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帝国一の治癒師リリアン・アナベルは 今日も仕事を選べない   作者: 織子
第一章

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22/64

21ー魔術講座②

ロヴェルは大ホールを見渡せる位置に椅子を置かせ、高みの見物を決め込んでいた。

「抗議の手紙は相変わらずか?」

「はい。数日前よりかなり増え、確認が追いついておりません」

バルトは答えた。


リリアンの魔術講義を公表したあと、教会から山のように抗議の文が届いている。


「ふむ。まぁ狙い通りか」



席は埋まり、定刻になった。リリアンが中央に現れた。

「おお····」

思わずバルトが感嘆の声を出す。

アゼリアのオーナーのセンスは素晴らしかった。


リリアンはグレーと白のマーメイドラインのシンプルなドレスに身を包み、髪は斜めに流れるように編み込まれている。


その姿は神秘的で美しかった。


全体が見渡せる場所を選んだので、声は届かない。

ロヴェルはリリアンの口が開いたり閉じたりするのを、ただただずっと見つめていた。


30分ほどの短い講義だった。この後は実技に移るらしい。

肘を椅子の枠に置き、ぼーっと眺めていたロヴェルは、隣にいたバルトの咳払いで我に返った。

「コホンッ。閣下、講義は終わりましたが、まだご覧になりますか?」


「ああ、いや」

少し見て仕事に戻るつもりだったロヴェルは、曖昧な返事をした。



(戻ろう)

ロヴェルは椅子から立ち上がった。

と、リリアンに近づく見覚えのある顔にピクリと顔を歪ませる。

(街の診療所の治癒師か)

リリアンを見る目が気に入らない。


「······実技も見よう」

ロヴェルは訓練場へ移動した。






ーーーーーーーーーーーー


訓練場に付くと、人が輪になっている。その中心にリリアンが居た。今度は声が聞こえる場所まで移動する。


「実技を始めます。と言っても異常状態を治癒する魔術なので、とりあえず私が見本を見せますね」

リリアンはそう言うと、左腕を突き出した。


(ふむ?状態異常もないのに、どうやって披露するんだ?)


リリアンは目を閉じて、深呼吸をした。

「ポイズン」

突き出した左腕が瞬時にただれる。リリアンは少し顔を歪めた。


(((は?!!)))


「何をしている!」

ロヴェルは大声で立ち上がり、周りで見ていたエドガーもカインツも声をあげた。 


瞬時にリリアンの側に移動し、腕を確認する。毒に侵され変色している。


「ロヴェル?」

リリアンは戸惑っている。

「ちょ、ちょっとロヴェル離して·······うっ」

痛みに呻く声を聞いて、パッと手を離した。


リリアンの額に汗が流れる。

「リザレクション」

スーッと皮膚のただれは消えて、元の白い綺麗な腕に戻った。


「こんな感じで····」

リリアンが講義を続けようと前を向くと、いつの間にかカインツもエドガーも、バルトまで怖い顔をして前に立っているのに気付いた。


「わっ?」

ロヴェルはリリアンを険しい顔で抱き上げた。


「実技は終了だ。解散!」


リリアンは抱き上げられ、抗議の声を出しているが、頭に血が昇っているロヴェルには聞こえない。


そのままリリアンの部屋のベッドまで運んだ。










ーーーーーーーーーーーーー


「········っ何を考えているんだ君は?!」


ロヴェルが腕を確認しながら、わなわなと言う。


(実技の仕方が衝撃的だったのかしら?)


「ロヴェル、教会ではあの方法で練習してたのよ。確かに初めて見たら驚くわよね」

だから大丈夫よ。という意味を込めて言ったのだが、ロヴェルに露骨に睨まれた。


「リザレクションの講義はあれで充分だ。あとは各々練習するだろう」


「え、でも」

「·······まさか君は、1人1人君の腕を差し出して練習させようとでも思っていたのか?」

声に怒気が含まれている。


リリアンは首を振った。

(2、3人してもらおうと思ってたけど)


怒りの理由が分からず、リリアンは黙った。

謝ろうとも思ったが、理由もわからず謝るのは悪手だ。


「毒は完全に抜けているんだな」

「うん」


ロヴェルはスッと立ち上がった。リリアンは反射でびくりとしてしまう。


「ロヴェル?」

「執務に戻る。リリアンは今日はもう休め」

「あ、はい」

若干まだ怒りを感じる背中をリリアンは見送った。







「お嬢様、大丈夫ですか?」

エドガーが入れ替わりで入ってきた。

「エドガー卿。講義はどうでしたか?」

「素晴らしかったです!講義もわかりやすかったですよ」

「そう」

リリアンはホッとする。じゃあ何故ロヴェルはあんなに怒っているのか?


「お嬢様?」

「私、ロヴェルを怒らせたみたいで」

「ああ、はい。あれは怒っていましたね」

「やっぱりエドガー卿もそう思いますか?何が気に入らなかったんでしょう」


「え、お嬢様、本気で言ってますか?」

エドガー卿の言葉に、リリアンは固まった。ここで本気で分からないと答えたら信用を失いそうだ。

「お嬢様がご自分の腕を傷付けられたので、それを閣下は怒っているんです」

エドガーは微笑って言った。


「そう····なの」

教会での訓練はもっと過酷な物もあった。あの程度で心配されるとは、リリアンは思ってもみなかった。




「それにしても、お嬢様はポイズンは使えるのですねと」

「うん。練習する時に使っていたから、それなりに使えるようになったのよ」

とはいえ、小さな範囲に限られるので、実用的ではない。


「自分の身体を練習台に使うのには驚きましたが、私もリザレクション練習して使えるように頑張りますね」 

「スペルと魔術の構築さえ頭にあれば、あまり失敗はしない術だから頑張ってね」

「はい。では私はドアの外におりますので、ゆっくりおやすみください」



エドガーが出ていくと、リリアンはベッドに横たわった。

(あとでロヴェルに謝りにいこうかな)


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