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不老不死条約

作者: はんぺん小僧

 ある日、一人の博士が偉大なる発明品を公表した。それは不老不死の薬。名前の通り、使うと使用者の体を老けさせず、そして何があろうと生命活動を維持し続ける、魔法のような薬だ。そして博士は、同時に「これで人体実験をする」と言った。


 世界中から実験台の要望が来た。科学の発展を盾に、皆不老不死になりたかったのだ。博士は一人の人を優遇する真似はしたくなかった。そこで博士は、実験台になる者にある条約を結ばせた。それは、これからずっと博士の実験台になること。博士にとっては、不老不死の人間は壊れない実験台にぴったりなのだ。勿論人々は反対した。その人の人権を守り、無条件でその薬を使う事を強制させようとした。博士は呆れ果て、早く実験台を見つけようと一つの方法をとった。それは全人類に与えられた番号札を箱に入れ、その中から一つの番号札を博士が引き、その番号の人に実験台になってもらうと言うものだ。簡単にいえばくじ引きのようなもので、完全に運が全てを決めるやり方だ。人々はさらに反抗し、デモを起こすなどもしたが、位置不明の研究所に引きこもっている博士にはさほど影響はなかった。そしてついに博士が番号札を引く時が来た。博士が引いた番号は「1757281」。平凡な青年であった。青年は恐れおののき、薬を飲まされる事に拒否反応を起こした。しかし、しばらくして青年の家に博士の助手が来た。青年は力ずくで追い返そうとしたが、複数人で取り押さえられ無理矢理に飲まされた。青年は咽び泣き、何度も吐き出そうと試みた。その努力もかいなく、青年は博士の研究所の一室に連れてかれ、不老不死の実験台として日々を過ごす事となったのだ。


 青年が不老不死になって数年が経った。青年の姿は奴隷や囚人のようにくたびれ、力なく虚無を見つめていた。そして今日も、部屋の扉が開き、博士が姿を現した。いつも通り、何の説明もなく薬を飲まされる。青年の意識はもうろうとし、いつの間にか気を失ってしまった。


 青年が目を覚ますと、そこには笑顔の博士が立っていた。やけに部屋の空気は明るく、気分も良かった。

「今度は俺に何を飲ませたんだ?」

青年が聞くと、博士は

「今、君に飲ませたのは不老不死の状態を無くす薬だ」

と、笑いながら言った。青年は未だかつてないほど喜んだ。

「今すぐ俺を殺してくれ!」

「もちろん」

博士は拳銃を青年に突き付け、撃った。

「は、はは…やったぞ、ついに死ねるんだ…」



 「はは、ははは…」

青年の様子を見て、博士はこう言った。

「どうやら成功のようだ。今一番願っている事を夢で見せる薬は…」

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