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「カティさん、昨夜は・・・」
朝食を取りに食堂へ降りたカティにパタパタと走り寄ってきたミリーに苦笑しながら「大丈夫でしたから」と手で制す。
「良かった。やっぱり案内断わった方が良かったかなって気になってたんです。なんだかあの人すごく強引な感じだったから」
「ハハちょっと話があっただけなんで、心配かけてすみません。あ、今日は晩御飯はいらないかも」
「わかりました。だったら代わりにお昼にお弁当要りませんか?夕食代は込みになってるんですけど食べなくても返金は出来ないので、代わりに」
宿代には朝と夜二食分が含まれている。
ただし食べるかどうかは客の自由だし、最初から食べなくても返金がないのはわかっている。
なので、この提案はミリーなりの昨夜の詫びのつもりなのかもしれない。
「ありがとう。すごく助かるけど手間じゃないのかな?」
「お昼にお弁当頼む人も多いから大丈夫です。じゃあすぐに用意しますね」
にこっと笑いながらミリーは厨房の奥に消えて行った。
入れ替わるように女将さんがパンとスープ、フラウの分には牛乳も乗ったトレーを運んでくる。
「悪いね騒がしい娘で。うちのお客さんは冒険者ばっかりだから同じ年頃の人は少なくって、嬉しいんだよ」
ミリーの母親らしくメロンが二つ並んだような胸を揺らして笑う女将さんに、いつもながら目のやり場に困る。
この世界にはブラジャーがないので、二つのぼっちがエプロンごしにうっすらわかってしまうのだ。
朝食を終えるとすぐにカティたちは町を出た。
イブラムのギルドでリリスと待ち合わせをしている。
ダンジョンで討伐した魔物のドロップアイテムを換金するのと正式なパーティー申請を行う為だ。
冒険者同士がパーティーを組む場合、ギルドの申請が必要になる。その代わり一番高いランクの冒険者を基準にクエストが受けられるので、 カティたちでもAランクの依頼が受けられるのだ。
さすがにいきなりAランクの依頼を受けるつもりはないが。
それ以外にもカティたちには利点がある。
たとえばフラウが討伐したダンジョンボスの魔石。
カティたちだけで換金すれば怪しさ満足だが、リリスがいれば周りは勝手にリリスが討伐したものと納得するだろう。
「まだ来てないみたいだな」
朝のギルド内にはクエスト依頼を探しにきた冒険者たちで溢れ返っていたが、その中にリリスの姿はまだなかった。
カティたちはぶらぶらと壁のクエスト依頼を眺めながら待つことにする。
しばらくはパーティーに馴れる為とカティのレベル上げの為にこの付近でクエストをこなしていくことになっている。
ひとまずはD級かC級のクエストが妥当かと、それらの依頼を中心に見て行った。
D級やC級になるとそれまでのランクに多い薬草採集や町の雑用的な依頼は減って魔物の討伐依頼がメインになるようだ。
ゴブリンの群れの討伐とか、近くの村で見かけられたオークの確認と討伐とか。
確認依頼のものはまず確認のみで依頼達成となり、可能なら討伐となり依頼料が上乗せされる。
中にはダンジョン内の魔物のドロップアイテムの依頼もあるが、できればダンジョンは避けたい。
「おいおい坊主、見るとこ間違えてるだろう」
背後からかけられた笑い含みの声にカティは振り返った。
「ってか子供ばっかりじゃないか。お前らの受けられるような依頼はないんじゃないか?」
朝から赤ら顔をした男が言うのに、連れらしい冒険者たちがどっと笑う。
「ガキはお家でママの乳でも吸ってろ。目障りだ」




