魔法道具の靴とホチネのイタズラ
俺達は西の門から町の外に出ると町の北へと向かって歩いた。
「もう昼過ぎだね。今日はツラナも本格的な魔物狩りは初めてだし暗くなる前に帰ろね。
ハー。それにしてもあの宿門から遠いよね?」
「本当ですよ。ボク町の外に出るまでに疲れましたよ」
「大丈夫か?少し休んで昼ご飯食べる?
二人の分も用意してきてあるから」
「やったね!朝ご飯軽くしか食べなかったからお腹空いて来てたんだよね!」
俺は袋から敷物を出すとホチネに渡した。
ホチネは少し開けた場所でそれを広げ俺に早く食べ物を出すように催促をする。
俺が袋からパンにドエールの肉を焼いた物と葉野菜を挟んだサンドイッチを出すとホチネは空かさず一口囓った。
「美味しい!これドエールだよね!
ドエールの肉まだ残ってたの?」
「うん。ドエールはケレリスがいない時じゃ無いと出しにくいからね。
袋には入っているけどなかなか食べる機会が無いんだよ」
「エルフでもケレリスなら平気じゃ無いかな?
どう思うツラナ?」
「どうでしょう?教授も一応はエルフですからね。
食文化の違いは変わらないかもしれませんよ?」
「まあいいや、ケレリスがいる時出すとゴキムロンもいる可能性も高いからね。
ゴキムロンにドエールの肉なんて出したら一回で食べ尽くされそうだもん!」
俺達は顔を見合わせて頷き笑顔になる。
休憩を終えて敷物をしまうと魔物の居そうな方へと歩き出す。
「ツラナ、辛くなったら言ってね。
今日は無理したく無いから」
「ハイ、解りました。
それとお二人ともあんなに走ったのに全然疲れて無いのですか?」
「うん。疲れて無いよね?フゥ?」
「そうだね。
……ああ!そうだ!靴のおかげだ。
俺達の靴は竜人族特製の魔法道具の靴なんだよ。
この靴を履いているといくら走っても疲れづらいんだった」
「そうだよ!ツラナだけ靴が違うからだ!」
「そんな靴があったのですか!
興味深いです。
その靴はどうしたら手に入りますか?」
ホチネは少し考えて、
「あたしの古い靴で良かったら帰ったらあげるよ。」
「本当ですか!ありがとうございます。
でもそんな高価な物貰っても良いんですか?」
「良いよ。新しいのを大切な人に貰ったから」
ホチネの靴は俺とお揃いだった。
『ラミネはホチネにも同じ靴を上げたんた。
あれ?そう言えばこの靴魔力を込めると浮くって言ってたよね?
まだ試した事無かった!
ちょっと試してみようかな』
俺は靴に少しづつ魔力を流してみる。
体が上に持ち上がり地面から少し浮いた。
『これ!バランス取るの難しい!』
靴は数ミリ浮いているだけなのだがこれ以上魔力を込めて高く浮くと転びそうだ。
「トン!」
ホチネが必死にバランスを取っている俺の背中を突いた。
「キゥァォー!」
俺は言葉にならない叫び声を上げてしまい魔力の調整が狂い尻餅を着いて転んだ。
「ホチネ!」
腹を抱えて笑うホチネに怒りで叫んでしまった。
「ハヒヒ、ごめん、ハハフフフ、だっ!突いたら面白そうだったんだもん。フフフ。」
「面白そうだったんだもんじゃ無いから!」
「だから、フフ、ごめんフッて」
「笑いながらなんて謝った内に入らないから!」
「フフッ、フッ、ごめん。ゴホゴホ、ハハハ。ちょっと無理、笑い過ぎてお腹痛くなって来た。ハハハ」
俺とツラナはホチネの笑いが収まるのをしばらく待つ事になった。
少し落ち着いて来たホチネに、
「ただ転んだだけなのにそんなに笑う?」
「いや、転んだ、フフ、事じゃ無くてヘヘ、フゥの悲鳴がハハ、可笑しくてヘヘ、ダメだ、ハハハ、また思い出したらハハハ、お腹がフフ、痛くフッ、なってきたわハハハ!」
ホチネはまたお腹を押さえて笑い出す。
「もういいよ!
早く魔物を狩ろう!
日が暮れる!」
俺は怒りと呆れでホチネを怒鳴る。
「今日は止めない?ヒヒヒ、お腹痛くてヘヘ、狩り、出来そうに無い。クククッ。」
「もういい。分かった。ツラナ帰ろう。」
俺はツラナの手を引くとホチネを置いて町に向かった。
ホチネは笑いを抑えながら付いて来る。
『なんだったんだ今日は町の外でサンドイッチを食べて帰るだけじゃ無いか!』
心の中でホチネへの怒りが収まらないまま宿への道を歩いて帰った。
この時、怒りと油断で町の門の近くの木の陰からそんな俺達の様子を見ているエルフに気付く事は無かった。
宿に着いて自室のベッドに横になり俺はふて寝をして心の中で、
『絶対!練習してこの靴を使い熟してやる!』
そのまま寝てしまいその日は終わった。
次の日の朝。
俺が自室から出ると少し元気の無いホチネとホチネから魔法道具の靴を貰って嬉しそうなツラナが魔物狩りの支度をして待っていた。
「おはよう。フゥ、昨日はごめんね?」
ションボリとしたホチネが挨拶をして来た。




