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遅くなりましたー。
女神さま~が思いの外時間がかかりました。
今日はこのあと女神さま~を追加で投稿する予定。がんばります。
ザザザ、と草を掻き分ける音が四方から迫ってくる。
「来るわよ!」
ダンジョンから10日ほど移動した森の中。
あと一日も飛べば森を抜け次の町へ着くといった位置でカティたちは魔物に囲まれていた。
カティのために短いスパンでこまめに休息を取っていたのでダンジョンからここまでは休息時に襲ってきた魔物以外相手にすることなくやってきたが、いよいよあと一日で次の町ということで、今日は一日積極的に魔物を狩りカティとリリスの従魔たちのレベル上げを行っている。
その中にはダンジョンで見つけた卵から孵った水竜の赤子、クリスもまじっていた。
人間の少女の姿で先ほどから水魔法を連発している。
クリスという名は皆で相談して本人にも選んでもらった結果、佑樹が発案したギリシャ語で澄みきった水、という意味のクリスタロスからとったものだ。
クリスは初めて見たカティを親と思い込んでいた。
散々説明してなんとか親でないことは理解したようだが、すっかりなついてカティたちについてきた。
いつの間にかステータスにカティの配下、という記載までされていて、本人もすっかりその気だ。
現在は一時的にリリスのテイムを受け入れリリスの従魔となっている。コロシアムが終わるまでの仮契約ということらしい。
「さあ、行きなさい!」
リリスの命令とともにその隣に控えていたキラーパンサーが牙を剥いて駆け出す。
とほぼ同時に草木が揺れ藪の中から二匹の巨大なウサギが飛び出してきた。
カティも近付いてくる足音に身を引き締める。
ガサリといっそう大きな音を立ててすぐそばの藪が揺れて、先に一匹、遅れて二匹のウサギーアルミラージが現れる。
その後ろにはアルミラージたちを追い立ててきたリリスの従魔の一匹、シルバーウルフの姿が少し離れて見えた。
ここは周りを藪に囲まれた窪地だ。
効率的に魔物を狩りレベル上げを行うためにブルーに開いた場所を探してもらい、リリスの従魔たちに付近の魔物を誘き寄せ、あるいは追い立ててきたもらい、この場で主にカティ、キラーパンサー、クリスで仕止める計画であり、すでに仕止めた数は20を超える。
一定数を倒すたびに手早く解体、アイテムボックスに回収している。
視線の隅でキラーパンサーがアルミラージの一匹を喉元の一噛みで仕止めたのが見える。
カティはクリスと協力しての戦闘となっていて、三匹がすべて姿を現したところでまずクリスが動いた。
「溺れちゃえー!」
クリスが腕を前に突き出すと迫っていたアルミラージの頭の前にちょうど頭がすっぽり収まる大きさの水の塊が現れた。
飛びかかろうと前に動いていたアルミラージは勢いを止められずに塊に頭を突っ込ませ、ごぼごぼと泡を立てる。
アルミラージが暴れても水の塊は頭から離れず三匹ともに窒息して苦しげに地に落ちた。
「『切り裂け!』」
苦しむアルミラージの首をカティがカマイタチで両断する。
その間に別の一匹が出て来ていたがそれもキラーパンサーがまとめて倒していた。
キラーパンサーのレベルは今日だけで3上がっているようだが、まだ上がりそうな気配である。
『負けてんぞー』
頭の中で佑樹の声が響く。
「ご主人さまー!クーちゃん頑張るのですー!」
「フオー!」
背後でリリスとともにおやつの果実を頬張りながらフラウが応援を寄越すのにカティは軽く手を上げて答えた。
「次!来るわよ!」
リリスの声が息つく暇もなく次の戦闘を知らせた。




