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 時間が中途半端だからだろう、ギルドのなかは二組の集団しかいなかった。

 ちなみにただ今の時刻は地球でいう午後2時すぎ。

 昨日朝に来た時は結構な人がいたことからして、ギルドは朝クエストを受けに来る冒険者や護衛やクエストの依頼で訪れた人で溢れ、また夕刻になると今度はクエスト達成の報告や確認に来る人で溢れるのだろう。

 ちょうど今の時間はギルド職員からしたら骨休めの時間帯と言ったところか。


 昨夜は部屋の真ん中に鎮座する卵がどうにも気になってなかなかベットに入っても眠れなかった。

 アイテムボックスに閉まっておけばいいと思いついたのは明け方近くなってから。

 ようやく眠って次に起きたのはすでに昼をまわった頃。


「あのー、すみません」


 カウンターには誰もいなくて、奥で人の動く気配がしている。


「はいはーい、ごめんなさいお待たせしましたー」


 慌ててカウンターに出てくるお姉さん(熟女)は昨日と同じ人だ。

 って口の端にパン屑付いてますけど。

 食事中だったらしい。


「お待たせしました。今日はどういったご用件でしょう」


 言ってから口元に違和感を感じたらしい、さりげなく手で口元を拭って、ちょっと赤くなった。


「ぁー、えっと、ペルージまでの護衛を雇いたいんですが」

「護衛ですか・・・」


 何故か要件を聞いたお姉さんの顔が曇る。

 というか、困り顔、か?


「・・・申し訳ありません。只今護衛依頼は最短で一週間待ちとなっております」

「一週間、ですか?」

「ええ、このところ護衛依頼が非常に多くて。冒険者のほとんどはすでに出払ってるんです。残った人たちもすでに依頼を受けてしまっていて・・・。それにその、護衛に出たままこちらに戻らない冒険者もいるので、もしかしたらもっとかかるかも・・・」


 申し訳ありません。と頭を下げるお姉さん。

 いや、お姉さんのせいではないのだが、ギルドにクレームを付ける人間も多いのかも知れない。

 ずいぶん低姿勢だ。


「いや、仕方ないので。けどできるだけ早い方がいいんですけど、誰かペルージに向かう人で同行させてもらえそうな人を紹介とか、ムリですか?お金はなんとか少しなら多めに払えると思います。俺一人なんですけど」

「そう・・・ですね。一応調べてみますが、正直今はそういった方も多いもので、難しいと思います」


『こりゃー厳しいかもな。どんだけ逃げ出してんだよこの国』


 そう言いつつ少し嬉しそうな声音にカティはううんと悩んだ。

 これは危険だ。

 このままではせっかく回避したはずの護衛なしの道行きに進まざるを得ない。

 流石に一週間以上この国に残るのはマズイだろう。

 いつ気の変わった王宮の追っ手が来ないとも限らないのだから。


「なんだボウズ、ずいぶんしけた面してんな」

「ドズさん」


 いきなり後ろから声をかけてきた男はギルドのお姉さんいわく「ドズさん」というらしい。

 大きめの鞄をどすんとカウンターに乗せて、「よう、レナちゃんこれから出るんで報告に来たぜ」とカティを押し退けるように前に出るとお姉さんに羊皮紙を渡した。


「あ、はい。ゴルドンさんの護衛の件ですね。・・・ドズさんももうこちらには戻らないんですよね」


 もはやいないものとして扱われている気がするが、お姉さん、レナさんは残念そうに羊皮紙に顔を落とす。


「ああ、ずいぶんこの国はキナ臭くなってきてるからな。近いうちにでかい戦を仕掛ける気だって噂もある。レナちゃんも早めに出といた方がいい」

「・・・はい」


 すっかりしょんぼりしてしまったレナさん。


(ええと、どうしようか・・・)

『よろしくお願いしまーすって言って帰ったらいんじゃね?』


 確かに、このままここに残っていても仕方がない。

 カティはお姉さんに一言声をかけて出ることにした。


「あの、同行の件よろしくお願いします。明日また来ます」

「あっ、はい!すみませんっ、そうだ!」


 ちょっと待って下さい。とお姉さん。


「ドズさん。ゴルドンさんにあと一人同行をお願いできないですか?こちらの方なんですが」

「んー?ボウズ一人か?」

「はい。お一人です。同行させてもらえる方を探していて。でも正直難しいんです」

「まー、今はそうだろうな」


 チャンスだ!とカティは勢いこんで「お願いします!」とドズさんに頭を下げた。

 これはまさしく護衛なし回避のラストチャンスだろう。


「ま、一人なら大丈夫じゃないか?ゴルドンの旦那は人がいいからな。子供が一人で旅してるって言ったら、向こうから危ないからいっしょに来いっていうだろ。そういう旦那だ。だが出るのはすぐだぞ?大丈夫か?」

「大丈夫です!あ、宿に荷物だけ取りに行って大丈夫ですか?」


 ワハハとドズは豪快に笑ってカティの肩を叩いた。

 ちょっと痛い。


「別にそのくらいの時間はあるさ。出発は一時間後だから、そうだな20分前までに銀の小鹿亭って宿に来てくれ。町の中心部にあるでかい宿だ」


 銀の小鹿亭、とカティは頭の中で繰返した。


「はい!ありがとうございます。よろしくお願いします」


 カウンターのお姉さんにも礼を言って頭を下げる。


『ちっ、ラッキーだったな』

(ホント、助かったよ)


 舌打ちは気づかなかったフリをして、何度も頭を下げながらギルドを後にして宿に走った。




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