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『おお、ギルドで絡まれるとかテンプレじゃん』
何故か嬉しそうに言う佑樹。
カティは一旦ギルドから出た方がいいかと扉に目を向けて、ちょうど入ってきたリリスに気づいた。
「おい、聞いてんのか?ガキが。近頃お前らみたいな身の程知らずのエセ冒険者が多くてこっちは迷惑してんだよ」
「・・・どこ見てんのよ」
だんだんヒートアップする冒険者をキレイに無視して、リリスはカティに声をかけてきた。
「え?いや、クエストの依頼を・・・」
「ここD級とかC級のクエストじゃない。こんなの受けないわよ」
「あ?なんだ?」
「最低でもB級クエストにしましょうよ。あたしがいればA級でもちょうどいいくらいだわ」
「おいおいなんだ嬢ちゃん。コイツらの連れか?ガキの次は小娘かよ」
ちっ!と舌打ちする冒険者にリリスは冷たい視線を向ける。
だがとくに何を言うではなく、カティの腕を取り「とりあえず受付でパーティー申請するわよ」とカウンターの前にできた列の一つに引きずった。
「っ!てめえっ!」
無視されっぱなしの冒険者がリリスに詰め寄ろうとするのを、連れの冒険者の一人が止める。
リリスがA級冒険者だと知っているのだろう、その顔は蒼白になっており、止める為に冒険者の肩に置かれた手は震えている。
「よせって」
「ああ、なんだてめえ」
「馬鹿!あの女A級だぞ!」
ギルド内はあちこちざわついてその視線のほとんどがリリスに向けられている。
A級冒険者というだけでもその町に一人いるかどうか。
その上リリスの見た目はごく普通の可愛らしい少女で、こうして騒がれるのには馴れているのだろう。
リリスはギルドじゅうの喧騒を横目に静かに例に並んでいる。
「お待たせしました。本日はどういったご用件でしょうか?」
受付嬢も仕事柄顔には出さないが、微妙に目が泳いでいる。
「パーティー申請とドロップアイテムの換金、それと手頃なB級あたりの討伐クエストがあれば受けたいんだけど」
リリスが言うのに受付嬢は一つ頷いてカウンターの引き出しから何枚かの羊皮紙を取り出した。
「ではまずパーティー申請からお受けします。パーティーメンバー様のギルドガードをお預かりしてよろしいですか?」
リリスは頷いて銀色のカードをカウンターに置いた。
ギルドカードはランクによって色が違う。
FランクからDランクまでは青。ランクが一つ上がる度に黒いラインが一本ずつ増えていく。
Cランクが緑、Bランクが赤、Aランクが銀でSランクが金。
SSだと金に銀のラインが加わる。
続いて出したカティの青いギルドカードに、受付嬢の笑顔がひきつる。
無理はない。
A級とF級でパーティーを組むなどまずあり得ないから。
「ええと、こちらの二人でパーティー申請するということでよろしいですね。こちらのパーティーですとリリスさんがA級ですのでA級のクエストまで受けることができます。こちらに代表の方のサインをお願いします」
当然ながら受付嬢が羊皮紙を出したのはリリスに向けて。
だがリリスはカティに書くように促した。
「え?俺?」
「当たり前でしょ。リーダーはそっちなんだから」
「う・・・ん」
カティたちの会話を聞いた受付嬢が驚愕に「は?」と声を上げるのに居心地の悪さを感じつつ、羊皮紙にサインする。
「あ、ありがとうございます。では続いてドロップアイテムの換金に入らせて頂きます」
もはや完全にひきつった笑顔の受付嬢に、カティはアイテムボックスから鞄に移していたドロップアイテムを渡した。
「はい、魔石が13・・・え?」
「あ、すいませんダンジョンボス討伐しちゃったんです」
「はあ、ダンジョンボスを・・・。すみません、少しお待ち頂けますか?」
受付嬢はバタバタと奥へ入っていき、入れ替わりに何人ものギルド職員がフロアに出てくる。
手には『ダンジョンボス討伐につき現在ボス不在』とでかでか書かれた貼り紙を持っている。
ギルド内のあちこちに貼り出されるそれに冒険者たちが殺到していた。
「すみませんお待たせしました。では改めて確認させていただきます」
そう言ってドロップアイテムを手に取る受付嬢の後ろからは、何人ものギルド職員の顔が覗いていた。




