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10万円でOK! 【その6】



少し長くなっちゃった〜 _φ(゜Д゜ )

 大きな和風テーブル。七星さんと私が並んで、向かい側に大久茂が座った。


 障子戸のお座敷形式の個室にて、メニューから一通り注文をした所で話は始まった。



「さて、早速始めよう。もしかして、一軒家の床下に害虫駆除の薬を散布したとしたら効果はあるだろう。が、集合住宅の中の1軒だけ駆除したとしても効果は薄いと思わないか?」


「えーっと私の場合、侵入経路がどうのこうのって言ってたんですけど?」


「なら侵入されそうな隙間を塞ぐ工事ということか。借りたアパートに大金をかけてのそんな対策は無駄金だ。それに、侵入しそうな経路の隙間を塞ぐなんて誰にでも容易に出来る」


「Do it yourself いわゆるDIYするんですかぁ? この不器用な私が?」


「そんな器用な技術はいらん! 隙間塞ぎなど『養生テープ』で事足りるから」


「あっ! 揚羽さん、私知ってます。台風の時、飛散防止に窓ガラスに貼っておくといいんですよね。ビニールのガムテープみたいなんだけど、貼っても簡単に剥がせるんですよね」


 ふうん、マスキングテープの丈夫なやつなのね。


「配管と壁や床の隙間をそれで塞いでおけ。そして☓☓☓☓☓というホウ酸団子だ。これをGが出そうな場所に設置しておくといい。ホウ酸ダンゴは数あれど、このメーカーのヤツがGに一番効力がある。ベランダの排水口にも屋外用を置いておくとより良いだろう」


「それくらいなら、私にも出来ますけど・・・」



 障子戸の向こうから声がかかり、戸が開いた。


 お料理キターー! 


「わあい♡ ありがとうございま〜す」


 店員さんが大皿をテーブルに置く前に私がささっと受け取る。


 うっふっふ! 大好きな唐揚げ、うまそう〜♡ 今日は大久茂のゴチだから、迷わず頼んだ刺し身の舟盛りサイコー。美容を考えて注文しておいたカリカリベーコンフレシュサラダほうれんそうの大盛り。


 店員さんがドリンクを配る。


 はーい、大ジョッキは私でーす。うぇーい! 七星さんはレモンサワーね。えっと、大久茂は・・・はい? ウーロン茶?


 まあいいや。人の飲み物なんてどうでもいい。早く食べよ! 朝もお昼も抜かしたからお腹ぺっこぺこよ!


「えっと大久茂さん、七星さん、今日は行きがかり上の私の為に、ありがとうございました。ついでにゴチしてくれるなんて、私たちにガチ現世の神降臨ですよ。昨夜の不運も悪いことばかりでは無かったような。では一時、対G会議は置いといて、カンパーイ! おつかれー! うぇ~い!!」


 勝手に仕切って食べ始めた。だって、私今最高に飢えてるんだもん。



 ***



 ひと通り食べて飲んで落ち着いた私。


 もしかして、この二人がいなかったら今頃は高額見積もり出されても、黒光りの虫の恐怖に囚われて、10万円でもオッケー、速攻契約サインしてたかも。


 でもさ、いくら対策しようがG出現の可能性はあるんでしょ? なら、私はどうすればいいのよ? やっと手に入れた私だけの楽園を手放したくはないよ。いつ来るか知れない虫に怯えて。



 ────さて、お腹も満足した所で、会議再開。


「質問です! では、私は一人暮らしでは避けられない黒光りとの遭遇にはどう対処すればいいのですか? 大久茂さん」


「そ〜ですよぉ〜! ありぇは・・えっと・・殺虫シュプレーでシューしてもなかなか絶命しましぇんよね? 苦しんで暴れられてどこに行くか予測不能な動きは恐怖でしゅよ。ね〜、揚羽さ〜ん♡」


 わ、七星さんたら、ほんのり目元を赤らめて、私の肩にしなだれかかって。酔っ払っちゃったのね。たった一杯で、大丈夫かしら? かわいいのね。私は大ジョッキで4杯ゴチになったけど、まだイケる。


「フッ・・・対Gにエアゾルスプレーとは、それはど素人のすることだな。隙間に入り込んでしまった時には、奥から出させるために使用も致仕方ないかもしれないが、姿がそこにある時は、洗剤の泡スプレーを使うといい」


 大久茂が眉間をもみながら、横目で七星さんをチラリと見ながら言った。



 ────あ、わかった! 大久茂のヤツ、私のG騒ぎにかこつけて、実は七星さん狙いで私たちを誘ったんだ? ふふん、私の観察眼は誤魔化せないよ?


