空を飛ぶモノ
「フゥ君、笑ってないで発明家の加護の説明をしていいですか?」
ツラナは折角の自分の研究を話せる機会を付与魔法の掛け合いの悪ふざけから取り戻したいようだ。
「ハハハハハ。ごめんごめん。
ふぅー…ふぅー。落ち着いた。
ツラナ、話しの続きをどうぞ」
俺は深呼吸をしてツラナに話しを振る。
「それでは発明家の加護の説明をします。
説明と言っても魔法道具を作ったり便利な品を作ったりするのを助ける加護です」
『アー、ざっくりした説明!
言葉のまんまなんだね!』
「ありがとう、ツラナ。勉強になったよ」
「いえいえ。それよりオーガとオークの加護の話しは聞きたくないでしょうか?」
『ツラナ、まだ得意分野の話ししたいのね!
ツラナ、意外とおしゃべりかも?
もう少し付き合うか』
「その話し聞きたいです。ぜひお願いします」
ツラナは嬉しそうに頷くと、
「オーガの加護は攻撃と冒険者でオークの加護は防御と冒険者です。
なので世界中の冒険者ギルドはオーガとオークによって創られて、二つの種族が中心となって運営されています」
「なるほど。そうなんだ。
それじゃやっぱり冒険者はオーガとオークが多いのかな?」
「そんなことないですよ。
加護があれば有利になったり助けになったりするだけです。
ボク達白魔道士でも練習すれば攻撃魔法や付与魔法も使えます。
個人によって向き不向きや覚え易さがあるだけです。
それを助けるのが加護なのです。
最近はハーフやトリプルなどのミックス種族も増えています。
それにより加護のハイブリッドも増えています。
例えばホビットと白魔道士で研究者と旅人の加護とか。
白魔道士と黒魔道士で全ての魔法を覚える加護や逆に研究者と発明家の加護で凄い発明や発見をする可能性もあります。
ただそう言う事に反対する考えもあります。
純粋な種が滅びるとか加護が薄まって消えるとか」
「そうか確かエルフは混血を進めてたって聞いたけど。
エルフこそ純粋種にこだわると思うような?」
「そうですね。エルフ教会はミックスを進めています。
ただエルフには子供が出来ないので混血は存在しません」
「エルフに子供が出来ないの?」
「そうです。エルフの秘密なので詳しい内容は分かりませんがエルフ族と竜人族は魔法神様の創られた種では無いので秘密も多いですしね」
ツラナの話しの疑問をホチネに聞いてみる。
「ホチネ、竜人族は混血っていないの?」
ホチネはしばらく考え頷くと。
「竜人族は龍神様が創られる卵から生まれて来るの。だから混血はいないのよ。
一応秘密扱いになってるけど普通に知られてる事よ。
多分エルフ族も妖精神から生まれて来るんじゃないかな。
エルフは秘密にしてるけどね。
だから混血もいないんでしょ。
ネェ!ケレリス!」
ホチネは御者台のケレリスに急に話しを振る。
馬車が変な揺れ方をしてケレリスが、
「エルフの秘密なので何も言えません。
ですがエルフ族は卵で生まれては来ませんよ!」
「出たよ!エルフの秘密主義!」
ホチネはケレリスに向かって言う。
「竜人族も秘密主義だと思いますけどね!」
ケレリスも言い返す。
『竜人族とエルフ族は仲が悪いけど似た者同士だな!』
「まあまあ、それより早くゴブリンを引き渡したいですね」
少し悪くなった空気を変えようとツラナは話しを逸らすのにゴブリンの事を見た。
俺は呆れと話しに飽きて来たのもあり荷台の後ろから空を見上げる。
馬車の遙か上空。
そこには何か黒いモノが飛んでいた。
俺は隣に座るツラナに、
「ネェ!あそこ、空、あれ?何か飛んで無い?」
俺の言葉にツラナが空を見上げる。
「エッ?どこですか?アッ!確かに何か飛んでいますね!何だろう?」
俺とツラナが騒いでいるとホチネもこっちにやって来て空を見上げる。
「エー?どこ?……………アッ!いた!何?あれ!」
俺達は目を凝らすが小さいのと遠いのでよく見えない。
その時ホチネが、
「フゥ!あんたの火の付与魔法であたし達の視力を高められないの?」
俺は頷くと、
『視力を高めるイメージ!』
三人の視力が上がり良く見えるようになったが視力が上がった事によってピントが外れて黒いモノを見失う。
最初に見つけたのはツラナだった。
「猫?猫が空を飛んでいる?
翼?翼のある猫?
あれ?どこかで聞いたような?」
ツラナは記憶を辿って、
「フゥ君の言っていた魔法神様?」
「エッ!あれは?ラィ?
フゥ!あれ!ラィだよ!」
ホチネも見つけて騒ぎだした。
「本当だ。ラィだ。間違い無い!」
俺もやっと翼のある猫が遙か上空を飛んでいるのを見た。
「「ラィー!ラィー!」」
俺とホチネは必死に叫ぶが距離が離れ過ぎていて聞こえるはずも無い。
ラィはどんどん遠くに離れて行き遂に見えなくなった。
俺は三人の視力を戻すと、
「ラィだったよね。間違いなくラィだったよね」
俺はホチネに確認する。
「間違いなくアノ猫だった。あんな翼のある猫なんて他にいないよ!間違いなくラィだよ!」
俺とホチネは興奮して頷き合った。
その隣ではツラナが震えて叫び出した。
「アレが魔法神様?魔法神様!魔法神様ー!」
騒ぎに気づいた回りの馬車も全部止まって空を見上げていた。
他には誰一人もラィを見つける事が出来なかった。
一番悔しがっていたのはケレリスだった。
「魔法神様?私だけ魔法神様を見られなかった!」
ケレリスは膝から崩れ落ちてしばらく馬車は進む事がなかった。




