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帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第一章

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26ーエルフの探し人

ロヴェルはリリアン達の乗っている馬車より先に進み、周囲を警戒していた。

(小規模の襲撃などおかしい。邸は囮で、こちらに何かしてくるはずだ)


皇室がこの時期に何か仕掛けてくる可能性は低い。領内だから教会でもない。


(ーどこだ?隣国のナッシュベルか?この間の遠征で刺激してしまったか······)

あらゆる可能性を考えて、余計な事を考える思考を排除する。

余計な事、先程リリアンにした自分の行動とか。



後方から声がした。

「閣下!邸に侵入した賊ですが、逃がした模様です」

「なんだと?」

(邸に残して来たのは精鋭ばかりだ。カインも加わったというのに)

後ろから来た伝令に違和感を感じた。

「さらに報告ですが·······」

「まて、お前はどこから来た?馬車は?」

「私は支部1です。馬車は見ませんでした。閣下の前

を走っているのでは······」


(しまった)

血の気が下がると同時に、鋭い得物が飛び込んできた。

最小限の動きで矢を避け、馬を落ち着かせる。

気配を探りながら、数歩後ろで周りを警戒している部下に聞いた。

「続きは?」

「は········どうやら賊はエルフのようです。ビビ殿の研究室が目的でした」

「そのようだな」


木陰から、数人の気配がする。

1人が姿を見せた。長い銀髪だ。

「ベアトリクスはどこだ?」

出てきたエルフは抑揚のない声で聞いてきた。こちらが何者か分かっているようだ。


ロヴェルは馬から降りながら答えた。

「·········はじめて聞く名だな」

「公爵邸に居ることは知っている」

「ベアトリクスという人は知らない。········それより後ろを走っていた馬車に何かしたか?」

答えが返ってくるより先に、地面を蹴って間合いを一気に詰めた。頭に血がのぼる。

(殺しては駄目だ。吐かせないと)


相手のエルフも驚いてはいるようだが、ロヴェルの動きに付いてきた。エルフは魔術を放つのが人族より早い。放たれる前に素早く剣を抜き、地面を抉って足元を崩す。体勢を崩したところを拳で地面に叩きつけ、相手の首に刃先を寄せた。


エルフは目を見開き、咳き込みながら言う。

「やはりお前がシュヴァルツ公爵か。若いのに随分戦い慣れしているな」

エルフは倒されたまま、右手を上げようとピクリと手を動かした。ロヴェルは見逃さず、足で踏み押さえる。

「余計な真似はするな。こちらも我々だけではない」


仲間に合図をしようとしたのだろう。数人エルフの気配はするが、こちらもヨイテを始めとした隠密が潜んでいる。


エルフは熟考したあと、身体の力を抜いた。ため息とともに降伏の意思を見せた。

「分かった。歴戦錬磨のお前たちに、森から出てきた我々が敵うとは最初から思っていない」


その言葉を待っていたように、木陰から数人姿を見せた。


「だから無謀と言ったじゃない」

「ジーナシウスは血の気が多い」


ロヴェルはジーナシウスと呼ばれたエルフに、鋭い視線を崩さずに言った。

「こちらの質問に答えていない。馬車に何をした?」


離れない刃先をチラリと見て、ジーナシウスは答えた。

「あの馬車にはベアトリクスが保護した少女がいたはずだ。だからまたこちらで保護した」


「なに······?」

想像していなかった言葉が出てきて、一瞬頭が混乱する。

身体を起こし、ジーナシウスから離れる。

「ヨイテ。一度邸へ戻り状況を確認してきてくれ。そしてカインをこちらに呼び戻せ」


「は」

ヨイテの気配が遠ざかると、一旦ため息をつく。


リリアンが来てから、予想外のことばかり起こる。人生でエルフに会うことなどない人が大半だというに。木陰から出てきたエルフは10人ほど。皆銀髪で美しく、顔の判別が付きにくい。


「こいつらから取り戻さないといけないのか」

剣を収めながら、もう一度ため息を付いた。











「ロヴェル・ド・シュヴァルツ公爵閣下」 

1人のエルフが近づいてきて、丁寧にお辞儀をした。こちらのお辞儀とは少し異なっている。


「不躾で申し訳ありません。我々は人の世に疎いもので。こちらに敵意はありません。ただ、沙汰のない同胞を探しに来たのです」

口元は少し微笑んでいるが、目が微笑っていない。


そもそも、エルフに関しては情報が少ない。序列があるのかも分からない。

(ビビ殿に少しでも聞いておけば良かったな)


「公爵邸に侵入したのも、敵意はないと言うことか?そなたらの言う、ベアトリクスと言う人物を探している目的はなんだ?」


別のエルフが思案しながら答えた。

「ふむ。答えなければ無理にでも聞き出そうとされそうなので、答えるのが最善でしょうね」


「ライラン!」

ジーナシウスが声を荒げた。


「仕方ないでしょう。我々の戦力ではとても敵わない」

ライランと呼ばれたエルフは、やれやれと手を振った。


「では閣下、私が説明致します」

女性のエルフが前に出て言った。先程ジーナシウスを血の気が多いと言っていた女性だ。


「ああ。ええと···」

何と呼べばいいのか。

女性のエルフはロヴェルの戸惑いに気付いたのか、微笑って話し始めた。

「私はザイーダ。エルフには序列がなく、ゆえに敬称も必要ありません」


「ああ。ではザイーダ。頼む」


「はい」

ザイーダはもう一度微笑んで話し始めた。

「我々には王はおらず、序列もありません。所々に集落があり、そこに長がいるだけです。我々の集落の次期長となる人物が、数百年前に消えたまま音沙汰がなくなったので探しにきたのです。その方がベアトリクスです」


「数百年前に消えた長を、今探しに来たのか?」

「我々の生は長いですので。数百年前にふらっといなくなっても気にするものはいません。ただ、最近になってベアトリクスが女神の娘を保護したと聞き、探さぬ訳にはいかなくなりました」


「そなた達も、女神の娘と言うのだな」

意外だった。人間たちが勝手に作った造語だと思っていたから。


「ええ。女神の娘は女神の娘です。他に呼びようがないですからね」


ザイーダの言い方に、違和感を感じた。

「一応聞くが、女神の娘とは、魔力の高い女子を指しているんだよな?」


ザイ―ダはきょとんと言った。

「間違ってはいませんね。女神と同等の力を持った、女神の子孫です。元々女神も魔力の高い人間でしたから」


ロヴェルは固まった。

(女神の、子孫?同等の力?)

それが本当だとしたら、リリアンの立場はとても危ないのではないだろうか。帝国どころか、大陸中が欲しがるだろう。


固まったままのロヴェルを横目で見ながら、ザイーダは言った。

「さて、閣下。我々の目的はお教えしました。ベアトリクスはどこにいるのですか?」



ロヴェルは頭を押さえた。

(おそらく、彼女の事なのだろう)

しかし、実を言うと数日前から行方が分からない。

ロヴェルは正直に答えた。


「······行方不明だ」






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