青から赤への月代わり
町に戻った俺とホチネは一日ゆっくりして過ごした。
月代わりを二日後に控え町は衣替えの準備に入っている。
この世界で月が代わると言う事は季節が代わると言う事で、季節が代わると気候も急に代わるらしく最初の数日間は体調を崩す人が増えるらしい。
ホチネは、
「回復魔法で一儲け出来るね」
六日間の護衛の報酬とドエールの肉を売ったお金をホチネや他の冒険者達と分け、エルフ領との国境の町までの旅の資金はなんとかなりそうだ。
そこまで行けばゴキムロンの護衛の報酬が入る。
俺達はこの町に後五日滞在する事に決めてそれまではそれぞれ自由行動にした。
ゴキムロンも逃げ足が早いのも確認出来たので何かあった時は宿か冒険者ギルドに逃げてそこに連絡を取って集まると決める。
ホチネとツラナは次の月の為の涼しい服を買いに出掛けた。
ケレリスは気になる事があると、この数日は毎日どこかに出掛けているらしい。
ゴキムロンはいつもの食べ歩きをするそうだ。
食い逃げで捕まるのだけは止めて欲しい。
俺は次の町までの食料と消耗品などを買い足しそれを終えて宿でごろごろしていた。
『久々に一人でゆっくり出来るな!』
何もしない二日間を宿で過ごし、遂に月代わりの日を迎えた。
その日は朝早く目が覚める。
『暑い!何?こんなに月代わりで急に暑いの!
これは体調を崩す人が出るのも分かるわ!』
俺も急激な温度変化にびっくりしているように初めての聖域の外の暑い季節を体験するホチネも朝から自分に回復魔法を使ったらしい。
いつも元気なホチネが、
「今日は宿で一日休むわ」
珍しい現象にケレリスも心配する。
『ケレリスがホチネの心配をするなんて!』
俺は心の中で静かに思う。
ケレリスやツラナは月代わりを生まれた時から何度も経験している為、それなりの準備や心構えをしていて平気なようだ。
ゴキムロンは新月のお祝いで食べ物屋も特別メニューを出すらしく朝からいつもの食べ歩きに出掛ける。
そんな新月も三日経ち。
出発の日を迎える。
ケレリスは俺とホチネを心配して出発を何日か延期しようとしていたらしいが、ホチネの元気が一日で回復しているのを見て予定通りに出発を決めた。
ゴキムロンはこの日も朝早くどこかに出掛けると両手に沢山の料理を持って帰って来て俺の袋に入れてと頼んでくる。
俺はそれを袋にしまうとみんなの準備を確認する。
みんなの準備が完了して馬車に乗り込み町を出た。
この日はまだ月代わり間もない事もあり旅に出る人達は少ないようだ。
ツラナが操縦する馬車は勢い良く街道を進んで行く。
ツラナも旅の初めに比べて馬車の扱いも上手くなり馬車の揺れも少なく感じる。
俺はケレリスとゴキムロンとで荷台に座りエルフ領までは何日くらい掛かるのかケレリスに聞いた。
「そうだな?普通なら十四、五日掛かるのだが私とツラナの馬車の速さなら十日前後で着けると予測されるかな」
「十日か。一応食料は二十日分用意してあるからね」
「ああ、助かる。
そうだ!フゥ君は聖域を出て初めての月代わりだったよね。
月代わりの瞬間は見られたかい?」
「月代わりの瞬間?」
「何?初めてなのに月代わりの瞬間を見なかったのか?
それは残念だな。
月代わりとは月の色がその名の通り代わる事だ。
夜中の丁度日が代わる時に月の色が一瞬で代わる。
初めて見た時は私も感動したぞ」
「月の色が一瞬で代わるの?
それはどこでも見られるの?
おかしくない?」
「何が?おかしい事ある?
妖精神様の力が凄いと世界中に知らせる日だろ?」
「妖精神が凄いのは分かったけどこの世界は球体だよね?」
「当たり前だろ。おかしな事を言うな?」
「それならここが昼なら反対側は夜だよね?
夜に月代わりがあればその瞬間を見られるけど昼の所は見られなくない?」
「昼と夜が反対?
訳が分からないがここが昼なら世界中昼だし、ここが夜なら世界中夜だろ。
それじゃないと日にちや時間が場所によって違って来るんじゃないか?
そんな事起きたら大変だぞ!ハハハ。」
「そうだね。ハハハ。」
『俺は相槌を打って笑ったが世界中の仕組みが全然違う!
この世界は世界中で同じ時間が流れてるのか?
どんな原理でそんな事になってるんだ!』
俺はケレリスにいろいろ聞くが全く理解できない。
理解できないと言うか結局は神の凄い力でそうなっているとしか分からなかった。
『神が実在して会える世界はやっぱり全然違うモノなのかな?
今度、聖域に行った時にでも水龍神に聞くか。
あれ?俺って聖域に帰れる時が来るのかな?
よし!次の月代わりの瞬間は絶対に見てやるぞ!』
俺はそう心に誓うのだった。
後でホチネにも聞いたところホチネも初めての月代わりの瞬間を見逃したそうだ。
ホチネも、
「次の月代わりの瞬間は絶対に見る!」
そう誓っていた。




