18話 『男』のまたいつもの日常
東京から夏風町に帰って日曜日が終わった。どうせ新幹線を降りた後なんて皆一緒なのだから状況なんて知らない方がいい。強いて言うなら帰るだけ、朱音もただ俺の家の前で手を振って帰っただけだ。色々なお土産を買って貰って――。俺も夕飯と入浴を済ませた後はぐっすりだ。
という訳で今日は月曜日、俺はいつものようにベッドで寝ていて今日のニカエルは以前に敷いた布団を気に入ったのか……それとも別の理由なのかそちらで寝ている、今日はベッドで俺一人で寝ていた。やっぱりシングルサイズのベッドなのだから一人で寝るのが正しい、大の字で寝れるこの自由さは心地よい。
――しかし、やっぱり一つ足りないし、腹部が重い。足りない一つは……今日は学校のはずだからそろそろ目覚ましが鳴ってもおかしくない。
「……ちゃん、いつも寝坊助さん……だから……」
ボーッとしていて聞き取れない。それに聞こえる角度が左右とかじゃなくて正面。俺は確か横になっているはずなんだけど、どうして正面から聞こえるのだろうか。
「お腹……ちゃうぞ……ちゃん……」
お腹? 俺のお腹がどうしたのか、どうせニカエルが俺が起きないからってふざけているのだろう。お前の相手はいつも疲れる……。まだ目覚ましがならないのだからそっとしてほしいのだが。
「ぎゅううううっ……っと」
「…………⁉」
お腹が締められる、その感覚が徐々に強くなっていく――左右から圧を掛けられて内臓が軋むような感覚……滅多に無いような感覚に包まれていく。これは……凄い強いな……。お腹に力をこめてもその力以上に左右の圧の方が強く押し返される。
「ぐっ……あっ……分かった……起きる……から……」
「はーい、じゃあ締めるの止める」
キュッと圧が抜ける。しかし起きれない。腹部に乗ってる限り俺はこのベッドから起きれないのだが――。とりあえず目を開けて擦る。
「……朱音、何で俺の上に乗ってる? ニカエルかと思ってた」
「カナちゃん、おはようー。モーニングコールしに来たよー」
モーニングコールというのは電話とかで起こす事なんだけど、これはモーニングコールというよりモーニングアタックだな。
「……朱音、部活は?」
「ほら、一週間休んでたから今日位はいいかなって」
いいわけないだろ。
「じゃあほら着替えて。あたしは朝食食べに行くから」
「何で俺の家で朝食を食べようとしてるんだ……」
久々に朝に来たと思ったら腹部を足で締めてきて、食事をここでとるとはなんて虫のいい話なんだ。
起き上がってスマホを確認してみると既に目覚ましが止まっていた。これは朱音が止めたのかね。……最近はだらしないニカエルは以前目覚ましが鳴る前に起きている事が多かったのに今は目覚ましと同時に起きる事が多い。とりあえず足でツンツンと突っついて起こす。……一夜を何かで過ごしたようなその顔はなんだ。
――着替えてヘアクリップを挟んで部屋を出たら玄関で朱音がパン一枚咥えて待っていた。素晴らしい幼馴染感、こうして朱音を見ると要素が沢山だな。
「ふっふー、カナちゃん曲がり角であたしとドーンッなんて期待してた?」
「全く期待してない。そもそもそのイベントは転校生とのイベントだろ」
「そうだったー」なんて天然かましてる。
「それにしても、カナちゃんの女体は不思議だねー」
「いきなりどうした?」
「何処からどう見ても女体、くびれも出てて髪の毛もいい感じに跳ねてるし、胸は――」
「言わないで……」
朱音との商店街までの会話はこれだ。久しぶりに朝から朱音と登校っていうのに俺の話だ。俺自身は初日以降はそんなに気にはしていない『女』の状態。よくわからないけど胸以外はよく褒められる。女子という要素をニカエルは多く詰め込んだとは言うけど、問題の胸はもう数ヶ月もこのままだ。名胡桃さんにも言われるしこの朱音にも言われるこの胸……まな板だ。
