大量の料理
ケレリスは急いで来たのか息を切らしている。
「そうか!大食いはそう言う事か!
他には他には何がある!」
「ケレリス、いいから席に着けよ。
回りが見てるだろ」
俺がそう言うとケレリスは自分に集まる視線を感じてゴキムロンの隣に座った。
ゴキムロンは少し迷惑そうな顔をしたが料理を食べる手を緩める事は無かった。
「追加したいのよ」
ゴキムロンの追加注文と一緒にケレリスも料理を注文する。
その間もずっとケレリスはゴキムロンを観察するように見詰め続けていた。
料理が届き、ケレリスも食べ始めるがゴキムロンから目を離す事は無い。
食べ物に集中しているゴキムロンもケレリスのジッと見ている視線と回りの席からのチラチラと見られる視線に段々イライラし始めた。
「もういいよ!
後は部屋で食べるよ!
メッセージで送るからその料理を部屋に持って来て欲しいのよ!」
ゴキムロンは俺にそう言うと食堂から凄い速さで出て行ってしまった。
少ししてゴキムロンから俺の魔法石にメッセージが届き、料理がずらっと書かれている。
『こんなに?
夜食もあるのか?』
俺は給仕係を呼ぶと大量の料理を持ち帰りで注文した。
給仕係は去り際、さっきのゴキムロンの態度に食堂の落ち度があったのか心配して、
「お客様。先程の方に我々が何か不手際をしてしまいましたか?」
「いえいえ、こいつが食べるところをジッと見てたのでイライラしたそれだけですよ」
俺はケレリスを指差して答えた。
ケレリスは、
「人を指差すな!」
そう言って自分の料理を食べ終えるとゴキムロンを追いかけるように部屋へと帰って行った。
それを見ていた給仕係も注文を伝えに行こうと頭を下げてキッチンへと向かおうとする。
「ちょっと待って!あたしも持ち帰りで注文したい!」
ホチネは自分の夜食用の料理を伝えそれを聞いて給仕係はまた頭を下げると今度こそキッチンへと向かった。
「エルフの支払いだからいいけど。
俺達コアリスが来るまでこのままの生活を続けたら冒険者としてマズい事になる気がする」
「確かに魔物が来ても対応出来なくなりそう」
ホチネも同じように思ったようだ。
「狩りに行きましょう!」
ツラナが突然、そんな事を言い出した。
「でもツラナ、冒険者ギルドの登録して無いよね?」
「ボクも冒険者に登録したくなりました。
漁業の町で二人が依頼を受けて出掛けていた時、ボクだけ何もする事が無かったのでとても暇だったんです!」
「そうだったんだ。ケレリスとゴキムロンはその時何してたの?」
「教授は一人で何か秘密で調査に毎日出掛けていました。
ゴキムロンさんは一人で食べ物屋巡りをしていたようで一度付いて行った時はボクのお金が全部無くなりました」
「奢らされたんだ?」
「そうです。ボクを残して支払いもせずに店からいつの間にかいなくなっていて………。
だからボクも冒険者になれば一人で暇にもならずお小遣いも稼げる。
一石二鳥ですよ!」
『一石二鳥はこの世界でも使えるのか』
明日、ホチネがツラナの冒険者申請に付き合う事にした。
俺も行きたかったがエルフとのトラブルを避ける為には宿で大人しくしていた方がいいと言われてしまう。
「町の外に狩りに行く時は一緒に行くから。
朝一で登録が終われば直ぐに合流して虫取りに行くよ!」
「虫取り?
アー!そうか!この町の周りは虫の魔物ばっかりなんだ!」
「そうだよ。帰ったら部屋のキッチンで美味しい虫料理を作ってあげるからね」
ホチネは俺に悪い笑顔を見せた。
明日の予定を話していると大量の持ち帰り用の料理が運ばれて来た。
「これと、これ、それと……これかな?」
ホチネは自分が頼んだ料理を持つと席を立った。
「ちょっと待って!
俺とツラナだけでこの量は運べ無いよ。
ホチネももっと持って行ってよ!」
ホチネは不思議そうな顔をして、
「フゥの袋に入れて行けばいいじゃない。
袋に入れちゃえば重くもないし嵩張りもしないでしょ」
「それはそうだけと人前であんまりこの袋を使うところ見せたくないんだよ!」
「大丈夫、あたし達は既に変な集団だと思われてるから」
ホチネの少し大きなその言葉に周りのテーブルの客は俺達から目を反らせた。
俺はその隙に袋へと料理を詰めると急いで食堂を後にする。
部屋に到着するとゴキムロンをジッと観察するケレリスとそれを無視しているゴキムロンが共用部分の部屋で待っていた。
「待ってたのよ!」
ゴキムロンは俺の手を引いて自室へと向かう。
「ケレリスには困ったのよ。
神の手様を見せるのはフゥだけにしておけば良かったよ!」
俺は袋の料理をゴキムロンの部屋のテーブルに置こうとしたがゴキムロンから、
「今は出さなくて良いよ。
フゥの袋に入れておけば温かいまま食べたい時に食べられるのよ。
メッセージを送るからその時に持って来てくれれば良いのよ」
「…………イヤだ」
俺は袋から大量の料理をテーブルとベッドの上に出すと部屋を出た。




