EX‐2 箸と天使は使いよう
こんにゃくゼリーを買ってきてニカエルとこれをどうしようかと考えていた。俺はそのまま食べようとしたのにどうしてだかニカエルは止めてきて「考えよう」と言ってきたのだ。
「何かこれで遊びをしない?」
「食べ物で遊ぶとは一番にしたくないことだな――」
「そうじゃなくって、ほら知的に」
ニカエルは一階に降りて何を持ってきたか。箸と皿だった。その皿に容器に入れられたこんにゃくゼリーを出していく。バスバスと濁った白色のこんにゃくゼリー(ライチ味)が皿の上でプルンプルンと揺れていた。
「このこんにゃくゼリーを箸で掴んで相手の口に持っていくっていうゲーム! どう?」
自分はニカエルが床に座った動作でプルンと揺れた胸を見て「ワルクナイ」という。早速箸を持ってそのゲームを開始しようと思ったが――
「待った! 箸は――こっちの手で持って」
ニカエルが持ったのは利き腕じゃない方。なるほど、これでゲーム性が上がるといった所か。自分も箸を逆腕に持って感覚を確かめる。――思った通りに動かない、これは難しい。
「ゲームはこんにゃくゼリーが無くなるまで、ターンを決めて箸で掴み合いをする。口に運べなかったり箸で掴んだ後落としたりこんにゃくゼリーを崩したりしたらそこでターン終了。――準備はいい?」
「罰ゲームはあるんだろうな?」
「勿論」
「乗った」
ゲームが開始された。
グッパーで決めて先攻後攻が決まった。まずは俺が先攻で逆腕でこんにゃくゼリーを掴みに掛かる。掛かったが簡単に持ち上がることも無く四苦八苦する。
「……ぐっ、ぬっぐうううう」
なんとか柔らかくこんにゃくゼリーを持ち上げるがそのこんにゃくゼリーがプルプルと震える。融通が聞かなくてムカつく。その様子を見てニカエルは笑っている。何れにせよニカエルもこの逆腕での箸で苦労するだろう。
「ささ、奏芽。私の口まで持っていけるかな?」
「馬鹿にしやがって――ぐうぅぅぅぅ……」
持ち上げてニカエルの口元まで持っていった。
「……ニカエル! 口をあけろよ!」
「やーだー、もうちょっと待ってね」
持つ手がプルプルと震えている。こんにゃくゼリーも箸で絞められて縦に広がっていく。その様子を見てニカエルは口を開く。
「はい、あーん」
「腕キツい……あっ」
グチュ――
自分は持っていこうとしたが敢え無くこんにゃくゼリーが潰れてしまった。その潰れた白濁こんにゃくゼリーはニカエルの胸の上に乗っていた。びっちゃりと。
「はーいざんね~ん。ん……ちゅぱ……美味しい……」
ニカエルはその胸の上に乗ったこんにゃくゼリーを手で救って口に入れた。これで俺に点数は入らなかった。次はニカエルの番だ。
「いやぁん――キツい……」
勿論、逆腕で持つニカエルの箸も震えてこんにゃくゼリーもぎゅううと絞め上げられている。
――というか、この白濁こんにゃくゼリー(ライチ味)をこうして見ると躊躇する色をしているな。
震える手でニカエルは俺の口元まで持ってきた。
「か、奏芽……食べて、食べて……」
「どうしようっかなぁ。お前は一回こうやって口を開かなかったよなぁ」
ニカエルは今まで見せなかったマジの顔を見せた。そりゃお前がそうなれば俺だってこうなる。俺の目の前でこんにゃくゼリーをプルプルと震わせて我慢していた。
「奏芽……お願いってば……」
「もうちょっとだなぁ」
俯いてとにかく俺が口を開くのを待っているが、腕が震えるのに合わせて胸も小刻みに震えるからこれは傍観する以外の選択を取れなかった。
「奏芽、開けて開けて開けて――口開けないと壊れちゃう――」
もう少しでこんにゃくゼリーが崩壊する。俺はそのこんにゃくゼリーが崩壊してニカエルが絶望の顔をするのを待機しているんだ。ニヤける、この展開にニヤける。
「それじゃ口を――」
「無理……」
箸で崩れて落ちた。これが何処に落ちたかと言うと一番問題になる所、ズボンのファスナー部分に落ちていた。
「あーあ、勿体無い――」
「いいよ、今後から落とした方が食べる事にするって事で」
「は……?」
という事はこれをニカエルが食べるというのか? それも拒まずにニカエルはファスナー部分に口を近づけて手も使わずに食べた。手を付けずに食べる――それはどういうことになるというと一番にアノ部分に口が近づくという訳だ。それに俺はドキドキする。
「じゅるっ……ぶっ……何回でも……いけるねっ」
「痛むから暫く時間が掛かるけどな」
