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その後の三人


 二章の直後の三人の話しです。


 部屋に一人ツラナは呆然と『フゥ』の血溜まりの中で手に宝石と『フゥ』の袋を持って座り込んでいた。


 回復魔法で歩けるくらいまで回復したエルフ達は本格的な治療を受ける為に帰ってしまっていた。



 ツラナは突然の事に頭が混乱しフゥが消えてしまった現状を理解が出来ずにいた。

 

 『フゥ君に回復魔法を使わないと!

 フゥ君どこ?

 こんなに血が出てたのにどこに行ったの!

 何だったのあの最後に見せた笑顔は?

 ボクはどうしたら良いの?

 フゥ君!

 フゥ!

 絶対戻って来てくれるよね?

 それまでこの袋を預かっておいて欲しいってことだよね?

 ボクが絶対守ってみせるよ!

 フゥとの大切な思い出と一緒に!』



 ツラナは心の中でそう誓うと立ち上がり自室の自分の荷物にフゥの袋を隠した。







 ホチネが部屋に戻って来た時には既に部屋には誰もいなかった。


 「誰かいないの?」


 ホチネは部屋の入り口で持っていた槍を構えて小さく声を掛ける。


 

 部屋には大きな血溜まりと壊れた魔法道具、それと入り口近くに真っ赤な血に濡れた銀色の粉を纏ったナイフ。

 ホチネはゆっくり部屋に足を踏み入れる。



 「ホチネ!」


 奥の部屋からツラナが顔を見せる。

 ホチネは構えていた槍を下ろしツラナに近付いて行った。


 「あれから何があったの?

 エルフ達は?ゴキムロンは?

 フゥもいないし!

 フゥはエルフ達を追い掛けて行ったの?」


 その言葉にツラナはしたを向くと小さな声で、

 「フゥはゴキムロンに後ろからナイフで刺されて…………ボクにこれを渡して消えてしまったのです」


 ツラナは手に握られている宝石を見せた。


 

 「この宝石はフゥがあの反則みたいな袋に入れていた物よね?」


 「そうです。

 背中を刺されて口から血を吐いて最後の力を振り絞るようにボクにこれを渡して

 『大切にしろよ』って」


 言葉を詰まらせツラナはそこで始めて自分の目から涙が流れている事に気付いた。



 

 そんなツラナを見てホチネは何を言われているのか理解出来ずにいた。


 「フゥが刺された?

 ゴキムロンに?」


 ホチネはツラナから入り口近くに落ちているナイフに目を向けて、そして部屋の真ん中の大きな血溜まりを見る。


 「フゥが?

 キエタ?

 エ?ドウイウコト?」


 ホチネは口が思うように回らなくなってしまう。


 そしてギュッと槍を握ると隣のフゥの部屋だったボロボロになってしまった場所に走る。


 「フゥ!どこに隠れたの!」


 そこは屋根も壁も吹き飛び床にも穴が空いていて瓦礫しか無くなっていた。


 次にホチネは反対側のゴキムロンが使っていた部屋を調べ、ケレリスの部屋、ツラナの部屋、ホチネが使っていた部屋と見て回り肩を落としてツラナの前に立った。


 「フゥは?

 刺されて血を流して、回復魔法は使ったの?」


 ツラナは首を横に振り、

 「何も出来ませんでした。

 ボクの手に宝石を置くとフッと消えてしまったのです」


 

 ホチネはフゥが消えた血溜まりを見る。

 そこにはラミネから貰った靴とシイバから貰った短槍が落ちていた。


 それはフゥの血で真っ赤になっていた。


 ホチネはそれを拾うと胸に抱きしめた。


 ホチネの目にも涙が流れていた。






 

 ケレリスが冒険者ギルドで説明を終えてジュンケンを連れて戻って来た時のは既に宿の騒ぎも収まった頃だった。


 

 宿の被害は部屋が一つ完全に消えて下の部屋には天井に穴を空けたが誰も泊まっていなかった為に人の被害は無かった。



 ケレリスはジュンケンを連れ自分達の部屋に入るとそこには誰もいなくなっていて部屋の真ん中に大きな血溜まりがあるだけになっていた。

 

 

 「誰もいないな」


 「こんな部屋にはいられないだろう。

 どこかに移ったのじゃないか?

 ケレリス、受付で聞いてみよう」


 ジュンケンがそう言って部屋を出ようとした時、ケレリスは入り口近くに落ちている血塗れで銀色の粉が付いたナイフに目を止める。


 「このナイフ……エルフの魔法阻害の粉が付けられている?」


 ケレリスは心に不安と悪い予感を感じて一階にある受付に急ぎ階段を駆け下りた。




 「あの、私の連れはどこにいる!」


 受付に走り寄るとケレリスは待っている他の客をかき分けてそう聞いた。


 「あのお客様、他のお客様のご迷惑になるので並んでお待ち頂けますか?」


 「すまない!だが頼む教えてくれ!私の仲間はどこにいる!」


 困った顔の受付の後ろから宿の主人が出て来て、

 「食堂にいるよ!」


 「ありがとう!」


 ケレリスはお礼を言うと急いで食堂に走る。




 「みんな無事か!」


 ケレリスは食堂の扉を開けて中を見回す。

 奥のテーブルにツラナとホチネの姿が見えてホッとした。


 「良かった。二人は無事だったか!

 それでフゥ君とゴキムロンは?」


 

 近付いたケレリスが見たのは暗い顔の二人だった。


 

 「フゥが………」


 ツラナの絞り出すような声に手にケレリスは持っていたナイフを落とした。



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