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『フム、他国の勇者とな』
『ああ、俺たちが呼ばれた時には居なかったし、なんつーか、リュートレートで勇者させられてるにしては様子がな』
『まあリュートレート以外にも勇者がおるで、偶然会うこともなくはないじゃろう』
港に到着したカティたちは人目を避けて海沿いを歩きながらガルーダに休憩所で会った勇者ーー桜のことを話していた。
「私がちょっと目を離した隙にそんなことがあるなんてね。どういう運なのよ。普通そうそうないわよ」
リリスは何故か呆れ顔だ。
『ほっほっ、確かに。森に入れば新たなダンジョンを見つけ、馬車で旅をすれば勇者に会うか。なかなか面白い』
「全然面白くないけど」
ただの村人としてなんの変哲もない暮らしをしていたカティからすれば、わずか一月ほどの間にあれこれありすぎてパンクしそうである。
『まあ、しばらくは会うこともないだろ』
「そうね。勇者が確認されているのはリュートレート以外だとゴルディアとエルジャ。あと南の大陸にあるサザンヒルスだったかしら?ゴルディアの勇者は『剣鬼』と『黄昏の魔女』の二人だけど、『剣鬼』は男だし、『黄昏の魔女』はお婆さんだし。この付近にいたんならリュートレートの偵察あたりだろうし。だとしたらエルジャかしら?」
「エルジャの勇者がペルージに?」
「戦争中のリュートレートに直接入るのはさすがに難しいでしょうからね。通常ならエルジャからペルージに入ろうとしたらリュートレートを間に挟む形になるけど、勇者なら山越えも可能でしょう」
ペルージとエルジャの間には北にある山岳地帯を挟む形になる。
それでも勇者のステータスとエルジャの魔導技術ならできるだろう、とリリスは言って、
「確認されていない他の国の勇者って可能性もあるけどね」
そう付け足した。
「そんなに勇者がたくさんいるとはね」
「勇者はステータスが高かったり特殊なスキルを得たりすることが多いから、どこも欲しがるのよ」
肩を竦めながらリリスが言うのに、カティは苦笑する。
召喚の方法は一つではなく、リュートレートのように自国民を犠牲にするようなやり方はあまり取られない。
そのことはガルーダから聞かされたものの、やはりそう頻繁に召喚が行われているというのは複雑な気持ちになる。
「桜が戦争に巻き込まれないといいけど・・・」
ほんの少し話しただけだが、ごく普通の素直な女の子に見えた。
『だな』
佑樹もまた頭の中で頷く。
「必ずしも戦争のために勇者召喚するわけじゃないから。あんまり考えすぎるんじゃないの」
こつん、とリリスはカティの頭を軽く叩いて先に立って歩いて行く。
前を二人と一匹で歩いていたフラウたちに追い付くと、「もう少し先に行ったらひとまずご飯にしましょ」と声をかけていた。
『まるで自分が作るみたいな言いざまだな』
佑樹の言葉にカティは「ホント」と苦笑いした。