 横には肩に乗った七星さんのツムジ。寄っかかたままスースー寝てる。私、なるべく動かない方がよさそうね。



「えっと、殺虫剤ではなくて洗剤の泡スプレーですか?」


「スプレー口のレンジが広角度の風呂用泡洗剤を俺的にはおススメする。先ず、敵の行く手を遮ってから本体に連射だ。一連動作にて、0コンマの速さで連射しろ。敵は泡がかかれば窒息してすぐに息絶える。使い捨てポリ手袋を装着し、丸めたトレペで掴んでそのまま水洗サヨナラすれば問題はない。それくらい対処出来るようにならなければ、一人暮らしなど無謀だ」


「へえ、じゃあ使い捨てのポリ手袋と、泡スプレーお風呂洗剤と、ホウ酸ダンゴ、養生テープを用意すればなんとかなるってことですね。勇気もいるけど。ちょっと自信が無いけど私のユートピアのために頑張るしかないですね。余計な出費も抑えられると思えば、対G免疫をつけないとですよね」


「だな。・・・けれどどうしてもって時には、仕方ない、俺を呼んでもいい。乗りかかった舟だし」


 まさか、私のアパートにほんとに呼びつける訳にも行かないけど、同じ職場にいるってよしみでそう言ってくれる気持ちは素直に有り難い。


「そんなご迷惑は流石にかけられませんけど、万が一の頼れるあてとして、その存在がありがたいです。・・・あー・・・私ちょっとお手洗いに。七星さん、ちょっとごめんね」


 あんだけ飲んだらね、そろそろお手洗にも行きたくなるって。七星さんのために動かないようガマンしてたけど、もう限界!!


「ファァ・・・ヤダ、ごめんなさい。私・・・普段飲まないから・・酔いやすくて」


 一人で座り直した七星さんは、薄ぼんやりした眠そうな目ね。帰り、大丈夫かしら? 何なら今晩、うちに来てくれてもいいけどね。


 障子戸を開けて、個室のお座敷からサンダルを履いて出た。



 *



 スッキリした私は、ふと思った。


 んー・・・そういえば大久茂と七星さん、二人きりね。


 まあ、大久茂に七星さんは高嶺の花かもしれないけど、大久茂はいい人っぽいし、案外うまくいったりして?


 戻るタイミングには気を使うわぁ。いい雰囲気だったりするかもだし。ゴチなのに舟盛りも頼んじゃったから少しは大久茂に気を使わないとね・・・


 

 手洗いの鏡の前でメイク直しをして、わざと時間を潰すことにした。


 あ、そういえば大久茂の美肌の秘訣をまだ聞いてないや。後で忘れずに聞こうっと。



 あの二人、今頃どんな会話してるんだろね? フッフッフッ・・・♡




 ***




「───で、どうだったんですか?」


 七星の、懸念を浮かべた片眉がピクリと小さく動いた。目線は大久茂の視線をまっすぐ捉えている。


「午後にその該当の害虫駆除業者を調べたんだが・・・やはり問題のある業者だった。本来なら最初の見積もりで高額契約させられてるはずだ。ならばなぜ、アゲハさんは妥当な料金で済んだのか? どうやら業者は彼女に忖度したのかも。男ってそういうとこあるし。美人には弱い。業者には、彼女には二度とかかわらないよう、弁護士を通して警告しておいた」


「フフッ、美形は得ってことね。ま、揚羽さんに被害が無くてよかったわ。けど・・・大久茂さんッッ! あわよくば揚羽さんの家に行こうだなんて図々しいですよ。男性の大久茂さんが彼女のプライベート空間に入るなんて、我々の任務からは外れた行為です!」


「君こそ、本当は酔ってもいないくせに彼女にしなだれかかって。ハンッ、見てられないね。俺は任務の支障を考えて今回はアルコールは我慢してたけど?」


 大久茂は小さく鼻を鳴らす。


 七星は対抗して顎を上げ、呆れたように大久茂を下目で見る。


「私までノンアルだったら変に思われてしまうでしょ? 私だって1杯しか飲んでないし〜。フンッ」


「・・・(・д・)チッ」


「私ね、揚羽さんは美人なのに気取ったとこも無いし、性格もユニークだし、任務に当たっているこの1ヶ月で好きになってしまったの。少しくらい役得があってもいいでしょ? 大久茂さんも同じく、でしょ?」


「まあね。彼女は離れて見てるだけでも面白い」


 思い出し笑いらしく、ニヤニヤする大久茂。


「とにかく、揚羽さんを陰で見守り、トラブルが起きた時はさり気なく補佐するよう、彼女の実家から密命を受けている以上、恋人になろうなんて思ったらダメです! 我々は報酬も頂いてるわけですから。この飲食も、どうせ経費請求なんでしょ?」


「ハイハイ、了解・・・が、その言葉、七星にもお返ししとくけどね。・・・あー、変に美人の娘を持つと、親御さんも心配で気苦労だね」


「みたいね。ちょっと親バカでもあるけど、娘が揚羽さんなら納得だわ。あの子、ああ見えて優しいし、中身は天真爛漫だしね。抜けてるとこもあって庇護欲が刺激されちゃうの。うふふ♡」

 



 

                 おわり  ( ・∀・)r鹵~<≪巛 

 



やっと終われました _φ(゜Д゜ )


次回からエッセイに戻ります m(_ _)m




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