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【旧版】魔法の世界でテロリズム【更新停止】  作者: 雛星のえ
第2章 / 危険な依頼人?
9/60

9話:依頼人は話が通じないらしい

「やーっほー。帰ったよー?」

 テロリストアジトに到着、リビングのドアを開ければ、そこにはソファに座り、足を組んで待機していた岳と。白い髪の、ツインテールの見慣れない後ろ姿。十中八九、後者が依頼人なのだろう。

「お帰り。こっち来て」

 岳に促され、彼の隣へと腰掛ける。そして、依頼人の顔を見て――僕は驚愕した。


 ツインテールにされた艶やかな白髪は、下の方でクルクルふわふわと巻かれている。お人形のような淡い青の瞳に、端整な顔立ち。

 凄い美少女が来たもんだ……しかも、座り方とか綺麗だし。お嬢様を彷彿とさせる。いなぁいいなぁ、僕もそんな美少女に生まれたかったなー。

 彼女の傍にはこれまたよく似合う、白いレースをあしらった傘が立てかけられている。 そこでふと、疑問を抱く。何で岳、傘立て使わせてあげなかったの!? そしてなにより、今日、雨降るって言ってたっけ……?

 

 ――ガッ。その時、勢いよく肘が腹にのめり込んだ。

「うぐッ」

「ちゃんと説明して」

 そっと耳打ちをしてくる岳。どうやら自分は説明する気はなく、僕に任せるようだ。

 ……わかりましたよーう。唇をとがらせて、不満を表す。

 だけど、依頼人の前でこんな顔はダメだ。少々ムカつくけど、ニッコリと笑顔を作って。

「えっと、ごめんなさい。ようこそ何でも屋、“テロリスト”へ! ここはお客様の依頼を引き受け、それを僕たちが解決するってところです。物の修理、怪物討伐、ボランティア、殺人や復讐などなど! なんでもお申し付け下さいッ!」

「後半物騒だよ……」

 あ、あれ? 岳に言われて気づいたけど、確かにそうかもしれない。でも何でも屋なんだからさ、何でもするんだよ、うん。

 当の依頼人とはいうと、脚を綺麗に閉じて、その間に手を入れ、何やらもじもじしたような格好をしていた。

 あ、あれ……もしかして、退かれちゃったかな……? 若干不安になるんですが。


「……あの、すいません。ここって、何してるんですか?」

 可愛らしい、高い声。見た目と非常にマッチしており、聞いた人をうっとりさせるような声。

 僕も実際、一瞬心を奪われていたが、彼女の言ったことを理解し、それはツッコミへと変化した。

 え、ちょっと待って!? 今この子なんて言ったの!? 聞き間違いじゃなけりゃ、「何してるんですか」って言ってたような。それを認めたくはなかったけど……確かに彼女はそういった。

 う、嘘でしょ……? さっきの、説明のつもりだったのに……もしかして、伝わらなかったの……?

 それなら、もう一度説明するまで!


「え、えっと。ここは何でも屋で、依頼主のどんなお願いも頑張って叶えていきます。依頼料は、要相談になります。1人では解決できないことなどなど、何でもお申し付け下さい!」

「何してるんですか?」

 しかし、そんな努力も虚しく、再び同じ言葉を繰り返される。しかも、真顔で。

 ……通じてない! まるで通じてない! 一体、何がダメだって言うの!? 内容が? もっと具体的に言った方が通じるのかな?

「えっと……その人の願望に沿った仕事をしているので、具体的にこれと言ったことはないのですが。依頼人が満足できるような仕事をしています。以前は、くまのぬいぐるみを修理しましたよ」

「へぇ……そうなんですか」


 その言葉を聞いて、安心する。ああー……やっと理解してくれたようだ。何度も説明した甲斐があったよ。

「本当に、ここは何でも叶えてくれるんですか?」

「はいっ! そうですよー!」

 確認の意味を込めてか、再びされた質問に僕は笑顔で答える。

 どんな依頼が来るのかなぁ。内容を考えれば考えるほど、ワクワクが止まらない。

「ふうん……じゃぁ」

 不意に依頼人が俯き、立てかけてあった傘を手にした。そして、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ……――


「危ないッ」

 岳の声が聞こえたかと思うと、視界がぐらりと揺れた。突如として岳が立ち上がり、僕を引っ張ったのだと理解するのに、数秒を要した。

「岳、いきなり何を――って、ふぉッ!?」

 言いかけたとき、目の前を1つの赤い炎が通り抜けた。それも、先ほどまで僕がいたところを。

 もし、岳が助けてくれなかったら、今頃、僕……。考え、サーッと顔が青ざめていく。

 でも一体、どうして炎弾が。考え、ソファに手をつこうとして――手がすり抜けた。

 驚き、辺りを見回す。――景色が変化していた。さっきまでリビングだったはずが、今や青空広がる、草木生い茂る、広大な草原へと変化していた。


「岳、どういうこと……?」

 突然の環境変化についていけず、岳に尋ねる。

「解らない。けど、あの子も魔法使いなんだと思う。地形変化とか……多分、その辺りの」

 岳が解説している間、依頼人は傘から抜刀していた。仕込み傘――そうか、それで。


 鞘の部分を放り捨てると、数十メートル離れたところから刀を突きつけ、ニッコリと微笑んで。


「じゃぁ、お願い叶えて下さいますか? 私と、戦って下さい!」


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