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「・・・わあ!」
「ふおおーなのですー」
「モフフー?」
町の外れ。
乗り合いや貸し切りの馬車がいくつも並ぶ発着所で、カティたちは一頭の地竜を前にしていた。
地竜とは呼ばれているが、実際にはカバ大トカゲという種族の一種である。
その巨体と遠目に見ると地竜に似たシルエットをしていることから、地竜と呼ばれている。
本物の地竜が生息している地域ではさすがにややこしくなるので呼ばないのであろうが。地竜の生息するのはもっと南の大陸にある砂漠地帯だけなのでこの辺りでは地竜といえばカバ大トカゲをいう。
二メートルほどのトカゲの身体にカバそっくりの顔。
性格は非常に穏やかで、馬よりも脚は遅いが力が強く体力がある。
「ナバルの港までならコイツで二日。代金は一人金貨三枚で途中に休憩所が二ヶ所、町が一つあるが町に寄るかはそっちの自由だ。町に寄る場合は指定の宿があって追加で銀貨三枚ずつ。王都に行くならいったんナバルの港に行って、そこから歩いて行ってくれ。検問のせいで直接は馬車だと入れないからな。まあすぐだから一時間もかからんし、街道はしっかり警備されてて安全だよ」
「わかったわ」
傍らで御者の説明にリリスが頷いている。
「この馬車で行くわよ」
「はいですー」
「はーい」
「フモー」
「了解」
この辺りの旅の道程はリリスに丸投げだ。
まともに旅をしたことがあるのがリリス一人というのもあるし、カティとしては自分のせいで森を抜けるのが予定より遅れたという引け目もある。
言われるがままである。
「すぐ出れるかしら?」
「そりゃこっちはいつでも準備万端だからね。だが、お前さんたち荷物は他にないのかい?」
カティたちは皆ほぼ手ぶら。
荷物といえばカティが肩に負った鞄とリリスの腰のポーチくらいである。
後はカティの腰とフラウが背に負った剣のみ。
「アイテムボックス持ちだから」
「そりゃ羨ましいな!なら乗りな」
「さあ仕事だ。頼むぞ」御者はそう言って地竜の身体を軽く叩くとさっさと御者席に乗り込んでいった。
『おお、フットワーク軽いなー』
佑樹が感心した風に言うのを聞きながらカティはフラウたちを促して馬車に乗り込んだ。
馬車の中は両側がどちらも座椅子になっていて、これに転がって寝ることもできるようだ。少し高い位置に開いた窓にさっそくフラウとクリスがかぶり付くように突進している。
落ち着く暇もなくガタガタと動き出した馬車に、カティは慌てて座椅子に腰を下ろした。




