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【旧版】魔法の世界でテロリズム【更新停止】  作者: 雛星のえ
第1章  /  魔法使いの何でも屋
5/60

5話:笑顔

 ……可愛い。しして、何よりも嬉しくて。なぎさ君の笑顔に達成感を覚えながら、ニコリと笑い返す。

 しかし、そんな表情とは対照的に、ドッと疲れが僕を襲っていた。少し魔法を使っただけだというのに、疲労と倦怠感に見舞われる。

 今のは、魔法。何でもよい、媒体を用いてそこに魔力を集中させることにより、使えるものだ。

 僕が使ったのは、≪時間操作≫という魔法。対象物の時間を戻したり進めたりできるという魔法だ。例えば、一輪の真っ赤なバラに使うとすれば、種に戻したり、枯らしたりといったことが可能になる。

 しかし欠点が存在し、にしか使うことが出来ない。故に、植物は例外であるが、人や動物と言った、生命を宿すに使うことは出来ない。また、世界に流れている時も操ることは出来ない。便利ではあるが、同時に不便な点も存在する……という魔法だ。

 僕は一応、≪時間操作≫以外にも魔法を所持しているけど、その他はあまり、実用向きとは言いがたいんだよねー。しかも、上手くコントロールできないというおまけ付きでさ。

 

「なぎさ君、これでよかった?」

 問うと、大きく頷いて返答してくれる。

「うん! ……あのね、くーまんはね、なぎさのだいじな友だちで、なぎさの、おじいちゃんとおばあちゃんがくれたの。だから、たいせつなの……」

 ぬいぐるみには、くーまんという名前があるらしい。おお可愛い。なぎさ君は、くーまんを愛おしそうに抱きしめる。

 貰い物で、更に大事な友人。そりゃ大事にもなりますよねぇ。……いいな、幸せそうで……。

 羨む目線を送りながら、ふと一つのことを思い出す。

「……あ、そうだ、なぎさ君。さっきはごめんね? お兄さんが酷いことを言って。でもね、あのお兄さん、悪い人じゃないからさ、その……嫌わないで、ほしいんだ?」

 岳は先ほど、酷い言葉をなぎさ君に投げかけた。そのことで誤解してほしくないと思い、謝罪をした。

 すると、なぎさ君は首を横に振った。

「ううん、だいじょうぶ。おにいさんのことは、きらいって、おもってない。でも、なぎさも、なおらないかもって、おもってたから」

 ほわっと微笑みながら、岳を許してくれる。よかった……。岳は無愛想だけど、本当は悪い人じゃないんだよね。

 ってか、まさか岳と同じこと思ってたって。同意見ってことですか。それで泣いたって、ええ……?

 だけど、その気持ちがわからないこともない。自分が思っているとこを、追い打ちをかけるように言われてしまったら、誰だって気にするだろう。

 ……僕だって……誰かに不必要だって言われたら……。

 暗い考えが僕を襲う。急に不安になり、俯いて、胸元をぎゅっと握りしめた。


「星夜ぁー……。終わったぁー……?」

 その時、弱々しい岳の声が聞こえてきた。顔を上げると、何故か苦しそうに息をしながら、リビングのドアを開けている。

「あ、うん。終わったよー」

「おにいさん、みてみてー!」

 僕が岳に返答すると、なぎさ君が嬉しそうな顔をして彼に近づいていった。

「あのね、おねえさんがね、なおしてくれたのー!」

 顔をキラキラと輝かせ、嬉しそうに語りながら、くーまんを岳に突き出すなぎさ君。

「えっ! ……あ、ああ、そう、なんだ! よかった、ね……?」

 岳は一瞬焦るが、すぐに同情しようと気持ちを切り替え答える。笑おうとしているのか、頬がピクピクと動いている。普段は愛想笑いや薄笑いしか浮かべない岳には、難しいなのだろう。

 おーい、岳さん、頬、引きつってますぜい。だが助けには行かない。依頼から逃げたこと、たーんと後悔しやがれっ。

 だから、岳が不満げな目線を送ってきても、ニヤリと笑い返し面白がるだけだった。


「……ふっ、ふふふっ。えへへっ、へへ~っ」

 そんな2人の気も知らずに、なぎさ君は嬉しそうに笑う。くーまんを上に掲げ、くるくると回りながら。

 しばらく回った後、ぴたりとその場に制止すると、なぎさ君は僕と岳を交互に見て、笑顔で。


「おねえさん、おにいさん……ありがとう!」


 感謝の言葉。それが例え、本心からではなくたとしても、とても嬉しいものだ。

 僕はとても嬉しくなって、胸がいっぱいになって、今にも舞い上がりそうな気分になった。

 嬉しい。嬉しすぎる。お礼を言って貰えるなんて。魔法を使って、こなした仕事でお礼を言って貰えるだなんて。


 ――この、「魔法利用世界」では。


 僕はニヤッと笑うと、高らかに言った。


「――ふふっ。何でもお申し付けくださいませ。魔法で我らテロリストが、解決して見せますッ!!」


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