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【旧版】魔法の世界でテロリズム【更新停止】  作者: 雛星のえ
第2章 / 危険な依頼人?
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7話:情報屋の友人

「さようならー」

 とある公立高校、放課後のチャイムと共に響いた、無気力な生徒達の挨拶。それに担任教師が返事をすれば、皆は開放感に満ちあふれたような顔をする。……まぁ、無理もないよね。これで、今日の“学校”と言う名の、不可視の鎖から放たれるのだから。

 僕も例外なく、そのうちの1人。授業は本当退屈で、眠いったらありゃしない。お経のような教師の解説を聞いたって、理解できるわけないじゃないか。伸び、をしながら、くうあ、と欠伸をする。


 とにかく、今日はとっとと帰って寝よう。依頼も、なぎさ君が来て以来、ないし。

 鞄を持って、帰路につこうとするところを、誰かに肩を掴まれ引き留められた。

 ……誰だ、一体。僕の下校を邪魔する不届き者は。不満げに振り返ると、そこには黒髪をショートカットにした少女が、僕の気なんて知らずに、ニッコリ微笑んでいた。

「……瀬音せね? どうしたの?」

 気怠さを含みながら、彼女の名を呼ぶ。僕の友人である少女、舞野まいの瀬音せね

「やぁ。何でも屋を開いたんだってね。どう? 順調かい?」

 そのセリフに、僕は驚いた。彼女の話すのが、これが今日初めてではないが、このことを話題として出したことはない。教えてもないことを知っているなんて。僕は息を吐くと、観念したように首を振った。


「まぁねー。早速昨日、依頼人が来たところだよ。……相変わらず情報早いねー……」

 瀬音は、驚くほど情報通な人物である。生徒間の恋愛事情や人間関係、他クラスでの出来事。はたまた、教師の裏事情までも握っているのだとか。その辺は友人の僕にもよく解らないんだけど。

 そのことから、ついたあだ名が「情報屋」。……まぁあながち、間違いではないでしょ。

 僕が褒めると、瀬音は人差し指を振って、得意げな顔をしながら言った。

「情報屋をなめないことだな。依頼人が早速か? それはよかったじゃないか。とりあえず、出だしは順調ということか」

 ……何で偉そうに言うのさ。そんな僕の気にも触れずに、瀬音は腕を組み続けた。


「つかぬ事を聞くが、依頼が来なかったらどうする気なんだい?」

「そ、その時はその時だよ。ボランティアとかして、地道に僕らの名を広めていくよ」

 似たようなことを岳にも言われたような気がする……と思い返しながら、事前に用意しておいた答えを返す。

「ほぉっ……すっごく地道、だな……」

「し、仕方ないでしょ!? ってか何がそんなに面白いの!? 笑わないでよ!?」

 肩を震わせ、笑っている瀬音を咎める。……だってさ、仕方ないじゃん。それ以外考えつかないんだからさ。だったら、瀬音は何か案があるの!?


 心の中で問ったが、口には出さないでおいた。どうせ、また馬鹿にされるんだろうから。

 暫く笑った瀬音は、深呼吸をする。……にしてもさ、笑いすぎじゃない? 何がそんなに面白いのよ、ねえ。

「そうだ、星夜。実は私も武器屋を開こうと思っていてね。テロリストの開業に合わせね。 どうだ、この際だ。武器の1つや2つは所持したらどうだろう? 星夜の魔法は、戦闘向きではないのだろう?」


 瀬音は友人でありながら、僕が魔法使いであることを知る唯一の人物でもある。

 僕は他の人に、自信が魔法使いであることを話していない。話すとややこしいことなるし、なにより、忌み嫌われるから。

 自身が使える魔法を思い返してみた。……確かに、戦闘向きではない。グットアイディアだ。……え、だけどお願い、一カ所ツッコませて。


「武器屋を開くの!? ……情報屋じゃなくて?」

 情報屋の異名を持つ瀬音なんだから、後者の方が適していると思うんだけど。

「いいところに気がついたな、星夜。今のは、真っ赤な嘘だ」

「ええ!!?」

 驚くと、瀬音はケラケラと笑う。……瀬音はよく、こうやって人をからかうのが大好きなのだ。

「なんだよー……それ」 

 唇をとがらすと、彼女は「ゴメンゴメン」と笑った。


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