表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/64

23ーデートのお誘い

ロヴェルは赤く染まった頬を、手でぱたぱたと仰ぐリリアンを眺めた。

(それで赤面は収まるのだろうか?)

フッと微笑ってしまい、リリアンにジロリと睨まれた。


ふわふわと流れる薄紫の髪を、思わず触りたくなり何度我慢しただろうか。

ロヴェルは自身の心情から目を背けていたものの、もう誤魔化せないことに気付いていた。自分はリリアンに惹かれている。


自ら頼んでおきながら、中断させてしまった講義。誰であろうと、たとえリリアン本人が付けた傷だろうと、彼女が傷付く姿は我慢出来なかった。

(あのような態度を取ってしまって驚いただろうな)


頭を冷やす為に数日、邸から離れていた。



コンコン。

「閣下、よろしいでしょうか?急ぎの報告があります」


カインツが外から声をかけている。入ってこないということは、良くない報告なのだろう。

まだ眺めていたかったものの、ロヴェルは立ち上がった。

「リリアン。また夕食の時に」


願望かもしれないが、リリアンの表情は少ししょんぼりして見えた。

夕食の時には彼女の赤面も治り、ゆっくり話が出来るだろう。

ロヴェルはカインツを連れて自室に戻った。











「皇太子が神聖国へ入国したようです」

隠密部隊のヨイテが報告した。


右眉がぴくりと動く。皇太子のことは心底どうでもいいのだが。

「この時期に?目的はなんだ?」


「おそらく、教皇の息女との婚姻を勧めるためかと」

「ふむ·······」

「何か裏もありそうですね。今の教会はシュヴァルツに不満が溜まってるでしょうから」

カインツがため息まじりに言った。


「そうだろうな。おおかた皇室に泣きついたのだろう。皇室が教会にやけに協力的なのが気になるな」

シュヴァルツを陥れるために、皇室と教会が一次的に協力することは今まで何度かあった。


ーふぅ。ため息をつきながら眉間に手を当てた。

「神聖国の隠密を増やせ。状況を逐一報告しろ」

皇室にも手を回したいところだが、皇帝の目を欺くのは難しい。


「お嬢様が来られてから、皇室の動きが活発になりましたね」

悪気なく言うカインツを睨む。


皇帝は明らかにリリアンに狙いを定めている。


「自衛のためにバリアだけでも完璧にマスターしてもらわないとな」

ロヴェルは呟いた。























ーーーーーーーー


「観劇は好きか?」

「え?」

ロヴェルの口から、似合わない単語が出てきたので思わず聞き返してしまった。


「観劇だ」

ロヴェルは気にせず繰り返す。


2人は約束通り、広間で一緒に夕食をとっている。

リリアンは意図がわからず、とりあえず頷いた。

「好きだけど、どうしたの?」


この世界に娯楽は少ない。教会を出てからは見れていないが、教皇だった頃、何度か接待で見に行ったことがある。



「明日から街の劇場で、帝都の劇団が公演をするんだ。視察に行かねばならない。一緒に行かないか?」


(仕事の一環か。びっくりした) 

「行く」

リリアンが笑顔で答えると、ロヴェルはほっとしたように微笑った。



初めて会った時から無愛想なのは変わらないが、ロヴェルはリリアンに色々な表情を見せてくれるようになった。リリアンはそれがとても嬉しい。


「いつ行く?」

「早い方が良い。明日行こう。夕方部屋へ迎えに行く」












翌日、リリアンはご機嫌だった。朝早く目が覚め、夕方まで何をしようかと悩みながら騎士団の稽古場に来た。


「エドガー卿、今回の遠征で怪我をした人が居たら教えてくれる?」

朝稽古中のエドガーは驚いてリリアンに駆け寄ってきた。

「お嬢様、良いのですよ。今回の遠征は近場でしたので、危険な魔物はいませんでしたし、あまり頻繁だと私が閣下に叱られます!」


稽古中だった他の騎士たちも集まってきた。

「お嬢様!ありがとうございます」

「このくらいの傷、なんでもありません」

「テールがヘマして脚の骨を折ったくらいです」

わらわらと寄ってきた騎士たちを、エドガーがなんとか遠ざけようとする。


「散れ散れっ!私が閣下に怒られるんだぞ」


リリアンは騎士たちを見ながら、ふむ···と手を顎に添えた。

「本当に大怪我をした人はいないみたいね」

「そうです!なので部屋に戻りましょ······」

エドガーが最後まで言い切る前に、リリアンは両手で輪を作るように広げた。


「エリアヒール」


リリアンが唱えると、稽古場は薄い光に包まれキラキラと光の粉塵が舞った。


一瞬の沈黙の後、騎士たちの歓声が上がった。

「すごいっ小さな切り傷まで治ったぞ」

「テールの脚もだ!」

「奇跡だ······」



上機嫌だったリリアンも、騎士たちの興奮具合を見て我に返った。

(やり過ぎたかしら······?)




叫びながら走ってくる気配があった。

「お嬢様!今の光は何ですか」

カインツが青い顔をして駆け寄る。


我に返ったリリアンは目をそらすしかできない。

カインツはサッとエドガーを見る。

「エドガー!今度は何だ!」


「お嬢様〜!」

エドガーはわざとらしくリリアンにすり寄った。

「エドガー卿を責めないで、その、私がちょっとはしゃぎ過ぎてみんなにエリアヒールを······」


カインツは顔を手で覆い、ため息混じりに言った。

「お嬢様、そんな高度な光魔法をホイホイ使わないでください。公爵邸は安全とは言え、人の出入りも多いのですよ?」


リリアンは何故怒られているのか分からず、曖昧な顔で頷いた。


「お嬢様、あまりピンと来ていませんね?」

「えっと、うん」

ふぅ。と短くため息を付いて、カインツはゆっくり話してくれた。


「公爵領は、教会の勢力は入れませんが、他はそうではありません。他国の者や、他の勢力の者にお嬢様の力が必要以上に知れ渡れば、お嬢様が攫われることもあり得るのですよ」


リリアンは少し青ざめた。


「もちろん、そんなことは我々が阻止しますが」

「分かったわカインツ卿。私が軽率だった」


カインツは騎士たちに向き直り、一喝した。

「お前たち!今後お嬢様の治癒を必要以上に求めるなよ!」


「はい!すいませんでした!」

騎士たちも顔を引き締めて返事をした。



エドガーはこそこそとカインツに近づいて小さく言った。

「あの、閣下は今どこへ?」

「良かったな。閣下は今留守だ」

エドガーは明らかにホッとした。


「だが閣下の耳に入るのは時間の問題だろう」

エドガーは目に見えて肩を落とした。

「ですよね·······」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