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翌日探し当てたヤルジの町のギルドはクエストの依頼、受諾、買取り等は行っているが、冒険者登録は行っていないとのことだった。
ヤルジの町自体がもともとダンジョンへと向かう冒険者がその前後に一息着く休憩場所のような立ち位置だったらしい。
宿の主人に聞いて知ったのだが、ヤルジから西に30分もしない場所に5階層までしかない小さなダンジョンがあるそうなのだ。
街道沿いの開けた場所に冒険者たちが天幕を張って集まっていたのを、商魂逞しい商人たちがその冒険者たちに売り付ける商品を持って集まった。
ちょうどリューレルートの国境からペルージの王都へと抜ける街道沿いということもあり、その数はあっという間に増え、ただの開けた原っぱだった場所がいつしか小さな町になった。
それが[ヤルジの町]だ。
町長もいなければ役所もない。
二時間程進んだ場所にイブラムという町がもとからあったこともあり、ギルドもあくまで簡易的な業務のみを行っているらしく、登録はイブラムの町で行ってほしいということだった。
『ダンジョンだってよ!ダンジョン!』
「魔物がいっぱいいるでしょうか?行ってみたいですー」
「いや、ダンジョンはちょっと」
佑樹は明らかにテンションがあがっているし、フラウは・・・ちょっと怖い。
何故、魔物がいっぱいで嬉しそうなのか・・・。
(ってか行こうとか思ってないよな?)
『何言ってんだ。行くに決まってんだろ?』
〈フラウも行きます!〉
(・・・いやいや)
無茶苦茶だ。
この二人はなんなんだか、とカティは頭を抱えた。
「俺、まだレベル4とかなんだけど」
ダンジョンとは地中の魔力濃度が高い場所に稀に造り出される地下迷宮であり、魔物の巣窟。
まだ冒険者にもなっていない、ましてレベル4の村人が入るべきところではない。
絶対にない!
『フラウはレベル52だぜ?』
「う・・・ででもまだ生まれたてだし。経験も足りてないし」
『だからいい経験になるんじゃないか。5階層だっていうし、ダンジョンってのは階層が深い程魔物の強さも上がるんだろ?5階層ならちょうどいいんじゃね?それにそろそろスキル強奪も試してみたいしな。どうせならフラウにいいスキル持たしてやりたいし』
それ実際試すの俺なんですけど!?カティの心の叫びは二人には聞こえていたはずだが、綺麗にスルーされた。
『とりあえず先にイブラムの町へ行って冒険者登録しとくか』
「フラウもするですか?」
『フラウはぁ、どうすっかな?』
「いや、ムリだろ」
なんと言っても見た目幼女だし。
実際卵が孵ったのだってつい先日だ。
そう思って、カティはあれ?っと首を傾げた。
(フラウはなんでダンジョンとか知ってるんだ?)
カティの疑問にフラウはんー、と口をへの字にして軽く目を反らしてから、また向き直ると。
「ナイショです」
そう言ってイタズラっぽく笑った。




