誘拐事件
ホチネは屋台通りに向けて走る。
どうやら寄り道はしないで直接向かったようだ。
そしてあの屋台に着く。
「ホチネ、寄り道とか他の店とかに行かないでこの屋台にきたの?」
「そうだよ。あたしの勘がこの店なら美味しい肉が食べれるって囁いたんだ!」
「ああ、そうですか。
それでその時ツラナはどうしてたの?」
「ボクは路地裏にゴブリンの子供達を見掛けたので気になって見ていたのです」
「ああ、最近はこの辺りにもゴブリンの子供達がウロチョロするようになったな。
知事がゴブリンの難民を受け入れて町に住み始めたんだ」
屋台のオヤジは少し迷惑そうに語った。
「エッ!町にゴブリンが住んでるの?」
ホチネは驚いて聞き直す。
「そうだ。一年前に『人権が大事だ!』とか言う奴がこの町の知事になってな。
ゴブリンの難民をこの町で受け入れたんだ。
最初は畑や店の手伝いなんかをして暮らしていたんだがだんだん盗みで捕まる者が出始め盗賊に情報を流す者も見つかり真面目に仕事をしていた者もワガママを言って暴れるようになってトラブルが多くてな。
今はその知事が町のお金から『支援だ』と生活費を渡してるらしい」
「何でそんなヤバイ奴が知事になったの?
ゴブリン達が今戦争の準備で三日月国から盗みや誘拐をしようとしてるんだよ!」
ホチネはゴブリンの盗賊達から聞いた事をうっかり話してしまう。
「何だって!誘拐?
一昨日、冒険者ギルドで出張に行ったオークの子供が二人いなくなって大騒ぎしてたはずだぞ!
その話しが本当ならこの町で大変な事が起こっているんじゃ無いか!」
屋台のオヤジは俺達の話しを聞き、店を閉め始めた。
「ホチネ!一度、冒険者ギルドに行ってみない?」
「冒険者ギルド?何で?」
「今日はギルドの雰囲気が変な気がしてたんだ。
一昨日だってゴブリンの移送も急いで夜にするなんておかしかったんだよ!
誘拐されたオークの子供って俺達を迎えに来たあのオークの職員達の子供なんじゃ無いかな?」
俺の言葉にホチネは頷きケレリスとツラナも納得して四人は冒険者ギルドに向かった。
ギルドの雰囲気はやはりおかしかった。
オークが一人もいない。
「冒険者ギルドにはいつもオークが多いはずだ。
それなのに今日は一人もいない。
今朝来た時の違和感はオークがいなかった事だったんだ!」
ケレリスは納得したようにつぶやいた。
「ギルド長はいますか?」
ケレリスが受付に聞くと、
「今、ギルド長は知事の所に面会へ行っています」
「それならゴブリンへの作戦はいつ行われるか分かりますか?」
受付の職員はキョロキョロして声を潜めて、
「そんな事を大きな声で言わないで下さい!」
俺も声を小さくして、
「オークの子供が誘拐されたからですか?」
「そうです。犯人から捕まっているゴブリンの解放を求めるメッセージが送られて来ているのです。
早く対処しなければ子供達に何があるか分かりませんから」
受付の職員はこれ以上話せる事は無いと口を噤んだ。
俺達はギルドカードに今回の報酬を入れてもらいホチネとケレリスとツラナに報酬を分けて待合室でギルド長が帰って来るのを待つ事にした。
ギルド長が肩を落とし帰って来たのは日が沈んでからだった。
帰って来たギルド長に面会を求めすぐに会える事になり待合室で話しを聞く事になった。
ギルド長は今回の誘拐事件を解決する為に町に居るゴブリンへの事情聴取をしたいと知事に進言したが、『人権が!』と取り合ってもくれなかったそうだ。
「何が人権だ!こっちは子供が攫われているんだぞ!
子供の人権を無視しやがって!」
ギルド長は怒り机を叩く。
そして俺達に、
「確か君、竜人のホチネさんだったかな。
聞いた話しによるとカバンを盗まれたそうじゃ無いか?
最近、この町では盗難が増えてね。
町の者はゴブリンの仕業じゃないかと疑っているんだ。
どうかな?町でゴブリン達が怪しいと噂を聴いたりそれらしい事を耳にしたりしなかったかな?
例えば外の町の冒険者がカバンを盗まれて探していてギルドとは関係無く町でゴブリンが怪しいと聴いてギルドとは関係無く調べてその途中でギルドとは関係無くオークの子供達を見つける?なんて事が起きないかな?」
ギルド長は俺達を見回して来る。
「それで私達に探して欲しいと?」
ケレリスの質問に、
「いいえ、そんな事は言ってませんよ。
ただ今夜。日付が変わる頃、町で盗まれた物がどこかに運ばれると噂が流れていましてね。
ギルドで調べようとしたのですが知事の方から捜査を止められたんでね、噂を聞いたこの町のギルドとは関係無い冒険者が勝手に捕まえたなら問題無いかな?と。
あなた達は最近ゴブリンを捕まえたのだしね」
そこまで言いギルド長は予定があると待合室を出て行った。
待合室に残された俺達は顔を見合わせる。
「ヒタリに貰った大切なカバンなの!
絶対に見つけないと!
その途中で誘拐された子供がいたら助けるでしょ?
フゥは付いて来てくれるよね?」
「もちろん!ホチネの大切なカバンだもん。探すの手伝うよ!」
「ボクもカバンが無くなった時に一緒にいたのですから責任があります。
一緒に探させて下さい」
「私もツラナの指導教授として責任がある!
一緒に探そう!」
俺達四人は深夜。
町の外へ向かう一台の馬車の後を気付かれ無いように追った。




