手紙
近藤は、封筒をひらくと中から一枚の紙をとりだした。
紙には、
おおはし様は見ている。すべてを知っている。あの日山に入ったこともすべて。
と書いてあった。
近藤は、真理に尋ねた。
「この意味は分かるのかい?」
真理は、湯呑をテーブルの上に置くと近藤の目をみてしっかり頷いた。
「わかると思います。」
「あの日、山に入ったこともすべてってことは、君は山に立ち入ってしまったってことかい?」
真理は、また頷く。と静かに話を始めた。
「そのとおりです。
おおはし様の山に立ち入ってはならないことは、知っていましたし守っていました。
でも中学2年のときです。たしか、テスト期間が終わって部活もない日だったと思います。
仲のいい6人で教室に残っていたんです。そのとき、誰だったか忘れましたけど
おおはし様の山に行こうって話になったんです。
どうして行こうってことになったのかとかは思い出せないんですけど、
とにかくあの山に入ってしまって……そして」
と一言話すと真理は、黙り込み。俯いてしまった。
近藤は、真理膝の上においてある手が力強く握られているのが見て取れた。
近藤は、頭をかきながら、
「そこは、話したくないってことかな?」
と聞いた。真理は顔を上げ
「いえ。そのそうではないんですけど……話しにくくて……すみません。」
「いや、かまわないよ。それで今回の依頼は?」
「一緒に地元に帰って、この手紙を送った人物を見つけてほしいんです
ずっと、こんな手紙に悩まされるなんて……嫌だから。」
「いいよ。いつから同行するのか。そして、いくら支払ってくれるのか。
それ次第だけど」
近藤は、そういうと真理と話をつめた。
真理は、試験休みが2週間後なのでそれからお願いしたいとのことだった。
依頼料は、交通費宿泊費、また経費は実費。それに1日ごとに1万5千円ということになった。
依頼完了後の振り込み。
近藤は、内心、少しお金が入ってくることにホッとしていた。