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寝る前にステータスの確認をする予定だったのだが、死にかけた上に半日歩きづめだった身体は宿のボロいベットに腰かけた途端倒れ込むように意識を放した。
目が覚めた時にはすでに昼を回っていて、起きるなり腹がぐーっと鳴った。
(『腹へったー』)
どういった原理なのかよくわからないが、カティが眠っている間は佑樹の意識も眠っているらしい。
宿の食堂で軽く昼飯を済ませ、街に出る。
今日はいくつかの店を回る予定だ。
旅に必要な保存食に武器や防具。回復アイテムも王宮でもらった分だけでは心もとない。
本来の予定では今日中に王都を出るはずだったが、寝坊した為に次の町に向かう乗り合い馬車に間に合いそうになく、もう一晩昨日の宿に泊まって明日朝のうちに出ることにした。
追っ手も2、3日は勇者の対応等に忙しくてないだろうと判断した。とはいえ早めに出て行くに越したことはないだろうが。
馬車がなければ歩きになる。
王都を囲む外壁の外は街道といえど魔物が出る。
この先旅を続ければ魔物との戦闘は避けられないとはいえ、避けられる分は避けたい。
さすがは王都なだけはあって外れであっても街はそれなりに活気があり店や人も多い。
ただ孤児らしい薄汚れた格好の子供が道の端に座り込んでいたり、昼間から酒を飲んで荒れているおっさんなんかもいる。
「また値上がりかよ!」
「仕方ないじゃないか。相変わらず作物は取れないし、その上少ない収穫もほとんど国が戦争の備蓄だって持っていってるんだから」
とある八百屋の前では店のオヤジと客が言い荒らそっていた。
『やっぱこの国最悪だなー』
佑樹が言うのに頭の中で頷きながら、カティは適当な服屋に入った。
村を出てからずっと着たままの服は薄汚れ所々破けている。
村で畑を耕す日々には問題なかったが、旅をするには向かないだろう。
馬車に乗るにもこの先宿に泊まるにもあまりにボロい格好だと断られる可能性がある。
小汚ない格好をした子供が馬車や宿を利用できる金を持っているというのも不自然だろうし。
とりあえず旅人らしい格好をと麻のシャツとズボン、灰色のフード付きの上着、皮のブーツを買って着ていた服や靴は店に頼んで捨てておいてもらう。
着替えに二枚同じ麻のシャツを買うと全部で金貨一枚と銀貨二枚だったのを金貨一枚にオマケしてくれた。
王宮でもらった袋から金貨一枚を支払う。
袋の中身はもともと金貨十枚と銀貨二十枚だったから、今夜の宿の支払いを引いてあと金貨9枚と銀貨が十四枚が残っている。
カティにとってこれまでの生涯でダントツにお金を使った買い物の後は、また買い物である。
(いくらもらったお金があるっていっても、こんなに使って大丈夫なのか?)
『ヘーキヘーキ。考えはあるから』
すでに買い物しすぎてくらくらするカティと比べて佑樹はまだまだ買う気だ。
靴だってもっと安い布地の物をカティは見ていたし、着替えもなしで洗濯して着ればいいと思っていた。
結局は『絶対あった方がいいって!』と言い張る佑樹に押しきられたけれど。
その後も武器屋に道具屋、八百屋に肉屋、パン屋と回り回って宿に戻ったのはすでに日も暮れ果てた頃だった。