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帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第二章

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52/64

51ー招かれざる客①

4年前、女神の娘がシュヴァルツ公爵領に現れたと報告を受けた。


聖神国に属し、聖騎士であるエルディアスは、直接シュヴァルツ公爵領に確認しに行くことが出来なかった。だから、慎重にあらゆる方法で調査した。


ケルベロスの実でヘルハウンドを集め、混乱に生じて確認した姿は、間違いなく10年探し続けた少女だった。






「偉大なる皇帝陛下。神殿を掌握する対価として、賜りたいものがございます」

玉座の前に膝を付き、エルディアスは皇帝に言った。


「ふむ。予想はつくが、申してみよ」

冷めた眼で皇帝は見下ろしている。


「女神の娘を、神殿に返していただきたい」


「ほう?神殿に、なぁ」

にやりと笑い、語尾に含みを帯びて皇帝は復唱した。


自分の本来の目的は皇帝には暴かれている。かと言って言葉にはしない。


「いいだろう。まずは言葉通り神殿を掌握してみせよ


もともと、腐敗しきった神殿を変えようとしていたのは事実。

同じソードマスターであるシュヴァルツ公爵には、面識はなく、何の感情も持っていなかった。ーが、彼女を手に入れたとなると、今は殺意しか感じない。












ーーーーーーーーー


「ー猊下、ドミナート侯爵令嬢が聖神国へ入りました」


4年前を思いながら、ぼんやりとしていたエルディアスは報告に来た司祭に向き直った。


「なるほど。無事に帰ってきたということは、公爵は彼女を中へ入れることを許したのか」


司祭を下がらせ、エルディアスは瞼を閉じた。皇城のバルコニーで会えたリリアンを思い出す。


「もう少しで会えます。リリィ」


ーまず、神殿に返してもらう。のちに、自分の元へ返してもらおう。
















ーーーーーーーーー


皇城での式典から3ヶ月が経った。

公爵領では、帝国の王太子誕生に対するお祝いムードから、祝う対象が変わった。


ロヴェルとリリアンの婚約が発表されたのである。





「リリアン、婚約おめでとう。これは私とザガン兄さんから」


そう言ってカナリアから花束を貰った。


「ありがとう。ザガン、カナリア」

照れくささと、恥ずかしさで少し顔が赤くなるのを感じた。


花束にふわりと保存魔術をかけ、護衛に手渡した。



久しぶりに街へ来たリリアンは驚いている。街の至る所へ紫の花が飾り付けられており、広場には金と紫のタペストリーが目立つ所に飾られている。


ロヴェルが、領内にこんな形で触れを出すのは初めてだったらしく、領民も戸惑っていた。


婚約披露パーティーも行うつもりだったらしいが、ロヴェルがあまりに忙しく脚下になった。


「でも意外だわ。公爵様はこういうことを派手にやるのはお嫌いかと思ってた」

リリアンもカナリアの意見に同意だ。


「そうよね····」

なんにせよ、リリアンとの婚約を喜んでいるということなので、素直に嬉しい。



カナリアとリリアンの会話を、少し離れた場所で聞いていたエドガーとラナは、呆れるように言った。


「閣下は外堀を埋めるのに必死ですね」

「お嬢様が気づかれていないようで何よりです」


「不敬だよ」

背後からひっそりと現れたヨイテに、2人はビクッとした。


「ヨイテさん、お戻りでしたか。どうでした皇都の様子は」

エドガーが慌てて話題を振ると、ヨイテは眉を潜めて言った。


「皇都では全く話題に上がっていなかった。おそらく聖神国も同じだろう。情報操作がされているな」


エドガーはため息をついた。

「外堀、埋まらなかったのですね」

ヨイテはジロリと睨む。


気心が知れているから出来る会話だ。



「閣下が討伐へ行かれたのはいつだ?」

「2日前です。この度の以来は南部でした」


「南部か。戻られるのにまだ数日かかるな」


ロヴェルは相変わらず邸宅にいないが、長期に渡って留守にすることはなくなった。


(こんなに分かりやすく情報操作をしているんだ。近いうちに動きがあるはず)



「私は先に邸宅へ戻ります。お嬢様の護衛、頼みましたよ」







ヨイテが邸宅に戻るやいなや、バルトが慌てて駆け寄って来た。招かれざる客人が到着したようだ。












ーーーーーーーーーーーー


リリアンが邸宅に戻ると、そこはもう戦場のような空気だった。


門に人が集まっている。

白い甲冑を着た騎士達と、シュヴァルツナイトが睨み合い、今にも合戦が始まりそうだ。


リリアンに気付いたヨイテが近付いて来た。

「申し訳ありませんお嬢様。お嬢様のお戻りまでに追い返そうとしたのですが、力不足でした」


ヨイテの視線の先を見ると、金糸の刺繍が施された、白い法衣を着た人物が近付いて来る。

「やぁお初にお目にかかります。私は教皇の代理人、サレム・アナテリオ。フォルツナー伯爵令嬢をお迎えに上がりました」



「え?」



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