竜人『シイバ』と魔法
他と違う色の竜人の後を付いて歩いていたのだが、俺のまだ短い足で走る速さではすぐに置いていかれてしまったようだ。
俺が中央ホールの西口に着いた時にはその姿を見失ってしまう。
「ハーハーハー」
俺は少し息を切らしていた。
『どこ行った?』
俺がキョロキョロと西口の前でしていると竜人の男『シイバ』がこっちに向かって走ってきた。
「コラ!フゥは西区に入ってはダメだぞ!
フゥは東区とこの中央区以外は立ち入り禁止だ!」
「この先の西区は何があるの?」
「この先は外交区だ!
転移門と大使館がある。
だから勝手に入って問題を起こすと外交問題になるぞ!」
俺はそうシイバに怒られた。
「シイバは今日は何してるの?」
「オレはお前のおもりが今日の仕事だ!
ラミネの体調が悪くなって交代したんだ。
だから今日は問題を起こさないでくれよ!」
「ラミネは大丈夫?」
「そうだな……あいつは一年前に聖域の外から帰って来たんだ。
それで外の旅で何か辛い経験したらしくてな。
詳しくは誰にも話さなかったから詳しくは分からないけど、たまに調子が悪くなることがあるんだ。
でもまぁ落ち込んでもすぐ次の日にはいつも通り元気にしているから……大丈夫だ!」
「そうなの?
俺が魔法の話して暗い顔になったから気になって?」
「魔法の話か?
ラミネは魔法が凄く得意だからな。
外の世界では名の知れた冒険者をしてたんだぞ。
でも冒険者を辞めて帰って来てからはあまり積極的に魔法を使う事はないかな?」
「へー、俺も魔法習いたいけどラミネに魔法の話はあまりしない方が良いのかな?」
「それならオレが教えてやってもいいぞ!
水龍神様の許可がないと勝手には出来ないけど。
許可を貰いに今から行くか?」
「本当!許可貰いに行こう!早く!」
俺は早足でシイバの手を引っ張って水龍神の所に向かった。
しかし俺の足はまだ短く、全然辿り着かない。
「ハーハー」
途中で息が上がり始めていると見かねたシイバが俺を抱き上げて水龍神の部屋に連れて行ってくれる事に。
水龍神の部屋は居住区のある東区の一番奥にある。
そこにはいつものように水龍神が横たわっていた。
「水龍神様。
シイバです。
フゥを連れて来ました。
フゥから話があるそうです」
「ホラ!自分で聞け」
俺は背中を押され水龍神の前に立たされた。
「水龍神様そろそろ魔法の使い方を勉強したいのですが許可をくれませんか?」
水龍神は少し頭を上げると俺の目を見つめて
『アイツに聞かないとならんが?
基礎訓練くらいなら覚えておいた方が良いだろう』
頭に声が響く。
水龍神はシイバに何か語りかけるているようだ。
しばらくしてシイバは一礼すると俺を抱き上げて部屋を出る。
「どこで魔法の勉強する?」
シイバは通路を歩きながら聞いてきた。
「魔法の訓練なら広い場所じゃないとダメだよね?」
「いやいや、今日はまだ最初だから広い場所じゃなくても大丈夫だ。
それにお前は竜人族じゃないからどの属性の魔法が使えるか解らないんだよ。
そしてオレが教えてやれるのは水魔法の基礎だけだぞ?」
「……?
エェー!水魔法の基礎だけ?」
「仕方ないだろ!
オレ達水龍人は水魔法しか使えないんだから。
それにアノ黒猫の許可がないと勝手に中級以上の魔法は教えられないからな!」
「水龍神様は神様なんでしょ?
それならアノ黒猫が後で何か行ってきても大丈夫じゃないの?」
「アノ黒猫って言ってるがな。
アノ黒猫は水龍神様と同格の神様らしいんだぞ。
だから水龍神様でも勝手には許可出来ないんだ。
あまり我が儘言ったら基礎魔法も教えてやらないぞ!」
俺は渋々頷くと食堂のある中央ホールに連れてこられた。
俺は端の方にある椅子に座らされシイバはテーブルの向かい側の椅子に座った。
「それで魔法の基礎だけどな?
まず頭の中心に意識を集中して魔力を貯めるイメージをしてみろ」
俺は意識を集中して魔力を貯めるイメージをしてみた。
しばらくすると頭の中で透明な何かが集まっているように感じた。
『オー! 何か凄い!』
「こんな感じ?」
そう言った瞬間。
集中が途切れて頭の中の透明な何かはスッと消えてしまった。
「まぁ最初はそんなもんだろう。
なかなか呑み込みが早いぞ!
小さくて弱いが魔力を感じた!
まあすぐに消えたがな。ハハハ」
シイバは笑顔を見せた。
「今度はそれをもっと集めて今のお前の限界まで出来るだけ大きくしてみろ」
俺は集中して出来るだけ大きく魔力を貯めた。
俺の中にあった魔力が全て頭の中で集まった感じがした。
「よし!それじゃその魔力を今度は回りから圧縮するようにしてみろ」
ギュッと外側から力をかけるように少しずつ圧力をかけていく。
『中々難しいな』
集めた魔力が半分程度の大きさになった時集中力が切れて体の力が抜ける。
その瞬間、貯めていた魔力は消えてしまった。
「まぁ、初日はそんなもんだろう。
魔力を使って体の力が抜けただろう?」
「ウン」
俺は怠い体で頷く。
「今日はここまでだな。
これからこの訓練を毎日寝る前にやることだ。
一回寝ると魔力が回復して前日より少し増えているはずだから。
それを繰り返して魔力の総量を増やして圧縮することで魔力の強さを高めていく」
「それでそのあとどうしたら魔法が使えるの?」
シイバは食堂からコップを持ってくるとその中に水を出した。
『オー!』
「こうやって魔力を水に変えるのが水魔法だ!
魔力の総量が多いと出せる水も多くなるし強い魔力にすると強力な攻撃魔法になったりする。
そして自分の中の魔力を調節して水を自在に操ったり、魔法で出した水を吸収して魔力を回復したり、いろいろ応用出来る。
まぁそれは中級以上の魔法になるからお前に教えられるのは水を出すのと、後はウォーターボールくらいの初級の攻撃魔法とかウォーターウォールくらいの初級の防御魔法かな?」
『ショボ!』
そう心の中で思いながらシイバには笑顔で頷いた。




