宿探し
俺達が国境の町に到着したのは農業の町を逃げ出してから十二日目の事だった。
「予定より三日も早く着けたね!
よし!丁度昼だし食べ物屋に直行だ!」
ホチネは相変わらず食べ物第一だ。
俺達はホチネの勘に導かれて一軒の食堂に入った。
その店は米と魚を売りにした定食屋だった。
「米と魚は久しぶりだ!」
俺は思わず叫んでしまった。
「確かにこの町でこの形態の店は珍しいですね。
研究所の町には何軒かありますけどね」
国境の町での最初の食事を終えて宿探しを始めるがなかなか見付からない。
「どこの宿も満室なんておかしくない?」
「そうだね。これは何かあるな!」
ホチネが一人頷きながら次の宿へと歩き出す。
「これさ冒険者ギルドに一度行って宿を紹介してもらった方がよくない?
紹介料はとられるけど確実だし」
「えー!ギルドに紹介してもらうとあたし達には高い宿しか紹介されないからなぁ」
「そうなんですか?」
ツラナは不思議そうにホチネに尋ねる。
「そうだよ。ギルドカードがあるのはあたしとフゥだけでしょ。
二人ともランクCなのね。
ランクCだとお金を稼げるのが当たり前ランクCで安宿を紹介しろなんて言ったら怪我や病気で休職以外は働けと言われるの」
「そうなんですね。
でも高い宿でも良くないですか?」
「そうだよ!俺達そんなにお金に困ってないでしょ?
この前のゴブリンの時のお金もあるし!
さっきから何で安宿ばっかり探すの?」
「あんた達何言ってるの!
あたし達には追手がいるかもしれないんだよ!
追手はあたし達がランクCの冒険者だって知ってるだろうし。
それにケレリスはエルフなんだよ!
エルフが安宿に泊まるなんてとても目立つ事なの!」
「だからさっきからフード被ってたんだ」
俺はフードを深く被っているケレリスを見た。
「何で私がこんな格好をしていると思っていたんだ!」
「寒いのかなぁと思って」
「寒い?今日は暑いわ!
さっきからずっと暑いの我慢してるわ!」
「そうだよね。ヘヘ」
どうやらケレリスを怒らせたらしい。
「だが私も一度冒険者ギルドに行くのは良いと思う。
このまま歩いても宿が見付かりそうも無い」
ケレリスの言葉にホチネも納得して俺達は冒険者ギルドに向かった。
俺達が入った国境の町の冒険者ギルドには受付に職員がいるだけで冒険者の姿はなかった。
「今日は人がいないんですね。
この時間帯だからですか?」
俺は受付に行くと、世間話しのつもりで、聞いてみた。
「いえ、ここはいつもこんな感じですよ。
あなたはどこから来たのですか?」
やる気のなさそうな受付は面倒くさそうに聞いて来た。
「俺達は研究所の町から。」
「ああ、あの町ですか。
それで今日は何をしに来たのですか?」
「ええと…宿を紹介して欲しくて」
「そうですか。
それではギルドカードの提示をお願いします」
「はい」
俺はカードを袋から出して受付に渡す。
「お預かりします。
ええとフゥさんランクはC。
研究所の町から農業の町経由でこの町に来たと。
そうですね……ランクCの方ですとこの宿がおすすめです」
「ああ、あの俺達これから中立国へ長旅に出る予定でなるべくお金を節約したいんですね。
なのでもう少し安い宿はないですか?」
ギルドに向かう途中でホチネ達と相談したように聞いてみる。
「済ません。最近は安い宿の方は常に予約でいっぱいです。
ギルドで紹介出来る宿はありません」
「安い宿が予約でいっぱい?」
「そうです」
「どうしてですか?何かお祭りやイベントのような物でもあるんですか?」
「いいえ。去年、農業の町の法律が変わって中立国から農業の町に仕事をしに来る人が大量に増えているのです。
国も大量に流入して来た人が住み着いてトラブルが増えて来ていて規制しようとして一年間働くと帰らせる事にしていて、みんなこの国境の町で旅の疲れを取ろうして宿に泊まるので安い宿がいっぱいになっているのです」
「そうなんですね。
ホチネ、どうする?
安い宿は無いからしょうがないよね」
俺達は安宿を諦めてギルドの紹介している宿に泊まる事にした。
ギルドに紹介された宿に到着し部屋のベッドで久しぶりに横になると眠気が襲って来て飛び起きる。
『危ない危ない!いつもこのタイミングで寝てしまって夜中お腹が空いて起きてしまうんだった!』
起き上がり荷物の整理をしようと袋の中身のリストを魔法石に見せてもらう。
『研究所の町で買った食料がなくなって魔物の素材と魔石が増えたのか。
明日はいらない素材と魔石を売って食料を買っておかないとこの前のように急に逃げる事があった時に困るからな!
それと食べなかったドウォンの肉もこっそり売っておこう!』
俺は荷物の確認をするとホチネ達に念話をして一度集まるように言った。




