫んだが、聖騎士たちの剣先がロヴェルに届くことはなかった。

振りかぶったまま、停止している。


「閣下、戦闘になるならお嬢様を避難させないと」

ヨイテが手をかざしている。魔術で動きを留めているようだ。


「ああ。そうだな。この状況なら戦争になっても仕方ない」

ロヴェルはゆっくりとサレム司教に近付いた。


「私の婚約者を、私がいない間に連れ去ろうなどと言う不届き者は消しておかないとな」

ロヴェルは剣を振り上げた。



「お待ちください公爵」


1人の聖騎士が、ヨイテの拘束を受けずにロヴェルの首先に刃を当てた。


リリアンは驚いて声も出ない。ヨイテは「しまった」と思わず声を漏らした。

「あの方はー···」


「公爵はいいでしょうが、神殿はまだシュヴァルツと戦争をしたくありません」


ロヴェルは当てられた剣先を指でおろし、侮蔑を含めた眼で男の顔を睨んだ。

「猊下、もう隠れるのはやめたのですか?」


ロヴェルがそう言うと、茶髪だった男の顔が一瞬歪み、銀髪に変わった。瞳は紫だ。


「私が直接来れば、必ず揉めると思ったので、代理を頼んだのですが、無意味でしたね」


そう言うと、エルディアス教皇は剣を納めた。手で、肩のほこりを払うように叩くと、聖騎士の衣装がたちまち聖白衣に変わった。


ヨイテが警戒の視線を向けると、エルディアスは言った。

「私も神聖力は抑制していますよ。安心してください」


「教皇猊下が使われるのは、神聖力だけではないでしょう」

ヨイテは冷たい声で応えた。安心出来るわけがない。


「まぁそうでしょうが···公爵も剣を納めてください。私には争う意思はありません。フォルツナー嬢の訪問は、聖神国からの正式な要請です」


自分と似た、紫の瞳がこちらを見た。

(この人が本当にエルなの?)


リリアンと目が合うと、エルディアスは優しく笑った。


「フォルツナー嬢、ドミナート嬢が毒で危険な状態です。我々でも手に負えず、おそらく帝国で貴方しか治癒することが出来ないでしょう。聖神国へ来ていただきたく存じます」

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