10万円でOK! 【その3】
電話で事情を話したら、優しいげな声の女性ノーオペレーターさんが、すっごく親身になって寄り添ってくれたの。もしかして、あなたは聖女様?
私、ホッとして涙が滲んじゃった。こんな真夜中に、見知らぬ私の話を共感して聞いてくれるんだもん。
この恐怖は、当事者じゃないとわかんないよ。私を大袈裟だと嗤うヤツがいたら、オマエも肩にGを乗せて歩いてみろっつーのッ!!
取り敢えず今夜、お風呂場のGを退治してもらうのは、電話見積もりでは、夜間料金で1万プラスで、出張料金3千円と駆除1匹で計1万5千円くらいになるそうなの。もしかしたら、状況によって料金は変わるかもだから、実際のお部屋を見て見積もりして、正確な料金を提示され、それから私がどうするか検討することになる。
もちろん、契約を結ぶまでは料金は一切発生しないって。
真夜中過ぎにタダで見積もり見に来てくれるなんてすっごく良心的だよね。きーめた。来てもらお。
取りあえずは風呂場に閉じ込めてある、あの肩乗りGを退治してくれればそれでいいの。
ちょっと痛い出費だけど、私の一人暮らしを守るためには、致し方ないよ。
見積もりに来てくれたら、そのままお願いすることになると思うわ。
***
電話切ってから、わずか30分で来てくれた業者のお兄さんは礼儀正しかった。
名刺とパンフレットを渡され、写真入りの会社の身分証を見せてくれた。
「えっと、お客様が対象物を最後に見た場所はどちらですか?」
「お風呂場に閉じ込めたんです。こちらへお願いします」
業者さんは、お風呂場を見分し、アレの居場所を確認して写真に撮った。
「大丈夫ですか? 怖かったですね。僕に任せていただければすぐに対処出来ます。えっと、お客様の場合ですと、お風呂場の壁と床の角にいるのが確認出来ましたから、対象物を探す必要はありません。税別で総計1万3千円でいいですよ」
本当に? 電話で聞いてた見積もりより安い。
「どうされますか? 99%そのようなことは起こりませんが、万が一、僕が取り逃がした場合は、我が社特製のスペシャル駆虫薬をセットすることになりますが、料金はかわりません。ペットはいませんよね?」
なら、早くなんとかして下さい (。>﹏<。) 怖くてお風呂場使えなくなっちゃう!
速攻、契約書にサインした。
***
ヤバッ、さすがプロフェッショナル ヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。
業者さんがあっという間にやっつけてくれたの。
「こんな夜更けにありがとうございました。まさか、引っ越し間もなくで、こんな怖ろしい目に遭うなんて」
廊下で領収書を貰いながらお礼を述べた私。
「災難でしたね。女性だし、夜だと余計に怖かったですよね。お役に立てて良かったです」
業者さんが、廊下の壁に立てかけてある段ボールの束に目線を向けた。
「・・・あの、お客様、ここに段ボールが置きっぱなしですよね?」
「はい、引っ越しの時の後から荷解きしたのが少し残ってて。ここは資源ゴミは、月に2回しか出す時がないんです。廊下が狭くてすみません」
「いえ、それはいいのですが・・・そうですか・・・ちょっとヤバいな・・・」
「えっ?」
何なの? 困ったように頬を人差し指でポリポリ。
「実はですね、ゴキブリは段ボールが大好きなんですよ。潜んで卵を産み付けます。そこからGの子どもが何十匹もワーッて一斉に広がるんです。ですからこういうの早目に処分したほうがいいですよ」
ゲッ!! もしかしたら、さっきのGがここに卵を・・・?
((((;゜Д゜)))) イヤッ、そんなの魑魅魍魎と同等じゃない。
私の動揺が秒で伝わったらしい。
「えっと、脅かしてすみません。ちょっと拝見させて下さいね。さっきのGがここに卵を産み付けた可能性もありますし─────あ、今は大丈夫そうですよ。良かったですね!」
ほどいた段ボールを元に束ねながら、私に爽やかな笑顔を向ける業者さん。
────ったくもうー、ムダに脅かさないでよ! ビビるでしょ! 心臓がバクバクしちゃったじゃない!