「朱音はどうなったらそんなデカくなるの?」
「あんまり意識した事無いけど、もう自然の定理ってやつ」
「自然の定理――」
俺のこの性転換が『自然の定理』じゃないからな。明らかにニカエルの創意的な物でこの姿だから、二年三年経ってもニカエルのイメージが変わらない限りこの状態なのだろう。
「でもデカいからいいって物じゃないよー。あたしだってスポブラでおさえてこれだし」
「邪魔になる?」
「あたしは邪魔になる」
「それが羨ましいかも――」
邪魔になる位だったら俺にくれ。なんて言えない。
商店街の入口に着いて名胡桃さんを待つ。
「いつもここで待ってるの?」
「うん、朝はいつもここ。名胡桃さんはあそこからゆったり来るから」
言ったそばから名胡桃さんがゆったりと来た。軽く手を振ってくる。
「おはようございます――堂ノ庭さんもお久しぶりで。お体は大丈夫ですか?」
「うん、心配かけちゃった。今日から大丈夫」
自然体で名胡桃さんは朱音に話しかけているけど、名胡桃さんは俺達の喧嘩とかを知ってるからそういう素振りを見せている。俺が転換した時の良き理解者は名胡桃さんだけだ。
「そういえばシロちんは日曜日何してた?」
「私ですか? 私はいつも通り家で読書ですよ」
「へぇーやっぱり本が好きなんだ」
「堂ノ庭さんは?」
「あたしはこれー」
自慢げに昨日の「公認昇り階段認定証」を名胡桃さんに見せた。
「東京タワー大展望台まで階段で登りきった――堂ノ庭さん東京タワー行ったんですか?」
「うん。この人と一緒に」
俺を指差す朱音、この人なんて言うな、ややアホ。
「まぁ、何ていうか。気晴らしだよね……朱音の気持ち沈んでたし」
「ふふ、いい気分転換じゃないですか。――東京かぁ、私が以前住んでいた所ですね」
意外、夏風町に来る前は名胡桃さんは東京に住んでいたのか。道理で立派な家を建てられることでして。
「お二人は何処に行きました?」
「ウエノとアサクサとその東京タワーだな」
「有名な観光地を一気見ですか。スカイツリーには?」
「あースカイツリーは混んでそうだから止めてこの三つを重点的に。動物園と"アサクサ寺"と東京タワーをじっくりと――」
何故か名胡桃さんは笑っている。どうした、まだオチも何も付いていないのだが。名胡桃さんは紙を一枚取り出して「浅草寺」と書く。
「奏芽さん、"アサクサ寺"じゃなくてこれは「浅草寺」書いて――」
その浅草寺の上にふりがなを振る。
「浅草寺と読むんですよ」
「えっ⁉ そうなの⁉ 浅草寺⁉ 地名のアサクサっていうのもあって間違えやすくないこれ⁉」
「そうかもしれませんが――少しトンチが効いてるのは間違いないですね」
これは恥ずかしい間違いをした。そもそもアサクサに来ているのだから"アサクサ寺"と読んでしまうのは絶対だと思うのだが。
「カナちゃん自慢げに"アサクサ寺"って連呼してたよ。東京の雷門のど真ん中で」
「うわぁ――恥ずかしいわたし……」
尚、朱音も目を横に逸らして汗を掻いている模様。絶対お前も初見だったら"アサクサ寺"って言うだろうな。こいつは間違いなく言う、なぜなら『ややアホ』だから。
「おはようございます、奏芽さん」
学校に着いて義務と言わんばかりに神指さんが俺に向かってくる。
「おはよう、神指さん」
「これ良かったら」
チラシを渡される。これは――海開きのお知らせか?
「私の父……神主が海開きのチラシを配って欲しいと言ってたので始めに奏芽さんに渡そうと思いまして」
「何か義務付けが……?」
「いえ、繁盛と安全を祈願してこのチラシを――」
あの海で繁盛というのはあるのだろうか?
