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おとぎ話の始まりは……

 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。


 第一話は美女と野獣のOPパロなので、少し短めです。


  挿絵(By みてみん)

 ※表紙絵の支援イラストありがとうございます。

 不景気の時代。東の果てと呼ばれた国。

 とあるボロボロの集合住宅に、一人の男が住んでおりました。


 その国は割と豊かで、お金さえあれば欲しいものはなんでも手に入れることができました。

 しかしながら、男はIT土方としてブラックな労働条件で働かされており、それは(みじ)めな暮らしを()いられていたのです。

 そのためか、彼の心は(すさ)んでいて、とても冷たい性格でした。


 さて、ある寒い冬の夜。

 年老いた女の物乞(ものご)いが、その男の部屋を訪ねて来ました。


「……お頼み申します。これで、どうか、一晩の宿(やど)をいただけないじゃろうか?」

 老婆はそう言うと、一輪の紅いバラを差し出しました。


 ですが、IT土方にとって睡眠時間は貴重なもの。

 安眠を邪魔された男は、その物乞いをとても不愉快に思います。


「いや、あんたみたいな怪しいババア、泊めるわけねえだろが。常識的に考えろ!」

 彼は冷たく言い放って、老婆を追い払おうとしました。


「……外見に(だま)されてはいかんぞ――美しさというものは、人の内側にあるのじゃから」

 男にあしらわれた老婆は、そう忠告します。


 ですが男にとって、そんなことは関係ありません。

 疑り深い彼なら、仮に訪れたのが美女だったとしても、間違いなく追い払ったでしょうから。


「チッ、しつこいな、ババア。これやるから、さっさと消えろ。俺は眠いんだ!」

 やはり男は聞く耳をもちませんでした。


 無用なトラブルを避けたかった男は、泊める代わりに壱万(いちまん)円と印刷された紙切れを老婆に押し付けます。

 そして悪態(あくたい)()きながら老婆を追い返し、扉を閉め切ってしまいました。




 するとその瞬間。

 年老いた(みにく)い女の物乞いは、美しい少女へ――萌木色のドレスを(まと)った魔女へと姿を変えたのです。

 魔女は魔法で強引に扉を開き、男を無理やり部屋から引きずり出しました。


「もういい加減にしろよっ! てか、あんた誰だよ!? 何なんだよさっきからよお!?

 こちとら明日ってか今日も仕事なんだっつーの! 日曜なのに! 日曜日なのに!! 休出手当も残業代も出ないのに! 何連勤だよふざけるな!!

 アホか!! もういい!! 誰か一人ぐらい俺に優しくしろ!! どいつもこいつも、いい加減眠らせてくれよおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 男は泣きながら許しを()いましたが、もう手遅れでした。

 いろんな意味で。


 冷たい心の罰として、男は見るも恐ろしい魔獣へと姿を変えられてしまいます。

 そして、異なる世界に存在する『冬の城』へと連れて行かれ、其処(そこ)に閉じ込められてしまったのです。

 外の世界を知る唯一の手段として、望むものを何でも映し出す魔法の鏡だけが魔獣に与えられました。


 最後に、魔女は一輪の紅いバラを差し出してこう言います。

 もし彼が、最後の花びらが落ちる前に、人を愛することを知り、愛されるようになったら――(すなわ)ち「真実の愛」を知ったのならば、そのとき魔法が解けて、元の世界へ帰ることができるのだと。


 ただし、それが(かな)わなければ……そのときは死ぬことすらも許されず、魔獣の姿で永劫(えいごう)を生きなければなりません。


 しかし嗚呼(ああ)

 誰がこんな恐ろしい魔獣なんかを愛してくれるのでしょうか?


 男は魔獣として、その呪われた姿で永遠を生きる宿命なのでしょうか?




 彼が魔獣に変えられてから、(またた)く間にひと月が経ちました。

 物語はそこから始まります。




 というわけで、よろしくお願いいたします。


 Copyright©(C)2020-ナナシノネエム

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