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帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第一章

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23/64

22ー皇帝と皇太子

「お呼びですか?陛下」

「ああ、テオドラン。こちらへ」

皇太子は皇帝の前に進んだ。


「紫の妖精のことは聞いたか?」

「ようせ········シュヴァルツ公爵の治癒師のことですか?」

公爵領で教会の反対を押し切って、講義をしたと聞いている。


「少し、教会に恩を売ってやろうと思ってな」

皇帝はニヤりと口を歪ませた。


「何をなさるのです?」

「テオドランは教会がなぜシュヴァルツに入れないのか知っているだろう?」


「·········ええ」

テオドランはまだ6歳くらいだったので、当時は知らなかったが、神聖国とシュヴァルツの確執により前公爵夫妻とシュヴァルツ側の重鎮たちが亡くなった。教会側の過ちと神聖国は認め、公爵領への不可侵を皇室により言い渡された。


教会はシュヴァルツに足を踏み入ることが出来ない。シュヴァルツと神聖国の関係は悪化して行った。


皇帝はシュヴァルツに神聖国が立ち入れないよう結界を施した。


「なので現在は和解はしていないものの、公式的には対立はしていない曖昧な関係に収まってますよね」


「そうだな。しかし講義の件で教会側が、シュヴァルツに侮辱されたと私に泣きついてきてな」

皇帝はわざとらしく困った顔をした。

「はぁ」



「だから少しの間、シュヴァルツの結界を解いてみようかと」

「えっ·······しかし公爵が黙っていないと思います」

ぎょっとして皇帝を見上げる。


「ははは。そうだろうな。だから流石にそれは辞めた。」


(私を試したのか?)


結界を維持しているのは、シュヴァルツ公爵領の魔法使いだが、皇帝にも結界を解く権限があった。――しかしそんなことをすると、皇室とシュヴァルツの微妙な関係は崩れてしまう。シュヴァルツが帝国を離れる可能性もある。それは、皇帝も望んでいない。


「テオドラン。神聖国へ行け。近い内に皇城で婚約パーティーを開くことにする。ドミナート嬢をお連れしろ」



ナタリア・ドミナート。現教皇の娘であり、テオドランの婚約者だ。


「公爵も皇城に登城するしかないだろう。そこで教会に治癒師と会う機会を設けてやれる」 


(あの治癒師の為に自分の婚約が利用されるとは)

納得できないが、あの治癒師に皇帝が入れ込む何かがあることはテオドランも薄々感づいてた。


一礼して答えた。

「では近い内に贈り物を持って神聖国に出発します」

「明日発て」

食い気味に重音で命令を受け、テオドランは更に頭を低くした。

「承知しました。········では」

くるりと背を向け、部屋を出た。親子らしい会話の方が冗談で、上下関係がはっきりした物言いがしっくり来る自身と皇帝の会話。


「はっ」

自虐的に嗤い、テオドランは自室に向かった。明日から忙しくなる。



















ーーーーーーーーーー


謝れぬまま、2週間が過ぎた。

多忙なロヴェルは、やはり邸宅を空けることが多かった。




「お嬢様。公爵様がお戻りになられましたよ。夕食はご一緒に食べられますか?」

ラナがにこにこと聞いてきた。


ここ数日、リリアンがロヴェルの帰りを待ってそわそわしていたからだ。

「うん。お願い」

今から会いに行こうかとも思ったが、リリアンは夕食まで待つことにした。早々に会いに行き、一緒に夕食を食べる口実がなくなっては困る。


コンコンコン。

「あら?どなたでしょう」

ラナがドアに向かうと、ドアの向こうから声がした。


「リリアン。私だ。入ってもいいか?」

「ど、どうぞ!」

リリアンは予想外の相手に喉がつっかえた。


ロヴェルは騎士団の正装をしていた。隊長であるロヴェルは、白を基調とした金糸の刺繍が施してある隊服を着ている。白いマントを翻し、歩く様はまるで王子様そのものだ。


どきりと心臓が鳴り、リリアンは胸に手をあてて抑えようとした。久しぶりに会うからだろうか?心臓が落ち着かない。

(心臓によくない美貌だわ)


「私を探していたと聞いたが?」

「えっ、そうだけど·······だからすぐに来てくれたの?」

ロヴェルは頷いた。


自分を優先してくれている振る舞いと、こくりと頷くロヴェルに今度は心臓がきゅんと鳴った。


落ち着かない心臓はとりあえず隅に置いておいて、リリアンは立ち上がって言った。

「ごめんっっ」


「·······何が?」

ロヴェルは何を力強く謝られているのか、本気で分からないという顔だ。困惑している。


「えっと、講義で心配をかけたことよ」

リリアンはしょんぼり言った。もう忘れているだろうか?


「ああ。そのことか。いいんだ。君が無事なら」

さらりと言うロヴェルに、リリアンは絶句しそうになった。

「ロヴェル·······!よくない。そういう言い方よくない········!」

(いろいろ勘違いしちゃうでしょうが)

「言い方?本心だ」


リリアンは胸中で叫んだ。

(この天然タラシが!!)

顔が赤くなりそうだ。


短いため息を付き、リリアンはとりあえず座った。落ち着くために極力普通に話しかける。

「と、とりあえず座ったら?今度はどこに行ってたの?」

言いながらリリアンは自分の隣をぽんぽんと叩き、手招きをする。しかしロヴェルは動かない。


眉を寄せ、手を額にあてて俯きながらロヴェルは言った。

「ラナ。こういうところも教えてやってくれ」

そして少し離れたイスに腰掛けた。

はた、とリリアンは自分が手招きした場所を見る。

そうだった。自分はベッドに座っていたのだった。


リリアンの顔は真っ赤になった。














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