「へー海かぁ……結構プライベートに近いよね、あの海」
「まぁ――基本的に泳ごうって考える人は少ないんじゃない?」
「カナちゃん、一番風呂ならぬ一番海に入らない?」
「海入るのか……別にいいんだけど二人だけっていうのは」
前の席にいる名胡桃さんを引っ張ってきて俺の目の前に持ってくる。
「シロちんも海いかない?」
「わ、私は……その……いいですけど……」
名胡桃さん無理しなくても……朱音の押しが強いから名胡桃さんも断れなかったのだろう。でも名胡桃さんの水着姿も見てみたい気もする。――水着?
「朱音、わたし水着持ってないんだけど」
「あれ? だってズボンだけで――」
「おいっ……」
「堂ノ庭さんっ……」
俺と名胡桃さんは肝を冷やす、朱音も気付いたのか口を閉ざす。。朱音、お前が今ここで俺が『男』ってバラしたら俺がどうなるのか分かって……ないな。分かってないからこの状況下になっている。その状況を理解してないのは神指さん一人だった
「ど、どうしたんですか? 皆さん冷たくなって」
「い、いやっぁ⁉ 海、行こう⁉ 名胡桃さんも朱音も……」
俺は二人の肩を持って廊下の方へ連れ出す。流石に教室で堂々と耳打ちされるような話は出せなかった。
「朱音! 頼むッ! いくら幼馴染で色んな事を知ってるとはいえ空気がマズくなるような事だけは言わないでくれっ、特にわたしの話は!」
「そうですよ! 奏芽さんの秘密をクラスの全員にバラしたら奏芽さん一人の責任になるんですからねっ!」
二人に咎められる朱音、事の重大さを知って流石のポニーテールも下がりっぱなし……。
「二人共ごめん……今度から気をつける……」
「お願いしますよ~朱音~」
俺だって櫻見女入って即退学なんて事を起こしたくない、その為には口止めをしなければならないのだが、その警告が朱音には半分しか届いてなかったようだ。そのせいで名胡桃さんも口止めに入る事に――。名胡桃さんは切り替え上手だけど朱音は切り替え下手だった。
※ ※ ※ ※
放課後になって帰る準備をする。――櫻見女では茶色のカバンを持つのが校則になっているが、運動部や他の部活に入っている者はカバンではなく道具用にリュックサックを持つことが許可されている。その一人が朱音だ。そしてその茶色のカバンだが、邪魔にならないように考慮がしてあってショルダーストラップが付いている。これは取り外し可能で好きなスタイルで持っていける。ナスカンも付いてたりこのカバンは機能満載だ。因みに俺はショルダーストラップを外して手で持っている。名胡桃さんもその一人だ。
「カナちゃん、シロちん。今日は水着買いに行こうよ」
「おー意識高いね。早速買いに行っちゃうの?」
「だってー、ねぇ? シロちん」
「そうですね。結構奏芽さんの水着選び楽しそうですもんね」
二人は目を輝かせてるけどそれはそうか……俺の身長は名胡桃さん以下朱音と同等もしくは以下。名胡桃さんに聞いてみたら小さい子の服選びって楽しいそうだ。どうしてなのだろうか? それは俺くらいのサイズの服はイロドリミドリでコーディネートのしがいがあるそうだ……やっぱり俺は名胡桃さんの着せ替え人形になってしまうのか。
「それで、海街にあるあの小さな水着ショップ行くのー?」
「はい! そこに行きましょう。今すぐに」
渋々その話に俺は乗る。女性物の水着なんて今まで着た事が無いから不安。最悪な物を選ばなきゃいいんだけど――。
「やっぱり三角ビキニでしょうか?」
「狙ってマイクロビキニもいいかもよ?」
「うう、うぅ――」
俺は人生で初めて競泳用水着……スクール水着でいいやと思った。朱音と名胡桃さんが選ぶのは全部際どい水着ばかり。どうしてこんなに種類が多いのか。
「カナちゃーん、これは?」
「……あのさ、もうちょっとマシにならない?」
「いやいや、一応着てみて、ね? ね?」
水着を押しつけられる、胸と下の面積少ないんだけどなにこれ? 後戻りできない状況になってしまってこれを持って試着室に入る。まさか試着室で全裸になるときが来るとは――。
シャッ――
カーテンを閉めて服を脱ぐ。――この水着は紐が無いけど一体どうやって着るんだ? パンツの方は履くだけというのは分かる。でもこのブラ部分はどうやって……まさか支えはゴム?
