43
ばさりと一度羽ばたいた鳥はそっとリリスの右肩にとまった。
『わしはガルーダ。故あってこのリリスを少々手助けしておる』
「はあ」
間抜けた返事だが、正直他に言葉が出ないので勘弁して欲しい。
(本物かな?)
『だとしたらいったいどんだけ長生きなんだか』
神鳥ガルーダといえばこの世界の子供が寝物語に聞かされるお伽噺の存在である。
3000年程前に真実あったとされる話ではあるのだが、なにせはるか昔の伝説なので、眉唾物だと言われている。
『ん?わしか?わしはかれこれ5000年程は生きておるな』
佑樹の声が聞こえたかのようにガルーダが答える。
「・・・ちょっと待って、ガルーダあなたさっき勇者って言った?」
今気づいたという顔でリリスが割り込む。
そういえば、とカティたちも顔を強ばらせた。
カティたちのステータスは常に偽装されている。
たとえ鑑定されても見えるステータスは元々カティが持っていたものと魔法だけで、称号も村人となっているはずだ。
だが、先程ガルーダは確かに異世界の勇者たち、と言った。
ガルーダの出現に気を取られて聞き流してしまっていたが。
『む?言うておらんかったか』
聞いてないわよ!とリリスが抗議しているが、カティたちはそれどころではなかった。
偽装が不十分だったのか、あるいは自身より高いレベル相手には効かないものなのか。だとすればカティよりレベルの高い冒険者等それこそ山のようにいるわけで。
『かっかっかっ、心配はいらんよ。なまじな者にはその偽装は破れん。そもそも鑑定のスキル自体が稀だしの。わしはガルーダ、風を従えるものにして全てを見通すもの。わしの眼にはどのような偽装も隠蔽も効かんのじゃ』
またもカティたちの考えを読んだように言う。
「・・・はあ」
良かった、のだろうか?
「ちょっと待って!本物にあなた異世界の勇者なの?」
「えっと、まあ」
「ご主人さまはゆうしゃなのですー」
『かっかっかっ!わしもこのような珍しい例は始めて見たわい』
「・・・そうは見えないけど」
『うむ、すまぬがリリスにステータスを見せてやってはくれんか?』
(どうする?)
『まだパーティー組むとも決めてないしなー』
ガルーダが散々ばらしてくれているので今更ではあるが。
『フム。それもそうかも知れんの』
ガルーダの声は直接カティの頭に響いた。
『ちょいとお邪魔するぞ』
『あんた俺の声も聞こえてるのか?』
『フム、すまんの。ちーと聞かせてもらっておる。ふだんはせんのじゃよ?ぷらいばしーは大事じゃからの。まあ、年を取ると色々出来るようになるということじゃ』
カカカという高笑いが頭に響く。
声は低く、ダンディーとでもいう感じなのだが、笑い方はじじいだ。
『これ、他人をじじい呼ばわりはいかんぞ』
『で?じいさんはなんであのお嬢さんを俺らのパーティーに入れたいんだ?』
『まあよいか。近頃の若いもんはまったく。・・・実はのう』
後半はリリスにも聞こえるように、ガルーダは口を開いた。




