ラミネの過去
初めて魔法を使って俺の体は疲れていた。
その日は昼から寝続けて目が覚めたのは次の日の朝になっていた。
「おはよう!起きてる?」
ベッドで横になって昨日のことを思い返しているとラミネが朝食を持って訪ねて来た。
俺は体を起こして、
「ラミネ?おはよう」
そう笑顔で答えた。
「シイバに魔法を教えて貰ったんだって?」
「あぁ…うん」
なんとなく気まずそうな表情で返事をすると、
「わたしのこと聞いたの?
別に直接魔法のことで落ち込んだ訳じゃないのよ?
……フゥになら話してもいいかな?」
ラミネは少し昔を思い出すような表情で話し始めた。
「えぇとね、今からだいたい四年くらい前になるかな?
わたしは聖域外で冒険者をしていたの。
その時、一緒のパーティーに新しく紹介されて入ってきたエルフの男の子がいたのね。
その子はエルフなのに魔法があまり得意じゃなかったのよ。
だからわたしに魔法のコツを教えてほしいって言ってきたの。
その頃のわたしは魔法と槍で一流の冒険者と認められていてね、他の種族の冒険者にも信頼されていたわ。
その子は魔力量は多い方だったけど魔力強化が得意ではないようだったの。
旅の途中でわたしは彼に魔力強化の仕方を教えてだんだん魔法が強力になっていたわ。
でも…防御魔法しか練習させてなくてね………。
その日は護衛依頼の途中だったのだけれども。
しばらく魔物や盗賊の襲撃も無い日々が続いて明日には目的の街に到着の予定だった。
油断していたところに盗賊が現れてわたし達は一瞬反応に遅れた。
でも彼はその盗賊にいつものように魔法を放ったの。
彼は強力な風の魔法使いになっていたわ。
毎日の魔力強化で強化された彼の攻撃魔法はパーティーメンバーが思うより強力でわたし達パーティーの前衛を巻き込んでしまったの。
結果的にその依頼は達成されたのだけれども、前衛の二人のメンバーはしばらく仕事が出来なくなってしまってね。
そのパーティーは解散することになったのよ。
彼は責任を感じたのかな?
誰にも何も言わずにわたし達の前からいなくなってしまったわ。
わたしはしばらく彼のことを探したけど他の国に行ってしまったみたいでね。
結局見つけられなかったの。
そしてわたしも冒険者を続けていく気持ちがなくなっちゃってね……聖域に帰って来ちゃった!ハハハハハッ」
ラミネは恥ずかしそうに小さく笑った。
「だから今度、魔法を教えるときはキチンとした安全な場所と時間に余裕を持って制御出来る範囲の魔法を教えようと思ったわ。
今ならそれが出来るでしょ?
フゥにはこれから、わたしも魔法を教えてあげられるよ!」
「うん。お願い!
俺は他の属性の魔法も使ってみたいんだ!」
「そうだね。わたしがどんどん教えちゃうよ!
シイバには水の魔法しか教えられないからね」
ハハハハハッと大声で笑っているとラミネの後ろに顔を少し引きつらせたシイバが現れた。
「お前だって水魔法しか使えないだろ!」
「シイバ?ハハッ冗談だよ。
ね?フゥ。冗談だよね~」
「そうだよ。冗談だよ。ハハハッ」
俺は咄嗟にラミネに合わせて引きつった笑顔を見せた。
シイバはムッとした表情で、
「水魔法しか使えないけど他の魔法も教えられないことはないぞ!
ただ水龍神様に基礎しか教えるなって言われてただけだ!」
「解ってるよ。だから冗談だって!
それより何でシイバがここにいるの?
今日のフゥの世話係はわたしだよ?」
ラミネは話しを変えようとした。
シイバは睨むようにこっちを見ると、
「水龍神様の所に昨日黒猫が来たって聞いたからフゥのことを相談しに行たんだ!
それならフゥとラミネも呼んで来いって言われて呼びに来たの!」
「そうなの?それなら早く水龍神様の所に行かないと。
ほら!フゥ!早く行くよ!
シイバも早く!」
ラミネは俺を抱き抱えると水龍神の部屋に向かって走り出した。
「オイ待て!走るな!」
シイバも付いてくる。
ラミネに抱えられた俺は、
『アイツやっと帰って来たのか?一年以上もほっときやがって!
今度こそ詳しい話しを聞かせて貰うぞ!』
この時の俺はすでに黒猫がまたいなくなっている事も知らずにいた。