俺は逆腕の肩ぐるぐると回す。結構力加減が分からず無駄に力を消費してしまう。そして結果痛みが生じてしまって次のターンまでに時間が掛かるといった所か。
「はぁ……はぁ……次、奏芽ね」
何故そんなに息を荒げる。
二回目は箸を軽めに持ってこんにゃくゼリーに挑戦する。そう、箸を軽めに持ってこんにゃくゼリーを持ち上げられる。持ち上げられるのだが、ここからが大変だ。次は箸を相手との角度の垂直にしなければならない、これだったら軽めに箸を持たなきゃいい話なのだが……。そうなると次は持ち上げるのに苦労をする。こんにゃくゼリーゲーム、恐るべし。
さて、その手順を踏んでニカエルの口へと運んでいけた。
「んっ……入れちゃうのね……あーん」
近づけたらニカエルは口を正直に開いてくれた。――口が正直とは何事か。正直じゃない口とは何なのか。自分は震える手でニカエルの口にこんにゃくゼリーを入れた。ニカエルはそれをパクっと軽く咥え、モグモグする。
「――というか、ニカエル。箸も同時に噛まなくてもいいんだぞ?」
「……んっ……」
ニカエルは箸だけを離してくれたが、噛んでいたからか糸を引く。全く、自分がこの箸を咥えないからといえ噛むことはないだろう。
「……あー」
ニカエルは口の中でグチャグチャになったこんにゃくゼリーを舌を出して見せたが、これを見せる事は無いだろう。反応に困る。
「奏芽、よくできました――口いっぱい……」
それを言った後にゴクンとこんにゃくゼリーを食べた。
――というか、俺はそのこんにゃくゼリーのライチ味をまだ食べた事無いんだけどちゃんとニカエルは口に運んでくれるんだろうな?
「おっ、おっ、おっ――しゅごいの……」
目を丸くして少し涙目になって……そして四つん這いになってこんにゃくゼリーを箸で掴む。ついでに口も丸くしている。相変わらずニカエルは慣れていなくてプルプルと腕どころか体全体を揺らしていた。
「ふ、ああ――」
やっとの思いで持ち上げて俺の口元に持っていこうとする。相当キツいようで目の前でこんにゃくゼリーが止まってしまった。
「かなめぇ……もうちょっと顔をこっちに――」
「お前が俺の番の時に顔を箸の方に持っていった事があったか?」
「今だけ――お願いっ――今だけは」
俺は顔を横にふった。これは勝負なのだから。
「いっ、けえええぇぇ――」
「おっ、いいぞ。パクっ」
口まで箸を近づけてくれてようやくこんにゃくゼリーを食べた。これがライチ味か、中々不思議な味をしている。このこんにゃくゼリーの感触が癖になる。俺はよく噛み砕いてからゴクッと食べた。
「――これで同点だな」
「うん……結構いい勝負になってる」
※ ※ ※ ※
意外にも優勢に進んでいたこのこんにゃくゼリーゲームも終わる。ニカエルは持ち出したにも関わらず何度かこんにゃくゼリーを落とす事が多く、なんとか罰ゲームの回避が出来そうだ。
次は俺の番なんだが、この一回を落としても食べさせても勝ちは確定している。箸を手にとって慣れた箸使いでニカエルの口元に持っていくが――。
「まって」
と言われ箸が止まる。何と思ったがニカエルが寝転がってこの状態からニカエルが口元にこんにゃくゼリーを持っていけと言ってきた。これはつまり俺もこんにゃくゼリーを箸で掴んだまま四つん這いになって近づいて食べさせろという事か。まぁ勝ち確ではあるからそのままニカエルの指示に従って楽しむとしよう。
俺は四つん這いになってニカエルの足から順に被さっていく。
「奏芽、来てる――」
「お前が寝転がって口がそこにあるからだろ。そりゃ俺だって来るわ」
俺はこんにゃくゼリーを箸で掴んだまま口までやって来た。
「さ、来たぞ。コイツを咥えるんだ……!」
「い、いや! 奏芽慣れすぎ!」
「さぁ――コイツを!」
俺は箸に持ったこんにゃくゼリーをニカエルの口元まで持っていくがニカエルは顔を振って口に入れるのを拒んでいた。
「大人しくしろって!」
「あ、が――」
俺は利き腕でニカエルの顔を掴んで正面に固定した。俺はこんにゃくゼリーを顔の正面に持ってきてニカエルによく見せる。ニカエルはそれを一点に見ている。
「意外と一口大のコイツが簡単に口の中に入っていくもんな」
「い、いやァ――止めて」
「ここまで来て止めては無いだろう」
プチュンとこんにゃくゼリーとキスをさせる。
「んんんんんん⁉」
その後、無理やりこんにゃくゼリーを口腔に押し込んで勝利を噛み締めた。
「ゲホッ――ゲホッ――」
「あ、いや悪い。大丈夫か?」
