この世界の成人年齢
宿に帰り着いて一休みしているとホチネの愚痴が聞こえて来た。
「冒険者ランクに年齢制限があるなんておかしいよ!
竜人族は三歳で成人なんだから!
大人として扱って欲しい!」
『確かにホチネ、見た目は大人に見える。
竜人族の成長の早さを基準にすればランクの年齢制限は当てはまらない』
そこにホチネの愚痴を聞いていたケレリスが口を挟む。
「うーん、種族によって成長の仕方は違うからね。
ただギルドの成人は十五歳と決められている。
竜人族の成人は三歳なのだろう。
それならエルフは五十歳で成人だ。
だからと言ってエルフの成長がそんなに遅いのか?と言うとまた違う。
エルフの長老達が過去の決まりを変えさせない頭の固い連中だからだ。
成人の年齢をいつまでも五十歳なんて馬鹿げた決まりをいつまで守っているのだか!」
『エルフの成人は五十歳とはね。
でも最後はケレリスの長老達批判になってたよね?』
「ねえ?ケレリスは何歳なの?」
俺は別にケレリスの歳を聞きたかった訳では無かったが話しの流れで何となく口にしてしまった。
俺のその質問にツラナはギョッとした顔になりケレリスは眉間ピクリと動かして、
「女性に、年齢を、聞くのは、失礼だよ、フゥ君」
ケレリスはゆっくりと、丁寧に、自分を落ち着かせるような口調で話したが寒気のするような威圧感を放っていた。
「ハハハ、そうだね。失礼しました」
俺は軽く誤魔化し笑いを浮かべながら謝る。
「いやいや、別に、構わない、けどね!」
ケレリスはそう言うと自室へと向かって行った。
ケレリスの部屋からは一度「ドン」と何かを殴るような音が聞こえた。
「フゥ君、教授に年齢を聞くのはダメですよ」
ツラナは小声でビクビクしながら俺に言って来る。
「分かったよ。そんな処にケレリスの地雷があるなんて知らなかったから」
「地雷?ですか?」
「ああ、爆発するポイントの事ね」
「なるほど」
その時、ケレリスの部屋の扉が開きケレリスが笑顔で戻って来た。
「そうだった、フゥ君。エルフの森から連絡が在ってね。
コアリス長老の到着は十日後になるそうだよ。
それまではエルフと問題起こさないでね。
私の責任になるから」
「ケレリスの責任?」
「そう、私に『フゥ君を見張っているように!』だそうだ」
「でも向こうから何かして来たら?」
「まあ、逃げるか?証拠を魔法石で取っておくか?かな?
そんな事に巻き込まれないのが一番だけどね」
「そうだね」
そんなやり取りをが終わりみんなで食事に出掛けた。
今日は宿の外の高級な店の予約を取っていたからだ。
高級店の料理は流石に美味しくゴキムロンの食欲もいつもの更に2割増しになっていた。
五人の会計とは思えないような金額をギルドのカノリスに魔法石で送り帰ったが直ぐに返信の念話があり、
『食費にこんな金額を使わないでください!』
一方的に叫ばれて通話が切れた。
「カノリスから食費が掛かり過ぎだって」
俺はみんなにカノリスからの念話の内容を伝えた。
「エー!またあの店、予約しようと思ってたのに!」
ホチネはショックを受けてそう叫んだ。
そんなこんなで俺とホチネとツラナの三人は五日間毎日町の外で魔物狩りをして過ごしている。
ゴキムロンは相変わらず昼間は町のあちこちを食べ歩して過ごしケレリスはそれに護衛と言う名の観察をしに着いて回っていた。
カノリスからの「食費の使い過ぎ!」の連絡が入って来ていたが俺はそれに、
「滞在費はエルフが払う約束でしょ?」
そう返してやる。
俺は滞在費も食費も掛からず魔物狩りでお金を貯めているこの生活がなかなかに快適になって来ていた。
俺は魔法の靴の飛行にも慣れて自在に飛び回れるようになり町からだいぶ離れた所まで魔物を倒しに行くようになっていた。
ツラナのギルドランクもDランクにアップし俺達と同じCランクにも後数日、コアリスが来るまでに頑張ればなれそうかと思っていたある日の狩りの帰り道。
エルフの待ち伏せに合う事になる。
「私達は魔法神様の眷族を名乗るフゥの実力を確かめに来た先遣隊である!
長老コアリスの到着の前にその名にふさわしい存在か我等が見極める!
私と勝負だ!」
三人のエルフの内の一人が前に出て来てそう宣言した。
「いやいや。ちょっと待って!
そちらの長老のコアリスさんからエルフと揉め事を起こすなって言われてるけど?
聞いて無いの?」
三人のエルフは顔を見合わせてお互いに首を横に振る。
「そんな話し知らんな!」
「いやいや、魔法石の念話で確認した方が良く無い?
後で問題になっても困るから」
俺が三人のエルフとそんなやり取りをしている後ろでツラナがケレリスに連絡を取って町の外のこの場所へと呼び出していた。
「教授から、
『到着まで二十分くらい掛かる。
それまで何とか時間を稼いでくれ!』
だそうです」
ツラナの耳打ちに俺は頷いて三人のエルフ達の様子を伺う。
三人は誰に連絡するのか揉めているようだ。
『本当に?コアリスに言われて来たのか?
自分達で勝手に喧嘩売って来てるだけじゃ無いだろうな?
腰に剣も差してるし!』
俺達はケレリスが来るまでの時間をどう稼ごうかと考えていた。




