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第13話 鋼の体液

 われわれがわれわれのままで近づくことは及ばず、しかし語るにはふさわしいうつろの世界には、鋼を適度な塩水に混ぜて体中に回らせているという知性体がいる、という。その体液は適度に赤く、大気中の酸素に触れると黒と赤の中間色となって固まる。


 十分な理性と適度な悟性をもって世界を認識できる存在が、酸素に満ちており重力のくびきにしばられた世界に長い間とどまり得るとは思えない、と、超存在を構成する一員は語り、超存在の構成員の多くは同意してその色を変えた。


 さまざまな宇宙の気まぐれによって生まれた、ヒトと仮に名づけた知性体に対して、われわれはその姿を模した監視者を送ろう、と話がまとまり、濃い酸素の海の中でわれわれは鋼の体液を持つ監視者を作った。


 珠州の晩夏、夏の虫が盛りを過ぎた野で、監視者は若い武官を監視し続けた。武官は妖異のひとつである人虎との戦いで傷ついていた。


 自分は、誰かを守るかたちでの戦いには慣れていなかったのだ、と、武官は熱くて赤い体液を背中から多分に流しながら語った。


 ヒトにあまりにも似せて作られた監視官のふたつの視覚器官からは、熱い透明な液体が流れ、申し訳ない、と、監視者は言った。


 監視者は武官の傷口に触れてその体液をなめ、この味と香りが、自分には欠けていた感覚、鋼の属性として感じられる感覚だとおぼろに知った。


 武官は浄化を望まず、監視者も同じ考えだったので、監視者はみずからの創造主に願い、その地に無菌の安息所を設けた。武官は数日後、動ける程度には無事に回復した。


 街道より離れた、その安息所の跡を訪ねるヒトは、いつからかわずかの赤い体液を小皿に移して捧げることになっており、その小皿の山は、安息所の電波受信塔よりも高くなっていた。


隠れ家や月と菊とに田三反 芭蕉


だいぶ日が長くなりました。

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