ニカエルは俺が無理やり口の中に押し込んだからかむせてグチャグチャになったこんにゃくゼリーが少し口の周りに飛び出ていた。――目の光を失っているのは多分アレだろう。負けを確信したからだろう……もうだいぶ前から負けているんだけど。
「おーい? ニカエル? 俺の勝ちだぞー?」
「…………」
やっぱり意気消沈していて、目からは光どころか瞳孔も開いていた。
「……それで」
「ん?」
「それで、奏芽は何の罰ゲームを――?」
そういえば、罰ゲームの内容は考えていなかった。俺が勝てるとは思っていなかったからだ。
「じゃあ、罰ゲームは――」
※ ※ ※ ※
ちゃぽーん――
「本当にこんな事で良かったの?」
「まぁこんな事で……」
ニカエルと一緒にお風呂に入っていた。俺の一個目の夢として家のお風呂で誰かと入るという事をした。――昔に『女』の子と入った事があるが背中同士でな……。という事でちゃんとニカエルと正面を向いて湯船に入っている。別にニカエルは恥ずかしがる事も無く一緒に入ってくれた。――本人何故か喜んでいるし……これでは罰ゲームの意味が無い。
「体を洗ってくれるか?」
「えー……まあいいや」
自分は湯船から上がり、椅子に座ってニカエルが上がるのを待つ。というかニカエルが何故かニコニコした顔で待ってるのを見てコイツは洗わない気でいるなと思い、アカスリにボディソープを付けて洗い始める。
その時にニカエルも湯船から上がりようやく洗ってくれるかと思ったら急に胸を背中に押し当てて来た。
「もー奏芽ったら」
「ちょ――⁉」
ニカエルは胸を押し付けた後に俺の前の物を掴んで泡で滑りを潤滑にする。
「奏芽の硬いね――」
「…………」
その感触をニカエルは手で確認してから何度も上下にその物を擦る。こんなにもいやらしい動きをこんな場所でやってくれるのは天使としてどうなのか。そして徐々にその手の動きのスピードは上がっていく。
「はっ、はっ、はっ、はっ――」
ニカエルが擦る度に背中に息が当たる。
完全に肌を密着させてニカエルは擦るのに集中している。
一方、俺はと言うとその手の動きを見て止まっていた。
「奏芽、体をビクビクさせて……もう出そうなの?」
「…………」
特に何も言えなかった。ニカエルの顔も見えないし、俺自身はニカエルの胸の感触を味わっているだけだ。まぁ何度かその胸を間近で見たり感触を味わっているけど、こんなに肌と肌の感触で味わうのはここだけだろう。
「ニカエル、そろそろ――」
「出そう? 出そうなのね。いいよ、我慢しないで。全部出していいよ、手に出して……」
「…………」
俺はギュッと出した――ニカエルの手に。
ニカエルは全部出たのを確認してから、擦るのを止めて手に掛かった物を見る。
「うわぁ……白くて濃い、しかも凄い量。ベトベト――」
「…………」
俺は苦い顔をする。まさかコイツをニカエルの手に出すことになるとは。
「ちょっと苦い味なんだね」
「舐める事無いだろ……」
「別に? もう数カ月の仲だしいいでしょ?」
ニカエルは手に付いた物を洗い流して風呂場の扉を開けた。
「気持ちよかった? また機会があったらしてあげるから――」
「……出るのか?」
頷いてニカエルは風呂場から出て行った。
「――アイツ。あんな事言って何に興奮してたんだ?」
何故、シャワーヘッドを何度も擦って息も荒げていたのか。
ボディソープを全部出してくれと願っていたんだろうか。
まぁ今日はボディソープの替え日だったから、風呂場に替え用のソープの袋を持ってきてそれの残りをギュッと出したんだがな。
結局ニカエルは出ていってしまって風呂場でまた一人になっていた。
エロく書いた事については悪気はないです。ニカエルと奏芽の『問題』なシーンは本編にも取り入れようとしたのですが中々取り入れられず、考えたネタとしては勿体無いので『問題シーン』のボツ一つをエクストラとしてたまに投稿すると思います。かなり過激に書いているのでR-15のギリギリです。
因みに、本編中の風邪のシーンも元々はボツにする予定なのでしたが、雨のシーンと合致してしまったので入れた所存です。
そもそも、こういう日常の物をエロく捉えたのかと言うと、某アニメの歯磨きのシーンから悟りを開いてしまって「実はこういうもので快感を得られてしまうのならば全部そうなのでは?」という謎の悟りを開いたんですよ。所謂『セウト』ってやつですね。
今後ニカエルともどもよろしくお願いします。
……本当にごめんなさい(笑)!!!!




