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【旧版】魔法の世界でテロリズム【更新停止】  作者: 雛星のえ
第4章 / Sniper Tournament
49/60

49話:気になる人物

 1次予選を余裕で突破した翔は、控え室へと戻ってきた。

「お疲れ様。見てたよ。やっぱりすごいね」

 部屋に入ると岳が駆け寄ってきて、そう声をかけてくれた。

「サンキュ。……まぁ今回は1位だったけれどさ、気は抜いていられねぇよ」

 あれほどたくさんいた参加者たちは一気に100人ほどにまで絞られていた。意外とここらで絞られたりするもんなんだなぁ……。

「翔、やっぱり狙撃の時雰囲気変わるよね。初めて会ったときもこんな感じだったし。最初、いかにも翔好みといった感じの女の子に話しかけられてなかった? 結構冷たくあしらってたみたいだけど」

 その言葉を聞くなり翔は両手で顔を素早く覆い、そして俯いた。

「うああああん! その話はしないでぇ! お願いだから!」

 結果を見て、ここまで来る途中で何度も後悔と自責の念に駆られた。どうしてあんなに可愛らしい女の子を前に自分は冷たい態度をとってしまったのだろう。もっとお話がしたかった……というか、この予選が終わったらお話しするつもりだった。だけどそれはもう、叶わない。彼女は1次予選落ちしてしまったから、このまま帰路につくかギャラリーに混ざるかのどちらかだ。

「うわぁああん! 何故! 何でどうして! どうしてなんだ! どうして俺はあんなにも素っ気ない態度をとってしまったんだ……! ごめんね、ごめんね……えっと……。あッ。名前、聞いてなかったや……」

 可愛らしい笑顔。サラサラの髪の毛にポニーテール。可憐な容姿。こんな美少女と話すチャンスを棒に振ってしまった俺って、俺って……。

 周りに人がいることも気にせずに大声でわめき散らす。そんな翔の頭に、突如衝撃が走る。

「痛ッ!? ……ちょ、え、岳、えッ何で!?」

 顔を上げると、岳が翔の頭にチョップをかましていた。それが衝撃の正体だろう。

「彼女の話題を出した僕が馬鹿だったよ。ここは一応公共の場なんだから静かにして。後周りの目線も痛い。今すぐ他人のふりをしたい」

 いわれて周りに目を向けると、皆ほとんどが翔のことを遠巻きに見ており、ひそひそと話をしている。

「あ、ああ、俺……。その、ごめん」

「いいよ別に、放っておけば何とかなるでしょ。でもその翔の雰囲気の変化は悪くないと思う。集中してるって感じで。……まぁ普段からきっちりしててほしいっていうのが本音だけども……。とりあえず、これは大会といえど戦いであるわけだから、相手に情けや手加減は無用。全力を尽くすのみだよ」

 そんなことは解っている。解っているけれども。何故だろう、何処か馬鹿にされている感じがする。


「――はッ、それくらい解ってるよ」

『さぁっ! 1次予選が終了いたしました! 予選突破者はおめでとう御座います! それでは2次予選へと進みましょう!』

 翔の声に被さるように流れるアナウンス。マイク越しに、ギャラリーの歓声や囃し立てる声などが聞こえてくる。

『2次予選。 内容は……――”遠的”です! これから6名ずつ、こちらでグループ分けをしましたので、そのグループの人たちで1つの的に向かって狙撃してもらいます。的の中心により近い場所に当てた上位3名が2次予選突破となります!』

 その説明が終わるなり、再び黒衣がフリップを手にして入ってくる。今度の番号はごちゃ混ぜになっているようだが、そこに翔の番号は書かれてはいなかった。

 今ここにいるのが100人くらいと仮定すると、次に進めるのはその半分である50名。

「ふぅん……なるほどねぇ」

 再び周りの音が、徐々に遠ざかっていく。自分だけの世界に入っていく。意識が一点に集中していく。


「あの人……」

 岳が不意に何かを呟いたのを耳にし、そちらに意識を傾ける。消えかけていた周りの喧騒が戻ってくる。

「岳? どうかしたのか?」

「いや。今画面に映し出されている人なんだけどね」

 釣られてモニターに目をやる。今映し出されているのは、砂漠のような場所に伏射姿勢で構える、長髪の人物。確かあの髪型……ウルフショートっていったっけか。

「あいつがどうかしたのか?」

 身長は170センチくらいはあるだろうか。男……にしてはやけに華奢すぎるような気もするし、女にしては肩幅が広いような、そして背が高すぎるような気がする。

 じゃぁ前者か? どちらにせよ、あまり強そうには見えないけど。でもどうして、あんなやつなんかに岳は目をつけたんだ?

「翔がここに来たときにはもう撃ち終わっちゃってたから、見てないか。さっき、翔が撃った後に撃ってた人なんだけどね。周りとは比べものにならないほどの点数を叩き出してたんだ。確か、大会新記録だかって言ってたような気がする」

 大会新記録って普通アナウンスとかされないか……? あれ、だとしても俺はそのアナウンスを聞いていない。……もしかしてそこまで落ち込んでたのか。

「へぇ。得点は?」

「確か……30万とかだったような気がするよ。結構高得点だったんだ」

「さんじゅッ……!?」



 ダンッ……――。翔の声とともに、ウルフショートの人物が発砲した。弾丸はぶれることなく、狂うことなくど真ん中へと命中した。

 そこで翔は、先ほどの自分の思考の浅はかさを痛感した。



 前言撤回。あいつは、とんでもねぇやつだ……――。


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