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イブラムの町のギルドはこれまで見たどの町のものよりも大きくて立派だった。
リューレルートの王都のギルドよりも立派というのは驚きだ。
国力の差なのか、ギルドや冒険者に対する扱いの差なのか。
ギルドや冒険者は基本どの国にも属さない。
代わりにどの国にも支部があるし、どの国の政治にも関わらない。例えば他国との戦争の際にも例えその国に拠点を持っていても徴兵は出来ない。傭兵を雇うように依頼をして金で冒険者を雇うことは出来るが、強制は出来ないのだ。
ギルドそのものに関しては完全な中立。
決してどの国の陣営にも属さない。
そのことによってその国の支部が危険に晒されるとしても。
百年以上に渡りそれを貫いてきたからこそ、ギルドはどの種族のどの国にも同じく存在する。
『あの王なら面白くないとか思ってそうだよな』
自国に居を持ちながらあくまでも中立を貫くギルドのやり方に不満を持って、粗雑な扱いをしているというのはあるかも知れない。
ギルドにいくら金があっても、結局土地を貸し出すのは国だ。
ギルドの中はこれまでと同じで入った正面にカウンター、壁には一面にクエストの依頼状が張り付けられている。
違うのはカウンターの数。
あと、職員と訪れている冒険者の数。
カティたちは受付と書かれたカウンターへと向かうが、周りの冒険者や職員の視線が痛い。
年よりも幼く見える少年に成り立てといった感のカティと、幼児であるフラウの二人連れである。
そりゃあ場違いなことこの上ないだろう。
フラウは宿で留守番してもらうことも考えたのだが、本人がどうにもカティから離れたがらないもので連れてきたのだが。
(やっぱりフラウには留守番しててもらった方が良かったかな)
〈イヤです!〉
思わず本音が漏れた途端ぎゅーっと足をつねられた。
「『・・・っ~!』」
加減は当然しているはずだが(してくれなければ肉が削がれかねない)それでも子供にはあり得ない力に、カティたちは悲鳴を押し殺して慌てて謝る。
冒険者登録はほんの10分程で済んだ。
文字が書けないため口頭で簡単な質問に答え、ギルドでの依頼の受け方やランクについての説明を受ける。
ランクは下からFからSSまで。
ランクによって受けられる依頼に差があり、当然ランクが高い程難しい依頼が割り当てられるがその分報酬もいい。
もちろんカティはランクFで登録された。
依頼をこなしたり魔物を討伐するとポイントが貯まり、ランクが上がっていく仕組みだ。
登録が終了するとギルドカードと呼ばれるものに血を垂らすのだが、それには特殊な魔方陣が組み込まれているらしく、カードの所持者が魔物を討伐すると自動的にその分だけポイントが加算される。
ギルドカードを持っていると国の行き来はすべて自由となり、ランクがC以上のカードなら関所の通行料が免除されたりする事もあるらしい。
登録料として銀貨5枚を支払い、貰いたてのギルドカードを大事にしまってギルドを出た。
『無くさないようにしないとな』
(本当だよ)
ギルドカードは所持者の血を垂らすことで他人には使用出来ないようになっているので無くしたからといっと誰かに悪用される心配はないが、再発行には金貨2枚も取られるのだ。
が、これでカティも冒険者の仲間入りである。
薬草等の買取も手数料を取られずにすむし、魔物を討伐したらそれもギルドで買い取って貰うこともできる。
クエストも受けることができるので、お金の心配がかなり減る。
中でもクエストの依頼の為であれば関所の通行料が半額になるというのが大きい。
旅を続けるのなら通行料は結構な出費になるから。
『じゃ、登録も無事済んだし、ヤルジの町に戻るか』
「ダンジョン!ダンジョンですー!」
「いや、今日はもう・・・」
『何言ってんだ!まだまだ一日は長いぜ!』
「フラウも早く行ってみたいです!」
ぐいぐい繋いだ手を引っ張られて、肩が抜けそうだ。
「痛い痛い痛い!分かったから行くから!」
「大丈夫ですよぅ。ご主人のことはフラウが守りますです」
情けないが、実際そういうことになるのだろう。
見た目推定5才児に守られる冒険者って・・・。
「よろしくお願いします」
いつか逆になる時はくるのだろうか。
『ムリかもなぁ。もともとのレベルが違うし』
佑樹の言葉に少し視界が歪んだ。
「ご主人さま?泣いてるですか?」
「泣いてないよ。ちょっとホコリが入っただけ」
そうホコリ。ホコリのせいだよ、きっと。
カティは涙に滲んだ目をこすりながら自分に言い訳した。