上から通して胸部分に当てる。……締め付けは無いんだけど、想像通りヘソ辺りが寒い。胸辺りは風当たり無いとして他はかなり寒く感じる。言ってしまえば『男』の方が寒いのだが、それは『男』としての意地で我慢出来る。――俺でも何を言ってるのか分からなくなってしまった。
少しカーテンを開けて顔を覗かす。
「お、カナちゃん」
「あの、さ。恥ずかしい……」
だが朱音、無慈悲のカーテン全開行動。俺の全体図が前に出る。
「……崖、だね。ぺったん、だね。つるぺた」
「わたしだって好きでこうなってるんじゃないよ――」
君たちには分からない、崖やらぺったんとかの言葉の威力を。
「それはバンドゥっていう水着で比較的奏芽さんに合ってるかと」
「比較的って何処を比較してるのさ……」
一瞬下に目をやって逸らすとか名胡桃さんも人が悪い。素直に胸と言ってくれ。
「何か他に無いの? この……バンドゥ以外に」
「えー結構似合ってるのに」
「そうですよ、似合ってますよ」
「あ、そうなの?」
俺は試着室の鏡を見てみる。
……あれ。悪くないな。
「どうしよ、気に入ってきた。可愛いねこれ」
「でっしょー? 店員さ~んお買上げでー」
まだ買うとは決めてないのに朱音はもう店員を呼んでしまって後戻りが出来ない。もうちょっと選ぶのを引っ張ってほしかった気もする。――三千円払いました。元々水着は無いから新しく水着を買うのは仕方ないとはいえやっぱり女性物の水着や服は高い、俺から言わせればただの布なんだぜ?
「ねーねー私のは?」
「ニカエル……」
コイツも何か水着を買いたいのだろう。俺達が帰ろうとしようとした途端にスマホから出てくるなんてな。
「水着は皆で選ぶのが醍醐味でしょ。私のも選んでよ~」
「……だって、どうする朱音、名胡桃さん」
「いいんじゃない? ニカエルちゃんだって泳ぎたいんだよ」
ニカエルは顔をブンブンと上下に振る。同意どころか"激しく同意"状態。
「それで、とりあえず試着してみたいっていう服は何なの?」
ニカエルは店全体を回って一つを選んだみたいだ。
「これかな、王道でかつ奏芽をドキッとさせる服は」
「なんでわたしをドキッとさせる必要があるの……」
持ってきたのは首だけにヒモが付いてて他は上から着るような水着。
「ホルターネックですね。胸を強調出来る王道的な水着、素敵ですよ」
「へー……そう」
「じゃあ試着してくるから、感想ヨロシクぅ」
カーテンを締めてものの数十秒でカーテンを開けてきた。
それはそうだ、だってキャミワンピだけで後はパンツを脱いで水着を着るだけだからな。モデルかのようなポーズを取るが俺は別にドキッともしないし、感想は小さめに拍手をするだけだった。
「これで奏芽と一緒に入れるねっ。すいませーん、お買上げでー」
お前も勝手に店員を呼ぶか。――四千円払いました、結構高い。
「はぁ……それで朱音と名胡桃さんは何か買わないの?」
「あたしは家の押し入れから引っ張り出せばあるし……シロちんは?」
「私は既に購入してるのでここで新しいのを買う必要無いですね」
結局俺とニカエルだけが買ってここの店を出た。しかし水着だけで専門店が出来るほど種類があるものだな。特に女性のが多くて男性のは店の端に追いやられていた。――男性はパンツを買うだけで終わってしまうからな、男性にも乳首はあるのだが。一体どういう差別なのか……一度も考えた事は無かったけど。
※ ※ ※ ※
「たらら~ん♪ たららら~ん♪」
「いい加減水着を脱いでキャミワンピを着てくれ」