「アドバイスとしてですが、1匹出たら100匹は潜んでいると言われてます。侵入される経路があると再び忍び込んで来る恐れがありますからお気をつけて下さいね。夜中に出る度に僕たちみたいな業者を呼んでいたらお金も勿体ないですよ? こんなこと僕が言うのは仕事が減ってダメですけどね、アハハ・・・」
ちょっと! あんた、アハハじゃないってば。丑三つ刻に、ますます身の毛がよだっちゃうじゃない。
「100匹って? この部屋の侵入経路ってどこなんですかッッ? 害虫駆除のプロなんですよね? 教えて下さい」
「あ、すみません。お客様を怖がらせてしまったようですね。今夜はもう大丈夫ですよ。怖がらせてしまったお詫びに、我が社特製、対Gスペシャルミックスミックス駆虫ダンゴのサンプルを差し上げますので、洗面所に取り敢えず置いておくと今夜は更に安心です」
作業着のポケットから、小さなビニールの小袋を一つ渡された。
対Gスペシャルミックス? いわゆるホウ酸ダンゴってヤツ?
「お客様、今夜はもう遅いですし、もし宜しければ後日改めて、この部屋の害虫侵入経路についてお話させて頂ければお役に立てると思いますけど、どうします? 少し費用はかかりますが、対策さえすれば99.9%今夜のような目にあうことは無くなると思います。もちろん、見積もりは無料です」
「えっと・・・」
多分もっとすごくお金がかかるのに、急には決められないよ。
「これからGの本格的季節に入りますからね、今夜のことが続く可能性を考えたら対策した方が安上がりの上、安心して生活出来ますので、プロとしてはおすすめしたいですね。お客様は今日から7日間の間に契約されれば30%オフの特別価格になります」
────マジ?
「それって、ここと同様の広さのお部屋でいくら位なんですか?」
「えっと、それぞれ造りによるのでなんとも。このアパートは新しいようですし、他よりはかからないと思いますよ。来週の水曜日までに契約なら、3割引き出来ますし」
────見てもらうだけならいいかな? それから決めても。
「見積もりは無料ですよね? なら、明日の夕方6時くらいにお願い出来ますか?」
「もちろんです!! では明日6時に伺います。お客様、夜更けに大変な目に遭われましたね。今夜はひとまず安心してお休み下さい。では、失礼します」
ひとまず、なのね・・・
***
業者さんが外に出て、ぱたんと閉まった玄関扉のカギを即座にかけた。
────あー、疲れたァ・・・・なんて夜だったのかしら?
サービスで貰った対Gスペシャルミックスとか言う駆虫剤を、洗面所の隅っこに置いてから明日のため、と言うか もう今日だけど、ベッドに入った。
ホッとしたけど、目が冴えてしまった。
あれこれ考える。
今回みたいなことが何回も起きたら、その度に1万何千円か、かかってしまう。ならばいっそのこと・・・?
でも、起こるかどうか分からないことに怯えていても・・・けど、即決したら30パーオフだし・・・いやいや、頼れる彼氏を作れば問題無し!・・・でも、彼氏出来るまでにまた出るかもだし、100匹どっかにいるかもだし・・・ううん、各部屋ごと、すぐ手に取れるとこに殺虫剤を置けばいいとか? いや、出ること自体がイヤでしょ!!・・・だからってGのためにもっと大金をはたくなんて・・・
ハッ Σ(゜Д゜) そういや、作業員さん来たのに高校のジャージ姿のままだったな、私。
虫退治のお兄さんに内心で嗤われてたかも。
・・・ま、いいけどね〜 (´Д`)ハァ…
新生活に、心もお金も余裕なんて今は無い。彼氏なんて当分無理だ・・・ならやっぱ・・・
────悶々と悩んでる間に、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
続く☆
実際の悪徳営業はどんなんか知らないけど、俺がもし業者さんだったら、圧で攻めるより、相手の顔色見ながらこんな感じでやんわり行くかな? _φ(゜Д゜ )
どの辺から悪徳になるんだろね? 相手の感情次第?
って、俺は頭キレないから、悪徳業者にも、詐欺師にもなれそうにない。悪徳も才能だ。
なんか予想より長くなったけど、次回で完結だね。多分。
最後どうしよう。これから考える φ(゜∀゜ )