「お? ムラムラしてる? 一発ヤる?」
「やらないから。後ムラムラもしてない。とっとと着て」
「ちぇー」
…………。
「ちょっと待った! ここで脱ぐな……! 俺出るから」
最近プライベートというのを薄れてきたけど『男』と『女』であって、そこの部分はしっかりしとかないと、扉を開けて外で待つ。あいつは相当水着を気に入ったようで家に帰ってきて直ぐに意味のない着替えをしていた。
「……もーいーかい?」
「もーいーよ!」
俺の部屋なんだけどな……ニカエルの着替えが少ないだけ部屋に出る回数は少ないけど、この少ない回数でもいくつか部屋の出入りを繰り返すと疲れなくなってくるし面倒でもなくなる。中に入るとニカエルは椅子に座って遊んでいた。どういう遊びかというとただクルクルと回転してるだけだ、意外と楽しいのは分かる。
「奏芽はもう寝ちゃうの?」
「明日も学校だしな。水着は今日買ったけど海は来週の日曜日だし」
お風呂も夕食も済ませたから後は寝るだけ。昨日も何かと忙しかったのに今日も今日で夏風町の海街の水着ショップまで行ってここまで帰ってきたので疲れている。『女』っていう性別は疲れるものだ。
「あ、ニカエル。スマホをスタンドに差しておいて」
「はいはーい」
ニカエルにスマホを渡す。……そういえば、東京に行ったときあんまりニカエルとの写真は撮らなかったな。別にコイツは気にしていないと思うけど思い出としては全員で残したいものだ。今度の海は写真を取るようにしよう。因みに写真を撮る時ニカエルは意識してないと写真に写らないらしい。……本当かよ、そういわれるとニカエルは幽霊的現象なのかもしれない。
「……何? じろじろ見て。もしかして一緒に寝たいのー⁉」
「いや違う。お前は下だ。布団で寝ろ」
「やーだー! 奏芽と一緒に寝るもーん」
ベッドに飛び込んで俺の上に乗る。お前は本当に人の言う事を聞かない事が多いな……そこがニカエルらしいと言ったららしいけど。天使というのはこういうのばっかりなのか?
「ん~久々に奏芽と一緒に寝るー」
「つい三日前までは一緒に寝てただろ。もう忘れたのか」
「忘れたからこうして顔をスリスリしてるじゃん」
こいつ絶対忘れてない。
「もう明日も早いし寝るから。電気消すぞー」
「はーい、おやすみなさーい」
リモコンで電気を消す。暗闇になるとコイツも大人しくなるのだがな。でも変わらず腕と足は絡ませてくる。こう動きづらくなるから一緒に寝るのは止めたかったんだ……。
まだ六月が始まったばかりだけど、もう少しで夏休みになるのか。なんだかんだ言って二人も『女』の状態で攻略したし、精神的にも強くはなってきた。これも三人の女声のお陰だと思っている。名胡桃さんに朱音、それとニカエルだ。まぁバラしたというよりバレたという方が多いのだが、これでも後から説明をすれば理解してくれて俺は安心している。――朱音は今日口を滑らしたから不安だけど、ちゃんと学習してくれた……と思っていいか。
「…………」
「久々に奏芽と一緒……」
「この野郎、逆に抱き付いてやる」
俺は手と足を使ってニカエルに襲う。これだったら朝ニカエルが起きても身動き取れないだろう。
「んん~嬉しい」
「…………」
そうだった、コイツ俺が何仕掛けても嬉しがる事の方が多かったな。初めての時はこんな事無かったのにいつの間にか俺にラブアタックする事が多くなってきた。もしかしてニカエルには俺とのリンクシステムでも付いてんのか? でもこのままの状態で朝どうなってるか知りたいのでこのまま寝る事にしよう。




